人口たった14人。ホテルもない村に「宿泊希望者」が殺到している。

ホテルがないのに、宿泊の問い合わせが来ている。それでもって、国内のホテルやレストランをつくる協会『ガストロスイス』の<ホテル・イノベーション・アワード>も受賞。

その村の名前は、『コリッポ』。スイス南部、ヴェルツァスカ渓谷にあって、以前は約300人が住んでいたと言われている。しかし1975年の時点ですでに主要産業の農業も廃れてしまっていて、村民は続々と出て行ってしまったようだ。

そこで…、

村そのものを、
「ホテル」にしてみた。

Photos bySWI

過疎化が深刻になると、子どもの出生率や村の活気など様々なものが失われて、「空き家」がどんどん増えていく。どうにかして人を呼び込めないものか、と考えて打ち出したのが、有り余っている空き家を宿泊施設にするという『村ごとホテル案』だ。

スイス公共放送、スイスインフォの記事「swissinfo.ch」からの引用がこちら。

スイス南部ティチーノ州のヴェルツァスカ渓谷にある小さなコリッポ村で、村全体をホテルにしようというプロジェクトが進んでいる。歴史的な家並みが美しいこの村は国内最小の自治体で、人口はわずか14人。村に点在する古い建物の部屋を宿泊施設として活用し、村の活性化を図るのがプロジェクトの狙いだ。

2018年春に提供を始める予定で、実現すればスイスで初めてのケースとなる。

ひとつの建物を丸ごとホテルにするのではなくて、もともとある空き家の、使えそうな部屋を"宿泊場所"として活用する、ということ。Airbnbに近いイメージ。

もちろん家主が居ないことも多いから、村内のレストランが宿泊の受付業務をしてくれるんだとか。

まだ手付かず状態の、実際の空き家の一室

Photo by SWI

公開されている情報も少ないので、ここからは私の仮説。事前に部屋の予約をするんじゃなくて、レセプションに行ったら宿泊チケットを買う。そして、好きな建物の好きな部屋を自分で選べる。この村を散策しながら、どこが一番見晴らしがいいかとか、お酒をたくさん飲みたいから、飲み屋の2階を狙ったりだとか。

もしこんなスタイルが実現したら、「泊まる部屋を探すため」に行く観光地ってことになるワケで、冒険心がとっても疼く。

Photo by SWI

広がっていく
「分散型ホテル」

こうした町の取り組みは、実は今回が初めてではない。以前TABI LABOでも記事にしたイタリアの「アルベルゴ・ディフーゾ」が、成功例として有名だ。

集落のなかに、レストラン、銭湯、客室など、本来はひとつのホテルが持っているものを分散させて、その場所自体がひとつの宿泊施設になることから、「分散型ホテル」と呼ばれている。これ、東京にもあるって知ってた?

AirbnbやUberのように、日本でも"普通"になりつつあるシェアリングエコノミー。そこにいる誰かとの"体験"に、お金を払いたいと思う人が増えてきた。

村自体をホテルにすることで、住んでる人しか知らなかった「イイもの」を、観光客が想い想いのままに選んで、繋いで、ひとつのツアー体験ができるというワケだ。シェアの規模を、家から土地へ。

とはいえ、これまでの事例はどれも、ネットから事前に予約しなきゃいけないんだけどね。

吸いとられた
活気を取り戻す

そもそもコリッポが、スイスのどんな場所にあるのかを調べてみたところ、大都市チューリッヒからは車で3時間と離れているものの、わずか20分弱の場所には有名なヴェルツァスカ川がある。奥にあるのは、"めがね橋"とも呼ばれているサルティ橋。

川底まで見えるという透明度が人気で、このあたりには観光客も多いみたい。

Photo by @kittybern

もっと見渡す限り山と川しかないのかと思ったら、びっくり。立派なタワーホテルや、ショッピングモールもあった。

Photo by @juodagalvis

近くの街が栄えていくのに比例して、村民は少なくなる。観光客もわざわざ何もない山奥にこれ以上行かずに、街で遊んで満足したら帰ってしまうのだろう。

こんなに近くまで多くの人が来ているからこそ、『ガストロスイス』で賞を取ってからは、すでに問い合わせが来ている。これって、すごくいい兆候だと思う。一度は吸い取られてしまった活気を利用して、この村が彩りを取り戻せば、地方創生のモデルケースとして、世界に定着する日も遠くないのかもしれない。

Top Photo by SWI
Licensed material used with permission by swissinfo
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