アメリカで「悪魔コス」をすると、こんなにややこしい
10月末といえば、ハロウィン。
そしてハロウィンといえば仮装だが、では仮装といえば?
まあ、これは人それぞれだとは思うけど、“悪魔コス”というのはかなりメジャーどころだろう。日本では特に深い意味もないこの悪魔のような格好、でも、言論の自由を重んじる“自由の国”では少し厄介な存在らしい。
ペンシルバニア州のローズツリーメディア学区では、暴力的なメッセージを伝える服装や所持品、そして「悪魔主義的な服装や所持品」が、服装規定によって禁じられていた。
じつに当たり障りのなさそうな規定だが、これに違を唱えたのが地元の悪魔主義団体「サタニック・デルコ」の創設者ジョセフ・ローズ氏だという。
いわく「公立学校がすべての宗教を許容していながら1つだけ認めないのは、明らかに不公平で憲法違反」とのこと。
……たしかに。
まあ、本当に微妙なところではあるけれど、それが真に“宗教”であるなら間違ってはいない。しかもこのローズ氏、服装規定への不満をおよそ1ヶ月にもわたってメールや電話で訴え続けていたのだそう。これが許されるアメリカって(笑)
さすがにシビれを切らしたのか、ローズツリーメディアの学区長より「生徒手帳に記載された服装規定から、その部分を削除する」とのアナウンスが!
ちなみに、生徒や保護者、住人などからの苦情や不満は一切きていなかったとのこと。やはりほぼ迷惑電話だが、ここまで貫くのは確固たる信念と言えなくもない。
本人は「言論の自由の勝利」と喜んでいるようで、この決定はより多様な価値観を認めた新しい例と言えるのかも。
しかし、ここで問題となるのは、悪魔主義のような宗教を認めてしまった場合、この先どこまで許容するのか、ということ。
実際に生徒の保護者からは「もし子どもたちがナチスのシンボルが描かれたシャツを着て学校に通ったら、それも認めるのか?」と心配の声があがったそう。
悪魔主義への懸念が広がる一方で、当のサタニック・デルコ、じつは悪魔を崇拝している団体ではないんだとか。え?
同団体は悪魔の存在や超自然現象を信じているわけではなく、合理的探求と批判的思考を磨くために「サタン」という名称を使っているのだそう。
だとしたら、学校の服装規定へ1ヶ月もいちゃもんを入れ続けるなんて、いよいよ嫌がらせにしか思えないけど……。大体、悪魔を信仰していないなら悪魔のシンボルの装いをする必要もないはずだし。
非常に難しい“宗教”の概念。捉え方は人それぞれだが、受け入れ過ぎは無秩序にも繋がるので慎重に考えたいところ。
一方、当のサタニック・デルコはすでに他の学校にも不服を申し立てているらしい。今後の動向にも(ちょっとだけ)注目したい。