イタリアで人気の「分散型ホテル」って、何が散らばってるの?

現代日本が抱える少子高齢化、人口減少に直面した社会環境がイタリアにもあるそうだ。過疎化が進む農村や山間部の集落は空き家であふれ、地域再生やまちづくりが急務。

けれど、こうした過疎化に集落が一体となって観光客を呼び込み、活性化を図る取り組みが40年近く前からこの国には根付いていた。それが、分散型ホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」だ。

集落全体がひとつのホテル
分散型の宿泊施設

複数の客室、レストラン、バーなどが建物内に一体となった施設をホテルと定義するならば、アルベルゴ・ディフーゾ(Albergo Diffuso)はその機能をバラバラにし、集落のなかに分散させた宿泊形態を指す。

村の中心にレセプションカウンターならびに管理棟を置き、集落内の空き家を客室として利用する。空き家といっても、もちろん客室用にリフォームされたもの。朝食は目抜通りのカフェで提供されたり、夕方からは村はずれのバーにふらっと出かけることもできる。

自分もそこの住人になった気分で村に溶け込めるという点では、Airbnbにも似ているのかもしれない。

村の住人に紛れる
ホテルステイはどう?

では、実際にどれほどの“散らばり”をしているのか、その一例を見てみよう。

アドリア海に面した南部プッリャ州のポリニャーノ・ア・マーレといえば、夏場に営業する「洞窟レストラン」で有名な地。けれど、そこから1時間ほど車を走らせた村バジリカータは、写真から察するに、観光の要素が随分と削ぎ落とされた印象を受けるエリアだ。

そこに分散型ホテル「Dei Serafini」はある。アルベルゴ・ディフーゾがイタリアで広まった初期の頃、1980年代からあるホテルのひとつとして知られている。

まずは、レセプションロビーと軒を並べるカフェテリアへ。ノリの効いたシャツに袖を通したカメリエーレが淹れてくれる、とっておきのカプチーノをいただきたい。

床のタイルを見ても分かるように、元々の空き家の間取りによって、客室の雰囲気も異なるそうだ。

ひだまりのテラスで朝食をしたり、村はずれのトラットリアで海を眺めながらの食事もいい。

地震による被災から
地域再生を狙う手段だった

アルベルゴ・ディフーゾ協会(Adi)によると、現在イタリア全土だけでも120近いホテルが分散型を採用しているという。その起源には、1976年イタリア北部を襲った大地震による被害が関係していた。

この年、ヴェネチアの北東部を地震が襲い、特に被害の大きかったフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州では、住人が家を捨て町を離れていくケースも少なくなかったそう。

震災復興の資金として地域に割り当てられた予算をどう使うかを決める会議の場で、観光マーケティング学者だったGiancarlo Dall’Araの案で、あるじを失った空き家を客室とし、村全体をアコモデーション施設とする、地域再生計画が採用された。のちのアルベルゴ・ディフーゾとなったのは言うまでもない。

その後も1980年、2009年の南部地震で、さらには今年10月の地震の後も、分散型ホテルが被災地の人離れを補填するかたちで誕生。つまり、復興と地域再生に分散型ホテルは、まばらになってしまった住人とインバウンド観光客を結ぶ、活性化の起爆剤としても役割を担っているわけだ。

集落を丸ごとホテルに。村おこしのようでもあるアルベルゴ・ディフーゾが、過疎化を止める手立てになる。イタリアの限界集落による観光づくりは、はたして日本の地方創生のモデルケースになるだろうか。

「都市から農場へ」の動きをつくった農園ライフも楽しめる旅のスタイル、アグリツーリズモともひと味違い、村に溶け込むようにして生活するアコモデーション。今度のイタリア旅行は、こんな過ごし方もいいかもしれない。

Reference:Adi
Licensed material used with permission by Dei Serafini