旅の責任を考える。これからのスタンダード「レスポンシブル・ツーリズム」について
目次
旅行先の環境や文化に配慮した旅を考えたことはありますか?訪れる場所を尊重し、持続可能な観光を目指す考え方として、昨今注目を集めているのが「レスポンシブル・ツーリズム」です。本記事では、その意味や具体的な実践方法、国内外の事例を詳しく解説します。
レスポンシブル・ツーリズムの定義
レスポンシブル・ツーリズムとは、旅行者が訪問先の環境や文化、経済に与える影響に責任を持ち、持続可能な観光を実践する考え方です。これは、観光に携わるすべての人が、その土地の環境や文化などに与える影響に責任を持つべきであるという理念に基づいています。
オーバーツーリズムの問題と対策
近年、観光客の急増により、地域住民の生活や環境に悪影響が及ぶ「オーバーツーリズム」が問題視されています。たとえばスペインのバルセロナでは、観光客の増加に伴い、地元住民の生活環境が悪化し、観光反対デモが発生するなどの事例があります。
このような問題に対処するため、各地で対策が講じられているのですが、それは日本も例外ではありません。京都市では公共交通機関の混雑緩和を目的に、観光客に対して公共交通の利用時間帯を分散させる取り組みや、京都を訪れる時期の分散化を呼びかけるなど、積極的にオーバーツーリズム対策を実施しています。

レスポンシブル・ツーリズムの具体的な取り組み
もちろん、旅行者として環境や文化に配慮した行動を心掛けることが重要なのはいうまでもありません。具体的には、レスポンシブル・ツーリズムとして以下のような取り組みが考えられます。
環境に優しい交通手段の利用
可能な限り公共交通機関や自転車、徒歩での移動を選択し、CO2排出量の削減に努める。エコフレンドリーな宿泊施設の選択
環境保護に取り組む宿泊施設を選ぶことで、旅行中の環境負荷を軽減する。地域の文化や習慣の尊重
訪問先の文化や習慣を事前に学び、現地のルールやマナーを守る。
日本におけるレスポンシブル・ツーリズムの事例
日本国内でも、持続可能な観光を目指した取り組みが進められています。その一例をご紹介しましょう。
世界遺産と住民の暮らしを守る取り組み
白川郷(岐阜県)
岐阜県白川郷は、合掌造りの集落が世界遺産に登録されて以来、観光客が急増しました。しかし、オーバーツーリズムによる住民の負担増加や景観破壊が問題となり、地元自治体と観光協会が対策を実施しています。
たとえば、マイカー規制とシャトルバスの導入です。村内の交通量を抑えるため、観光客向けの専用駐車場を設け、シャトルバスの運行を実施。また、観光客のマナー向上にも努めています。住民の生活空間に無断で立ち入らないよう、案内板を設置したりパンフレットを活用。
こうした取り組みにより、観光客が白川郷の美しい景観と文化を楽しみながらも、住民の暮らしを守る仕組みが構築されています。
世界自然遺産を未来へつなぐためのルール
屋久島(鹿児島県)
“一生に一度は訪れたい島”として知られる屋久島は、1993年に世界自然遺産に登録されて以来、観光客が増加。これにより、登山道の荒廃やゴミの放置などが問題になりました。これを受け、屋久島では環境保護のために以下の取り組みを実施しています。
入山者の事前登録制度。一部の登山ルートでは、入山前に環境保全のルールを学び、登録を行う制度を導入。また、登山者に対し、「湿原を汚さない、苔を踏まない」「スプレーやテープなどの目印をつけない」「ゴミは捨てずに持ち帰る」など、登山時の心得やマナーの周知徹底に注力。こうした取り組みにより、屋久島の貴重な自然環境を次世代に引き継ぐことを目指しています。
レスポンシブル・ツーリズムとSDGsの関係
レスポンシブル・ツーリズムは、国連が提唱する 持続可能な開発目標(SDGs) の達成にも貢献できる旅行スタイルです。特に、以下の目標と関連性が深いと考えられます。
目標11「住み続けられるまちづくりを」
→観光客が地域住民と共存できる持続可能な都市づくりを支援。
例:各地の観光マナー啓発キャンペーン
目標12「つくる責任 つかう責任」
→旅行時の消費行動を見直し、持続可能な選択をする。
例:地元産の食材を使用したレストランの利用、エコツアーへの参加
目標14・15「海の豊かさを守ろう・陸の豊かさを守ろう」
→海洋プラスチック問題や森林破壊の防止に貢献。
例:ビーチクリーン活動への参加、認証エコホテルの利用
レスポンシブル・ツーリズムを実践するためのポイント
レスポンシブル・ツーリズムを実践するためには、特別な準備は不要です。日常の旅の中でちょっと意識を変えるだけで、環境や地域社会への影響を減らすことができるはず。以下のポイントを参考にしてみてください。
事前に訪問地のルールを確認する
訪問先の観光協会サイトやガイドブックを活用し、事前に文化やマナーを学んでみましょう。たとえば、ゴミの分別ひとつとっても地域ごとに異なります。郷に入りては郷に従えの精神です。
環境にやさしい宿泊施設や移動手段を選ぶ
環境認証(エコラベル)を取得したホテルを利用してみるのもレスポンシブル・ツーリズム実践の第一歩。目安のひとつとして、国際的なエコラベル「Green Key」取得の浦t流はいかがでしょう。また、交通手段も飛行機より電車移動を優先するなどの方法も。
地元の食材や製品を積極的に選ぶ
地産地消のレストランで食事をしたり、お土産として地のものや伝統工芸品を選ぶことで地域経済に貢献もできます。
こうしたすこしの工夫でも、レスポンシブル・ツーリズムを意識したより良い旅行体験ができるはずです。

レスポンシブル・ツーリズムは、単なる観光の枠を超え、「訪れる場所と共生する旅」 という考え方です。観光地を楽しみながら、その未来を考えることで、私たち一人ひとりが持続可能な社会に貢献していくことにもつながります。
次の旅行では、環境や文化に配慮した選択をし、新しい視点で旅を楽しんでみませんか?あなたの行動が、未来の観光地の姿を変えるかもしれません。