グローバルな人材になるために必要な 「5つのツール」
世界を相手にビジネスで渡りあっていくためには、グローバルな人材でなければいけない。それには「5つのツール」が必要と説くのは、布留川勝さん。
近著『パーソナル・グローバリゼーション~世界と働くために知っておきたい毎日の習慣と5つのツール~』(幻冬舎)に記された内容から、ここではそのツールとは何を指しているのかを詳しく見ていきましょう。
日本式のビジネスの外側に目を向けると、もっと広い視野を持って仕事に取り組めるかも。
01.
ビジョナリーシンキング
ー思い描く力ー
「ビジョナリーシンキング」は、右脳的な発想、ひらめき(ビジョナリー)を実現するために左脳でチェックをすること(シンキング)によって成り立ちます。
自分が成し遂げたいことを明確にし、思わずわくわくしてしまうような壮大なビジョンを描きながらも、そのビジョンを現実化するために論理的かつ緻密に考えていくことができる力です。
ビジョナリーシンキングは、強烈でビビットなイメージとして、ありたい姿や作りたいものを思い描く「ビジョナリー」の段階。そして、その創造物を具体的かつ完璧に仕上げていく「シンキング」の段階の2つに分かれているのです。
このビジョナリーシンキングは訓練によって身につけることができますが、条件があります。それは、自分自身の人生を「充実したものにしたい」、「人の役に立つ仕事をしたい」と心から思うことです。
そうした心構えを持って、まずはあなたが尊敬している人物に近づき、その人が何を感じてどう生きているのか、どのように物事を考えるのかについて注意深く観察するところから始めましょう。
02.
セルフエンパワーメント
ー主体性を持つー
「セルフエンパワーメント」とは、一言でいえば「自分を最高の状態にしていること」です。
セルフエンパワーメントを引き出すためには、達成したい目的を持つことが重要。ビジョナリーシンキングができると、自然とパワーが湧き出てきます。このパワーが出ている状態が、すなわちセルフエンパワーメントしている状態なのです。
しかし、どんな人でも常にビジョナリーシンキングを続けるのは難しいでしょう。何も考えつかなかったり、スランプに陥ることもあります。
そのようなときは、体や心が「最高の状態」ではなく、ひらめきも新しい発想も出てきません。このようにビジョナリーシンキングとセルフエンパワーメントはお互いに強い影響力を持っています。この2つを両立した形で持っている人は、共通点があります。紹介していきましょう。
1.時間の使い方が非常に上手
自分のありたい姿や目標を高く設定しており、現時点の自分と到達すべき地点のギャップが大きいことを知っているため、そのギャップを埋めるという明確な目的がであり、その達成のために時間を使っています。2.「到達すべき自分」を知っている
両立している人は、「到達すべき自分」へたどり着いた際に得られる快感を知っています。大きな快感を得るためには、多くの人が感じる「痛み」を感じることも恐れません。たとえば「今日はビールも飲まず、好きな野球も見ないで英語の勉強をする」という行動を継続的に繰り返すことができます。
03.
コミュニケーションスキル
ー的確に自分の意思を伝えるー
人生を成功させるためにコミュニケーションスキルがどれだけ重要なことか……について、日本の大手企業の社員と世界のグローバル企業の社員とでは考え方に大きな差があるでしょう。
多種多様な人材が集まり、自分の意見を主張し合うグローバルな場では、コミュニケーションスキルは重要なツールです。その種類と使い方が分からないようでは、自分の存在意義を失うことになりかねないのです。
あなたが何を求めていて、どうしてそれが必要なのか。明確に説明できないと意味がありません。たとえばアメリカのスーパーであなたの欲しいものが漠然としていたとします。
ここでしっかり伝えられなければ、店員から「欲しいものをもう少しはっきりさせてくれ」と平気で言われてしまうでしょう。それほど、アメリカでは、欲しいものを明確に伝えるといったコミュニケーションが求められるのです。
また、コミュニケーションというとすぐに言葉の問題だと思う人もいるでしょうが、言葉だけに頼らず、身振り手振りなどの非言語表現も駆使してより伝達の幅を広げる必要もあるでしょう。特に第一印象は、表情、態度、声色などが、言葉のメッセージよりも強いインパクトを与えることがあるのです。
04.
ダイバーシティ
ー多様性を受け入れ、力を生み出すー
「ダイバーシティ」とは多様性を意味する言葉です。または、その多様性を受容することを指します。ただ受容するだけでは、そこから力を生み出すことはできません。
ダイバーシティとは、1+1を3や10にするように、異文化のぶつかり合いから起きる独創性や高い生産性を生み出す源泉なのです。
グローバルな場では、あなたとは国籍も宗教も違うビジネスパートナーが、自分の価値観に基づいて行動していることを尊重しなければなりません。そうでなければ、あなたが相手から尊重させることはないでしょう。
海外に出る機会のない人でも、映画や本を通じて、そうした行動や思考の方法の理解に努めることが大切です。
ドイツのアイントラハト・フランクフルトに所属し、チームのキャプテンを務める長谷部誠選手を例にダイバーシティを紐解いていきましょう。
彼がいるチームは18ヶ国の選手が所属し、キャプテンの言うことをまったく聞かない選手も多いそうです。20歳くらいの選手がキャプテンを汚い言葉で罵ることもあるのだとか。
私(著者)が見る限り、長谷部選手は日本的なリーダータイプです。すなわち真面目で謙虚で、派手なパフォーマンスをしません。しかしキャプテンに任命されるということは、ダイバーシティのあるチームでリーダーシップを認められているということです。
これは日本人のリーダーシップスタイルがサッカーというグローバルなスポーツで認められた事例だともいえるでしょう。
文化の価値観の理解は、自国……つまり日本に対しても十分にしておかなければなりません。日本文化や日本人の価値観をよく知ることで、それを基準として他国の文化や価値観を理解でき、また外国人に対して自分の考え方や行動を説明する際にも役立つはずです。
05.
グローバルイングリッシュ
ー正確さよりも流暢さー
グローバルビジネスにとって英語が共通言語であることは否定しがたい事実です。しかし、ここで重要なのがグローバルビジネスで使われる英語は、必ずしもネイティブたちが使うわけではないということです。むしろ、ネイティブ以外で英語を使用している人の数の方が多い印象があります。
つまり、ネイティブが話す正確な英語よりも、発音や文法に多少の問題が残る英語の方が圧倒的に多いのです。ネイティブイングリッシュに対して、英語を母国語としない人たちがツールとして堂々と使っているのが「グローバルイングリッシュ」です。
日本人は受験科目として英語に触れ始めた人が多く、それが高校や大学の入試を左右するため、特に文法の間違いを極端に恐れる傾向にあります。結果、それが英語に対してアレルギーを起こしているのです。
グローバルイングリッシュは、正確さよりも流暢さが求められます。文法の間違いなどに気を使っているとコミュニケーションのチャンスを逃してしまうからです。多少のミスは気にせずに積極的に声を発していかなければなりません(もちろん取引上の誤解を招くのは厳禁)。
ミスを恐れることが、それほど意味のないことであるのは、逆の立場で考えてみればよく分かることです。日本に来日している外国人は文法的にミスのない日本語を話しているでしょうか?
「アメリカから参りました者でございます」といった不自然な日本語を平気で使っている人も多いですが、それでも日本人は「上手」だという印象を与えます。外国人もまた、同じ感覚を持っています。むしろ少しくらい文法的なミスがあったり、発音にクセがあった方が、「この人はネイティブではないのに、英語でのコミュニケーションをよく身につけている」と好印象を与える場合があるのです。