このジョン・レノンは「本物」なのか。ビートルズが新アルバムを発表
過去の偉人を、疑似的に復活させる──。
先日の「ビル・ゲイツとソクラテスの対談」も記憶に新しい今日、この技術は単なる“お遊び”の域を越え始めたようだ。
BBCの番組『Radio 4』にてポール・マッカートニーが明かしたところによると、AIの助けを借りたことで、完全体ビートルズの「最後のレコード」が今年中にリリースされるという。
AIによって古いテープに録音されていたジョン・レノンのボーカルを抽出し、何十年も前に制作された楽曲をリマスター・完成させたそうだ。
楽曲やアルバムの詳細は明かされていないが、BBCはポールが言及した楽曲について、ジョンの没前に録音されたデモ音源『Now and Then』である可能性が高いとしている。
今後、亡き歴史的ロックバンドのリリースが相次いだりするのだろうか。嬉しいことか、それとも恐るべき事態なのか。
大問題となっているAIによる歌手やアーティストの模倣は、これを機に新たな局面を見せ始める可能性がある。
同様の技術が悪用された例として、5月頃にドレイクやザ・ウィークエンドの声をAIが模倣して歌った楽曲(おまけに楽曲制作もAI)が、「Spotify」などのストリーミングサービスにアップロードされる事件があった(現在はレーベルの訴えにより削除されている)。
また、TikTokではアリアナ・グランデの声がドレイクの楽曲を歌っている動画や、著名ラッパー3人にアニメ主題歌を歌わせる動画が投稿。
容姿や性格と同じ人のアイデンティティだった“声”は、無為なコピーによって簡単に侵害されてしまった。
ただし、公式(しかも超大御所)が利用したとなると、業界や法にとっても特大の影響を及ぼすことになりそうだ。
果たして、新曲に収められたジョンの声は「本物」と呼べるのか。まずはリリースを待って、その行く末に注目しよう。