部下に好かれるリーダーの、8つのコミュニケーション術
スターバックスコーヒージャパン、ザ・ボディショップのCEOを務めた、日本を代表するトップビジネスパーソンである岩田松雄氏。彼は、リーダーのコミュニケーションに饒舌さは必要ないと言う。
著書『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』には、彼なりのリーダー論が満載。ここではその中から、本当に伝えなければならないことを伝えられるリーダーになるためのコミュニケーションのヒントを紹介しよう。
01.
部下は3日で上司を見極める
私の目指すリーダーは、ぐいぐいとみんなを引っ張っていくタイプというより、謙虚で皆から支持される人物です。
私が大切にしてきたのは、積極的なコミュニケーション。例えば部下の話をメモをとりながら聞く。この態度そのものが「あなたの話を一所懸命聞いているよ」という強いメッセージをもっています。
コミュニケーションとは、饒舌に話すということではありません。リーダーとしての普段の仕事ぶりや態度そのものがコミュニケーションになっていることを肝に銘じておきましょう。
02.
部下には「失敗してもいい」と言う
「お前が失敗しても、会社はつぶれない」。日産自動車時代に上司から言われた、忘れられない言葉です。未熟な自分が大きな仕事を命じられたとき、誰でも萎縮してしまうものです。でもこの一言で勇気づけられ、自分の役割を果たすことに没頭することができました。
たった一言で、部下に伸び伸びと仕事をしてもらえる。そんな力がリーダーにはあるのです。
ビジネスとして一番大事なのはどの部分か? 本質はどこにあるのか? そういった仕事の根幹に気づいてもらうためには、リーダーの言葉が大切なのです。
03.
会議では、若い部下から意見を聞く
私の目指すリーダーシップのスタンスは、「一緒にやっていこう」です。「オレについてこい」ではありません。
しかし立場上、部下は上司に意見しにくいものです。例えば会議では、若い順に指名してあげて意見を聞きましょう。先に上司の意見を聞いてしまうと、部下はそれに同調してしまいがちだからです。
積極的に部下の意見を聞くようにすることで、「ついていきたい」と思われるようになります。
04.
生身の言葉だけが人を動かす
初めて社長を経験することになったアトラスでの就任演説の失敗例をご紹介します。
自分の考えをしっかり示さないと…と意気込んだ私の口から出てきたのは、ビジネススクールで学んだ企業価値やキャッシュフローといった難しい言葉でした。目の前の社員からは、全く反応がありません。彼らが聞きたかったのはそんな言葉ではなく、私の生身の言葉だったのです。
ザ・ボディショップでの社長就任演説では、同じ失敗を繰り返してはなるまいと考えました。創業者の著書を繰り返し読み、社員とじっくりコミュニケーションを重ね、「7つのお願い」という具体的な行動指針を皆さんにお伝えしました。発表中に、何人かの女性社員が涙を流して聞いてくれた時に、確かな手応えを感じました。
社員はみんな、ザ・ボディショップというブランドが好きで働いているのです。心からの言葉で語りかければ、気持ちが通う生身のコミュニケーションを行うことが可能なのです。
05.
「あなたらしくない」「あなたでさえ」
という叱り方をする
部下を叱るときに重要なのは、自尊心を傷つけないことです。「あなたらしくない」というニュアンスで語りかけることで、部下に大きな期待をよせていることを伝えます。
何かを指摘する場合には、褒めてから。褒めるのは得意じゃないという人もいるようですが、褒めすぎて困ることはありません。まず小さなことから実践してみてください。
06.
より多くの人に言葉を届けることができるのは、声ではなく「文字」
朝礼での言葉は同じオフィスにいる人にしか届きませんし、一度限りなのですぐ忘れられてしまいます。スターバックス時代とザ・ボディショップ時代、朝礼の内容を文字に起こしてマネジメントレターとして全各店舗へ送っていました。
できることなら、直接思いを伝える方がいいに決まっています。物理的には難しくても、その言葉が聞きたい人も多くいるはずです。
文字にした言葉のいいところは、何度も読めるところです。同じ言葉でも、違うときに聞くと違う受け止め方をされたりもします。ですから朝礼に参加している本社の人たちにも送っていました。
07.
キャッチフレーズは愛から生まれる
まずは相手の立場に立って、相手がどんな情報を欲しているかを考えながら伝えることです。部下に愛情をもっていれば、自然と何を話せばいいかみえてくるものです。
そのためにはキャッチーなフレーズを作ることも良いかもしれません。分かりやすい旗印は、プロジェクトへの理解とやる気につながります。
ザ・ボディショップでの「お客様を大切な友人のようにお迎えしよう」「CS(顧客満足度)よりもES(従業員満足度)」、スターバックスでの「100年後も光り輝くブランド」などは、私の思いを伝え、組織に勢いをつけるフレーズとなりました。
08.
スピーチでは、熱心なファンに話しかけるつもりで
リーダーには大勢の前で話をする機会がたくさんあります。原稿の準備はもちろんですが、聴衆はどんな人たちで、演台はあるのか、マイクを使うのかといった細かなことまで事前に情報収集をしておく必要があります。
人前に出ると緊張するという人は、聴衆の中に一所懸命に聞いてくれる人を何人か見つけることです。うなずいてくれる人達を見つけたら、そのひとりひとりに順番に話しかけるつもりでリラックスしましょう。
自分を大きく見せるような虚勢を張る必要はありません。心から溢れた自然なコミュニケーションこそが、人の心に注がれ、人はついてきてくれるのです。
『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』
コンテンツ提供元:サンマーク出版
株式会社リーダーシップコンサルティング代表。ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ株式会社、株式会社アトラス代表取締役社長、株式会社タカラ常務取締役、株式会社イオンフォレスト代表取締役社長などを経て、スターバックス コーヒー ジャパンのCEOとして「100年後も光り輝くブランド」を掲げ、業績を右肩上がりに成長させる。現職では、次世代のリーダー育成に力を注いでいる。