この「5つ」を意識すれば、上司からの株がUPする(かも)。
話ベタなんて世の中にひとりもいない。上手く伝わる話し方をしらないだけで、言いたいことが上手く相手に伝われば、驚くほど物事がスムーズに運ぶ。
こう訴えるのは、放送作家・冨樫佳織さん。近著『やわらかロジカルな話し方』(クロスメディア・パブリッシング)で、相手の立場に立って気持ちや考えを汲み取り、その上で意見を上手に伝える方法を紹介しています。
どれも実社会で上司とのコミュニケーションに使えるものばかり。
「会社への貢献」を
うまくアピールしながら話す
まず、上司と話をしたり、会議で自分の意見を伝える際、相手に好印象を与えるために重要なことが5つあります。
テーマ・結論・数字・状況・気持ち
この5つのブロックをうまく使うことで、提案などが通りやすくなります。それではまず、自分が進めているプロジェクトについて上司に相談するシーンを例にしてみましょう。
上司とは、日常的に会話をしますし、一緒に仕事をする関係です。だからといって親密になりすぎると、伝えるべき内容がグダグダになってしまいます。ここでは上述した5つのブロックをカスタマイズして対応してください。
【テーマ】
「新車購入を考えているお客様への提案についてご相談なのですが」【結論】
「見積もりやローン返済に加え、中古で売却する時の市場データを入れたらどうかと考えたので、ご意見を聞かせてくださいますか?」【数字】
「中古車として売却することを考えると2年目、3年目といった短期のほうが高く売れるということをお客様はご存知ありません」【状況】
「クルマを買う時にすぐ役に立たなくても、中古の価格相場を知っておけば、高い買い物をする場合にも納得感が得られるのではないでしょうか」【気持ち】
「データを付け足すことで、お客様に喜んでもらえて売り上げもアップすると嬉しいですよね」
テーマに対する結論、つまり新車購入を考えているお客様に中古市場データの資料を渡すのが「なぜ」大切なのかが、話し手の気持ちで語られています。
つまりこの話し手は、
市場データを資料化して渡す=お客様が喜ぶ=会社の売上が上がる
というストーリーを描いています。オフィスで交わす日常の会話ですが、上司があなたの得意分野や性格、仕事への姿勢を「会社への貢献」と関連付けて理解してくれれば、今後、何か新規のチャンスがあった時、ふと思い出してもらえる可能性も高まりそうですね。
【気持ち】の置き場所が
提案可否の分かれ道
会議で自分の提案を通したい場合は、5つのブロックをどう組み立てていくべきなのか……。以下のようにブロックを並べてみましょう。
【テーマ】
「昇進試験を受ける社員向け研修の内容について調査してきました」【結論】
「これまでの内容に加えて、コミュニケーションの講義を追加したらどうかと考えています」《説明》
「実際に導入しはじめている企業が多いということで、模擬研修を体験してきました。受講生でグループを作り、職場を想定したテーマで寸劇をしていて、あっという間に時間が過ぎました。しかも参加したメンバー同士、講義が終わった後に連絡先の交換までしていたのです」【気持ち】
「短時間で人とここまで打ち解けられるのか……と本当に驚きました」【状況】
「うちの会社は、他の部署のメンバーと交流する機会が少ないです。そのような状況でマネージャーになると、他の部署との連携や意思共有がうまくできなくて、負担になる人もいるようです」【数字】
「部下とのコミュニケーションにも役立ちます。研修では、それぞれがリーダーとなって5人のメンバーの悩みを聞き、解決するというものがありました。5人のチームというのも、新マネージャー候補練習にはちょうど良いのかなと思いました」
この伝え方で一番大きな効果を持つのは気持ちのブロックです。
なぜならば、相手が意思決定をするための材料として、話し手が「自分はこう感じた」ということがポイントになるからです。
この会話における気持ちは、たとえると、ネットのショッピングサイトのレビューのようなものです。
自分がまだ手にしていない、使ったことのないものを選ぶ時は、何よりも体験した人の意見が一番信頼できます。逆に言うと、体験した人のレビューに対して、未体験の人が反論をするのは非常に難しいことです。
ですから気持ちを話の前半で説明することに意味があるのです。
もし、自信を持って提案を通したいのならば、あなたの体験に基づく気持ちを会話の前半に持ってきて、事実のベースを作ると効果的でしょう。
【結論】ブロック2段積みで
ポジティブに仕事を断る
ポジティブに相談や提案を通すための伝え方を説明しましたが、逆に、仕事を振られた場合、ポジティブに断る時はどうするべきかを考えてみたいと思います。
仕事は、全てがポジティブに進むわけではありません。進めることができないことを人に伝えようとすると、どんなに気をつけてもネガティブに伝わってしまいがちです。
そこで、あえてロジカルに固める「結論ブロック2段積み」という方法を使ってみましょう。
たとえば、担当している仕事の量が多くてまったく余裕がない時に、上司から新たな案件を振られた場合。ここでは、上司からすでに話のテーマを掲示されているのでテーマのブロックは省略されます。
【気持ち】
「新しい案件に抜擢していただけて嬉しいです。ありがとうございます!」【結論1】
「ただ、いま担当している仕事と並行できるのかが、タイミング的に心配です」【状況】
「同時に抱えている仕事の最終打ち合わせが、すでにいくつか重なっていて……」【数字】
「まず、これから10日後までに契約へ入る取引先が3社あります。その他に種まきとしてコミュニケーションしている案件が5つほどです」【結論2】
「まずは契約決定案件をしっかり終えながら、次に芽が出そうな取引のフォローに時間を使いたいと思います」
このくらいの伝え方をすれば、聞き手は「この人は無理だろうな」と理解してくれるでしょう。ここで大事なことは、
・前半の結論1は答えではなく、答えの理由をまず述べること。
・後半の結論2は状況を受けた上で、論理的な答えを述べること。
・必ず前半に「自分を選んでくれてありがとうございます」という気持ちを入れること。
結論を導き出すための具体的な要因、状況・数字と、重要な着目点、結論1を聞き手と一緒に確かめて、最終的な答えである結論2を導き出すイメージです。
「結論2段積み」のメリットは、まず結論1で「この議論をするために何が大事か」を相手と共有するので、最終的な結論2に対して聞き手の共感を得られやすいことです。
ポジティブな印象を与えるためには、はっきり結論を伝えることが大切なのです。