人気観光都市バルセロナがエアビーを「禁止」に!?
この夏、長期休暇を利用して、海外旅行をする人も多いはず。東京や京都へ多くの訪日観光客が訪れるなか、日本にも引けを取らない人気都市が世界には存在する。その内の一つがスペイン・バルセロナだ。
公式統計によると、バルセロナには2023年に約2300万人もの観光客が訪れたらしい。サグラダ・ファミリアをはじめとする観光スポットや、パエリアなどの世界的グルメ、観光にはうってつけの都市なのは間違いない。
しかし、この世界有数の観光地で今、観光客排除の動きが高まっていた──。
オーバーツーリズムが招いた悲劇
バルセロナ市民、怒りの声
じつは、バルセロナの1平方メートル当たりの賃貸価格は、今年4月までの12ヵ月間で14%上昇し、スペインの都市の中で最も高騰が続いている地域だ。
その原因のひとつが、観光業。なんでも、毎年バルセロナを訪れる大量の観光客が、Airbnbなど旅行者用アパートを利用することで、地元住民が住宅市場から締め出されしまっているらしいのだ。いわゆるオーバーツーリズムの被害の一つである。
オーバーツーリズムによる生活環境への被害に対して、バルセロナ市内では数千人規模のデモが発生し、「観光客は家に帰れ!」といった掛け声と共に、水鉄砲で旅行者に水をかける行為も発生するという事態に。
こうした状況をうけ、バルセロナ市長のジャウメ・コルボニ氏は、住宅問題をバルセロナの「最大の問題」であるとし、2028年11月までに1万以上の賃貸物件について、短期賃貸の免許の取り消し、2029年以降は、観光客向けの宿泊施設として貸し出す許可が、一切出なくなる計画を発表した。
相次ぐエアビーの世界的な規制
今回バルセロナ市が発表した短期賃貸アパートの禁止という大胆な計画だが、こうしたエアビーなどのサービスには、世界的に規制の動きが強まっている。
たとえば現在オリンピック真っ只中のパリ、短期賃貸は年間120日まで。ここ日本でも、年間180日まで。さらに、新宿区などでは賃貸の曜日・時間まで規制されている。もっと短い賃貸期間を設定しているのはニューヨークで30日未満。それ以上の滞在を禁止し、ホストが現地に滞在している場合にのみ許可される。ニューヨークでは、実質「エアビー禁止」となったことでも話題になった。
オーバーツーリズムと
家賃高騰の因果関係
いっぽうのAirbnb(エアビー)側からは、バルセロナ市が発表した対策についての言及はされなかったが、関連団体である「欧州別荘協会」は以下のような声明を出し反論を展開した。
「バルセロナで短期賃貸を禁止しても、住宅問題の解決や、観光の持続可能性向上にはつながらず、地元住民の収入を、国際的なホテルチェーンへ移転するだけ。短期賃貸はバルセロナの住宅の1%未満であり、地元住民に大きな収入をもたらしている」「我々は市と協力してより良い方向へ進んでいきたいと考えている」
はたして、家賃高騰の対策として観光客向け賃貸アパートを禁止することは“最善”の判断であると言えるのだろうか。日本でも人気の旅行先なだけに、バルセロナ観光の今後に注目が必要だ。