「間違った働き方」をしないために、覚えておくべきこと
価値観が多様化する現代、昔と比べて私たちの働き方も随分と変わってきました。「ワークライフバランス」という言葉が世に出て久しいですが、自由に生き生きと暮らすために、あたらしい働き方を模索する人も増えています。
それでは、本当に自分を生き生きとさせる働き方とはどのようなものでしょうか。自著『あたらしい働き方』から、職場選びのヒントをご紹介します。
01.
「就職人気ランキング」は
もはや通用しない
2012年。50年近くにわたって就職人気ランキングを調査、発表し続けてきたリクルートがランキングの廃止を発表しました。その理由は、学生の価値観が多様化する中で、一律で人気企業ランキングを発表する意義が薄れた、ということ。
端的に言えば、昔の一律ランキング的な基準で物事を見ていたのでは、うまく会社を選ぶことはできなくなってきたのです。
一時期前には、学生に情報を集める力はそれほどありませんでした。ところが今は、膨大な情報がインターネットをはじめ、世の中に溢れる時代。古いやり方、昔の基準で会社を選ぶ必要はないのです。
そもそも、かつてランキングが成り立ったのは、似たような会社ばかりだったから。横断的なランキングは、みんなが同じ方向を向いていた時代だったから、成立していたものなのです。
02.
誰かがアンハッピーでも
誰かがすごく
ハッピーになる社会
日本経済新聞が発表している「働きやすい会社」ランキング。このベースになっているのは、ワークライフバランスを充実させるべく導入された、企業の人事・労務制度の充実度。
果たしてそれは本当に「働きやすさ」につながるのでしょうか?
日本企業、とりわけ伝統的な大企業は、「万人がハッピーになれると思える会社」を目指してきたのではないかと私は感じます。しかし、働く人々の価値観が多様化した現代でそれは成り立ちません。誰かがアンハッピーになるかもしれないことを恐れず大胆な取り組みをすることによって、誰かがすごくハッピーになるのです。 全員をハッピーにしようとすると、むしろ誰もハッピーになれない可能性も高くなるのです。
03.
働きやすい会社
≠働きがいのある会社
「働きがいのある会社ランキング」と「働きやすい会社ランキング」では、まったく違う会社がランクインしているのをご存知ですか?じつは、この2つは似て非なるもの。
では、それぞれで重視されるポイントって?
働きやすい会社では「働く人にやさしい」とか「充実した制度がある」であるのに対し、働きがいのある会社では「優秀な人材が自らの成果を出しやすい環境が整っているかどうか」ということが重視されます。 会社は、社員が働きたくなる環境を作らなければなりません。それと同時に、クリエイティブな仕事に限らず、あたらしいアイデアを持っている人、あたらしい事業を生み出せる人、自ら動ける人を、企業は本気で必要としています。そうした人材の存在で、会社は一気に変わってしまうからです。 つまり「働きやすい会社」を作るのではなく、「働きがいのある会社」を作ることが、企業の命運を分けることになるのです。
04.
会社に居続けるか
独立するかは個人の自由
「やっぱり自由な働き方、楽しい仕事をするには会社を辞めないといけないのか…」と思う方も少なくないようですが、そんなことはありません。
独立やフリーランスはたしかに魅力的。ただ、自分の好きなように働けることと、食べていけるだけの売り上げが確保できることは、まったく別の話です。実際、独立したりフリーランスになったものの、生活のための仕事にがんじがらめになってしまう、というケースは少なくありません。
しかし、すでに信頼関係が成り立っている会社や組織であれば、大きな仕事を獲得できる可能性がある。組織が持っている設備も使えるし、生活の心配をせずに、やりたい仕事に向かえる。
会社や組織を自分の成果を上げるための場だと気付ければ、独立するよりも組織にいるほうがプラスになる可能性だってあるのです。
05.
ワークとライフは
融合しているもの
古い働き方では、年功序列のため、若い社員が成果を出したところで、評価はされませんでした。
しかし、あたらしい働き方を採用している多くの会社では、成果は管理され、承認され、評価され、賞賛されます。そして働き方も、個人に委ねられます。細かな指示はなく、自由にしていい。すると仕事は面白いものになり、クリエイティビティが発揮できます。 ワークとライフはバランスをとるものではなく、融合しているもの。お互いがハピネスをより高めてくれる存在になるのです。
06.
万人にとって
心地よい会社はない
あたらしい働き方に合う人が、それを実践している会社に入ったら、それで幸せになれるのか。実は必ずしもそうではありません。
パタゴニアという会社には「いい波が来れば、勤務時間中いつでもサーフィンに出掛ける」というルールがあります。自由な働き方を求める人たちにとっては垂涎の職場ですよね。
しかし、あたらしい働き方を求めるすべての人にパタゴニアが合致しているかというと、一概にそうとは言えません。
「セルフマネジメントができる人には、こんなラッキーな会社はない。しかし、セルフマネジメントができない人にはこんな辛い会社はないかもしれない(パタゴニア)」
実際、大きな憧れをもって大変な競争率をくぐり抜けてパタゴニアに入社したのに、短期間で退職してしまう社員もいるのだそうです。
たとえあたらしい働き方を求め、それを実践している会社に入ったとしても、必ずしも心地よい会社であるとは限らない、ということです。
『あたらしい働き方』
コンテンツ提供元:本田直之