「音」がなくても楽しめる、コールドプレイの最新ライブ
「音楽は“波”だ。聴くだけじゃなくて、感じるものだろ?」
世界的オルタナバンド「Coldplay」のドラマー、ウィル・チャンピオンはそう語る。
Coldplayのツアーといえば、花火や巨大モニター、観客が身に着ける発光リストバンドを連動させるといったスペクタクルな演出の代名詞。
そんな同バンドが、現在催行中のワールドツアー「Music of The Spheres World Tour」において、これらの代名詞に加え新たにバリアフリーとサステナビリティを追加させるものになるようだ。
というのも、本ツアーでは「インクルーシブ&アクセシブル」をテーマに、あらゆる人がライブを楽しめるように様々な取り組みを実施している。
中でも注目したいのは、耳の不自由な人々に配慮した「SUBPACs」というウェアラブルシステム。
これは「音楽の振動を伝えるベスト」で、これを着用すれば音が聞こえなくとも音楽を“感じる”ことができるというわけだ。
さらに、ツアーでは各国語に対応した手話通訳者を提供し、目の不自由な人に対しては開演前にタッチツアーを行うなど、あらゆる人々がバンドの音楽を楽しめる環境を実現している。
ウィルの言葉通り、このワールドツアーは「音楽を感じる」という斬新ながら原点回帰的なバンドの主張を体現するものとなっている。
また、今回のツアーは「持続的で、地球にとって有益なものにする」という目標の下、バイオ燃料の使用や廃棄物削減、さらにそれらの運搬方法も刷新するなど、極限まで環境に配慮した「カーボンニュートラルを実現するため」のツアーでもある。
これらの先進的な取り組みをColdplay(グラミー賞を7回受賞し、全ツアーは史上番目の興行収益を誇る)が取り入れることは、間違いなく業界を牽引する上でも大きな意義を持つだろう。
もちろん、環境や体の不自由な人への配慮に力を入れていても、彼らの持ち味である壮大な演出は健在の様子。
今回は来日の予定はないが、次に目にする彼らのライブには、五感を超えた「真の美しさ」を期待できそうだ。