スタバ新CEOが下した決断。「対話」を選んだ戦略と、その広がり
「従業員ファースト」を掲げる企業が増えるなか、企業と労働組合の関係性も変化しつつある。そんな潮流を象徴するような出来事が、世界的コーヒーチェーン「スターバックス」で起きている。
全米に広がる労働組合結成の動きに対し、新たに就任したCEOブライアン・ニコル氏は、対話による解決を模索する姿勢を見せている。
NYから全米へ広がった
「組合結成」の波
2021年、スターバックスにとって大きな転換点となる出来事が起こった。ニューヨーク州バッファローの店舗で従業員が労働組合を結成したこと。これは、長いスターバックスの歴史においても米国で初。その後、この動きは瞬く間に全米の店舗へと拡大し、従業員らは労働環境の改善や賃金アップなどを求め、次々と組合を結成していくことになる。
当初スターバックス側は、組合結成の動きに対して強硬な姿勢を示していた。組合活動を行った従業員の解雇や、組合結成の動きが見られた店舗の閉鎖など、様々な手段を講じて組合拡大の抑制を試みた。
しかし、当然このような強硬な姿勢は社会的な批判を招くことになる。企業イメージは悪化し、ブランド価値にも大きな影響を与える結果となった。そこで、この状況を打開するために白羽の矢が立てられたのがブライアン・ニコル氏だった。
「CNBC」によると、ニコル氏は、就任直後から労働組合との対話を重視する姿勢を明確に打ち出したとのこと。そして就任からわずか数週間後、労働組合との団体交渉の枠組みについて協議を進めることで合意に達したという。
CNBCの取材に対し「従業員が、公平かつ民主的なプロセスを経て、組合によって代表されることを選択する権利を深く尊重する」と述べており、「従業員が代表を選出したならば、組合と建設的かつ誠実に交渉していく」と、その決意を示した。ここからスターバックスは「対立」から「共存」へと大きく舵を切ったといえるだろう。
新CEOが目指す「共存」の未来
企業と労働者の新たな関係を模索
この決断は、現代社会における企業と労働組合の関係性の変化を象徴している。企業はもはや、労働組合を「対立」するべき存在としてではなく、「共存」していくべきパートナーとして捉え直す必要に迫られている。従業員の意見を尊重し、対話を通じてより良い労働環境を共に作り上げていく姿勢こそが、企業の持続的な成長、そして、社会全体のウェルビーイングに繋がっていくのではないだろうか。
現代では、CEOが雲の上の存在であるという認識が薄まりつつある。企業の幹部らは、どれだけ従業員の思いを理解しているか、ひいてはアルバイトなどの非正規労働者までにも気を配り、信頼を勝ち取らなければいけない。絶大な人気を誇る大企業がこうして労働者への理解を示すことは、私たちに「対話」の持つ力と、未来への可能性を改めて問いかけているのかもしれない。