蚊帳からできたバッグが、カンボジアの「働き方」を変革する

いま、カンボジアで注目のアップサイクルブランド「Smateria」をご存知ですか?

近年は日本の百貨店においてポップアップを実施することも多く、目にした人もいるかもしれません。じつはSmateria、たんなるアップサイクル製品を扱うというだけでなく、カンボジアの人々の働き方を大きく変える、そんなミッションをもったブランドでもあるんです。

使い古された道具たち
デザインの力で新たな息吹

©2024 NEW STANDARD
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高品質で倫理的、そして型にはまらないファッション製品を世界中に届けることを目的に、イタリア人のママ友2人によって設立された「Smateria」。

ブランドネームに込められた「素材を変化させ、新たな命を吹き込む」というコンセプトのもと、漁で使った網だったり蚊帳だったり、あるいはビニール袋などから耐久性のある素材を再利用したり。すべてのアイテムはカンボジア国内の自社工房でひとつひとつ手作りされています。

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一見すれば高級レザーやスエードを用いたバッグですが、これらすべて再生プラスチック生地からつくられているんです。素材そのものがもつ耐水性を活かしたり、軽量さをそのまま活かす設計もユーザー側からすると嬉しいポイント。実際に手に取ってみると、想像以上に軽くて驚かされます。

高級感のあるシックなラインのほかに、こんなに可愛らしいバックパックも©2024 NEW STANDARD
黒い刺繍は「ゴミ袋」を手編みしたもの。技術の高さが窺える©2024 NEW STANDARD

Smateriaは、カラバリやデザインのラインナップがとにかく豊富。ディスプレイされたものはごく一部なので、好みを伝えてスタッフに見せてもらうといいですよ。

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また、バッグだけでなくメッシュポーチや花柄モチーフのキーホルダーなどお土産にちょうどいい価格帯のアイテムもずらり。

アップサイクルだけにあらず
超エシカルブランドの目指すもの

さて、先述のように「Smateria」が注目される理由はプロダクトのみにとどまらない。むしろ、その背景にあるもの。従業員として働くカンボジア人たちを取り巻く環境や彼らの生活に焦点をあてた施策が高く評価されているからだと確信しました。

以下、同社のエシカルな取り組みをかいつまんでご紹介したいと思います。

■従業員の労働環境の整備

1日8時間労働、週休2日制、安定した賃金体系、そして毎年1ヵ月分のボーナス保証する。

■幼稚園の無償提供

805以上を占める女性従業員の子どもたちのため、社内で幼稚園を運営。福利厚生として園を無償提供する。カンボジア政府による幼児教育の支援制度が確立されていないという背景がある。

■英語レッスンの提供

全従業員に対して英語のレッスンを会社が提供。永続的なスキルを身につけることで自立支援を促す。

■有給休暇制度

従業員の権利として有給休暇を取得できるよう、家族との面談を実施。健全なワークライフバランスの確保に努める。

このほか、定職に就いても銀行で融資やローンが組みづらいカンボジアにおいてローンサポートのため会社が働きかけたり、従業員全員が健康保険に加入するなど、私たちからすると当たり前のことが、まだ当たり前になりきっていない同国にあって、Smateriaが手厚くスタッフを支援していることがわかります。

安定した仕事環境を提供することで、従業員のみならずその家族、さらにはカンボジア社会全体の安定に向けた企業としての取り組みだというのだから頭が下がります。

カンボジアの働き方を変える
小さな企業の大きな“一歩”

内戦終結以後、国際社会の支援を受けながら国家として成長を続けてきたカンボジア。2000年以降は高いGDP成長を維持し、経済成長ランキングでもアジア随一の成長率を誇っています。

そんなカンボジアの主要産業といえば縫製業。国内には数多くの工場があります。けれど、残念ながらそこで働く労働者の権利は守られていないという実情がなかなか改善されずにいます。過酷で危険な労働環境だったり、不当な賃金で労働を強いられている人たちも多いと聞きます。

そうしたなか、一企業である「Smateria」の取り組みは、この国が抱える諸問題に対するカッティングエッジとなり、縫製業における価値を大きく変える、そんな転換点となるかもしれないのです。

同社のソーシャルグッドなアクションが、いつか大きなうねりとなってカンボジアに広く浸透していきますように。

 

Smateria

【公式サイト】https://smateria.com/

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