売れ残りが「プラス」になる!?米ブランドで流行る新戦略とは
生産プロセスの見直し、素材の切り替え、ユーズド商品の回収……持続的な未来を実現するべく、ファッション業界の改革が着々と進んでいる。
これまで紹介した事例はハイファッションに関するものが多かったが、もちろんロー/ファストファッションの世界でもこういった取り組みに着手しているところはある。
ここに紹介するのは、最近アメリカのアパレル業界で注目を集めている「パック&ホールド」という新戦略。
それは、「売れ残った商品を破棄せずにストックし、別の機会に再び販売する」というもの。
すでに「ギャップ」や大手百貨店の「コールズ」、さらには「カルバン・クライン」や「トミー・ヒルフィガー」擁する「PVH」といった著名企業が相次いで同様の取り組みを発表しており、今後も拡大が見込める。
昨今は新型コロナウイルスやインフレの影響によって衣服需要が低下しているため、生産数を落としきれなかった企業側は、多数の余剰在庫を抱える事態になっているそう。
そこで、売れ残った商品の一部を回収しておき、年末年始や次シーズンなど需要増加が見込めるタイミングで再販売する計画に乗り出したというわけだ。
また、この戦略はサステナビリティを促進するだけでなく、企業利益の面でも効率的だという。
一般的にアパレルアイテムが売れ残った場合、処分するかセールによって売り切る戦略が取られるが、大幅な値下げは利益率を下げるうえに、ブランド価値を損ねてしまう懸念もある。
一方のパック&ホールド戦略では、再び需要が高まるタイミングまで保持しておくため、値下げの必要がないどころか、当初よりも高い価格を目指すこともできるようになる。
売れ残りが(一部とはいえ)プラスに働くようになる、一石二鳥の革新的な戦略と言える。
ただ、保持できる在庫数には限界があり、再販の可能性を見出せるアイテムは流行り廃りに左右されないベーシックなもの・または今後もトレンドが続く見込みのものに限られる等、これ一つで余剰在庫に関する課題がすべて解決できるわけではない。
とはいえ、新たな選択肢を見出し持続的な未来へ向かおうとしていることは確か。
他方では余剰在庫を“消滅させる”衝撃的なマシーンが登場しているなど、まだまだできることはたくさんありそうだ。今後の歩みに期待したい。