いま、世界のビジネスパーソンに求められているものとは?
「日本の企業はグローバル人材育成の現場において遅れをとっている」と、著書『パーソナル・グローバリゼーション~世界と働くために知っておきたい毎日の習慣と5つのツール~』(幻冬舎)で世界に通用する人材になるためのスキルを提唱する布留川勝さん。
自らグローバル人材育成に関する会社を立ち上げ、「このままでは日本企業が危ない」と警鐘を鳴らしてきました。本書のタイトルにもあるパーソナル・グローバリゼーションとは、個のグローバル化のこと。すなわち、日本企業に属するビジネスパーソン一人一人が、世界と対等することのできる人物になる…ということです。
「ウチの会社は世界の企業とは関係ない」という人もまずは読んでみてください。きっと、その考えが180度変わります。
世界で生きていくには
「個人の力」が必須
2000年頃の日本企業は、グローバル人材育成について大きな失敗を犯していました。育成プログラムの大半がフェイクだったのです。英会話レッスン、通信教育、TOEIC受験といった「お手軽」なものがほとんどであり、それ以上のことを実施する余裕や予算がありませんでした。
こうした方法では、いつまでたっても世界と渡り歩けません。
「日本教育はレベルが高いので、英語ができるだけの外国人に負けるはずがない」と考える人もいるでしょう。しかし、グローバル市場では、アップル、グーグル、アマゾン、Facebookなどの企業は圧倒的に市場を制圧していますし、中国や韓国など、かつて日本企業の遥か後ろにいた企業でさえ日本に追いつき追い越して過去最高利益を叩き出しています。
もしあなたが海外のグローバル企業でも通用する優秀な人材であると自負するならば、海外勤務を志願してください。なぜならば、日本の現地法人の社長やアジアを統括するようなマネージャークラスになれば、国内でくすぶっているよりも、経験を積みながら高嶺の年収を得られる時代が近づいているからです。
ですが、海外赴任をすれば、あなたのライバルは日本国内の日本人ビジネスパーソンだけではなく、世界中の野心的なエグゼクティブになることを覚えておいてください。海外の企業であなたは、世界基準で判断されて比較されることになります。
そうなっても、あなたは競争に勝てるでしょうか?
海外勤務で必要なのは、グローバルに通じる英語力、コミュニケーション力、リーダーシップ、そして共感性です。これを持ち合わせていないと海外進出は失敗に終わるでしょう。
どれだけ真面目に働いてきても、与えられたことをこなすことが多い「日本人的考え」ではとうてい太刀打ちできないのです。
国や企業という単位だけではなく、個人として変化に適応しなければ、いつか強烈な痛みがあなたを襲う可能性が高まります。一つの事例を下で紹介しましょう。
グローバル企業は
『UP or OUT』
ある日突然、自分の会社がアメリカの企業に買収されたことを新聞で知ったAさん。新たな上司として日本語のできないインド人MBAが着任し、メールや会議などすべてのコミュニケーションが英語になってしまいました。
英語を勉強してこなかったAさんは激しく後悔しますが、上司に言われたことはこんなことでした。
「あなたは英語ができないことが問題だと考えているようだが、じつは私はもっと心配していることがある。あなたは話が長すぎるし、女性部下からも信頼されていない。あまりにもビジネススキルや知識が低すぎる。3ヶ月以内に改善せよ」
これは上司からの最後通告です。グローバル企業は「UP or OUT」社会のため、常に知識やスキルをUPさせる意思のない社員はOUT(出て行け!)なのです。
このままだとAさんは降格したり、給料を減らされてしまうでしょう。この事例を聞いて、こんなことが自分に起きるはずがないと考えている人も多いようですが、すでに似たような状況が起きているのです。
まず自分はどういう人物なのか、魅力は何か、そして何を学ぶべきかを振り返りましょう。そして、将来を見据えて人生戦略を考えてください。
最高峰の学びができる
「MOOC」
昔から、日本の教育レベルの高さについては世界からも注目されていたコンテンツでした。しかし、最近ではその魅力もなくなってきています。なぜならば、ITの発達により、世界中どこにいても最高峰の「学び」ができるようになったからです。
MOOCという言葉をご存知でしょうか。MOOCとは、Massive Open Online Courses(大規模に開かれたオンライン講義)の頭文字4つをつなげた造語で、インターネット上で誰もが、無料あるいは低価格で受講できる講義のことです。
2006年頃から、マサチューセッツ工科大学、インド工科大学などの名だたる大学が、次々とオンライン講義を開設していきました。
高いIQを持つハングリーな人材にMOOCが提供されると何が起きるでしょうか……。容易に想像がつきますよね。
このままだと、高学歴にもかかわらずハングリーさに欠けるサラリーマン体質の日本人ビジネスパーソンは駆逐されていくでしょう。
あなたのための
パーソナル・グロバリゼーション
学習の環境が整っているのに、それを有効活用する意欲のない人は、これからの時代ますます取り残されてしまいます。グローバル化に即したスキルに対してむやみに苦手意識を抱き、何をすべきか模索しているだけの人が多いですが、それでは通用しなくなっていくでしょう。
そうして考えている間に、世界中にいる学習意欲の高い人材が、チャンスをモノにして、ビジネス能力を向上させています。いま自らをグローバルな場でプロとして通用する人材にレベルアップさせなければ、これまで身につけたスキルや経験を活かす場がなくなってしまいます。
しかし、明確な意識のもとに自己改革を行えば、「あなた自身」も「あなたを取り巻く状況」も想像を超えて向上するに違いありません。パーソナル・グローバリゼーションを得ることで、いま、あなたが持っている専門スキルや経験を、グローバル市場だけでなく、国内市場でも発揮することができます。
企業はまさに生き物。常に進化をしています。たくさんのスキルを持つことにプラスして変化に対応できる「真のグローバル人材」が求められています。
いまはまだ、パーソナル・グローバリゼーションよりも明日のスケジュール表を埋めている業務にしか興味がない人がほとんどかもしれません。しかし「いつか考えよう」という言い訳は、誰のためになるのでしょうか? あなたを変えられるのはあなただけであることを覚えておいてください。