バルセロナの地下鉄でブレーキエネルギーを再利用。「エネルギー循環型都市」の可能性
世界的な脱炭素化の流れ、都市における公共交通機関のあり方が問われている。CO2排出量の削減はもちろん、限られたエネルギーをいかに効率的に活用するかが、未来都市の設計において重要なカギとなる。そんななか、バルセロナの取り組みが注目を集めている。
失われたエネルギーを街の電力に
「MetroCHARGE」の仕組み
バルセロナが導入したのは、地下鉄のブレーキ時に発生するエネルギーを電力に変換し、街の電力網に還元する「回生ブレーキ」システム。クリーンてクロノジーを紹介する「CleanTechnica」によると、同システムは「MetroCHARGE」と名付けられ、バルセロナ地下鉄の総消費電力のうち、実に33%を回生ブレーキで賄うことに成功しているそうだ。これは、年間約3.9メトリックトンのCO2排出量削減効果、そして年間4億4000万人が利用するバルセロナ地下鉄のエネルギー消費量を10%以上削減する効果に相当するらしい。
従来、電車のブレーキ時に発生するエネルギーは、熱として大部分が失われていた。MetroCHARGEは、この失われたエネルギーを電力に変換し、地下鉄の電力として再利用するだけでなく、街中のEV充電ステーションにも供給するという。
同システムの導入により、バルセロナはエネルギーの地産地消を実現し、持続可能な都市交通システムの構築に向け大きな一歩を踏み出したことになる。
環境負荷軽減だけにあらず
副次的なメリット
MetroCHARGEの導入効果は、CO2排出量削減やエネルギーコストの削減だけにとどまらない。興味深いのは、地下鉄トンネル内の温度上昇抑制効果だ。
バルセロナ地下鉄のMetroシステム責任者である Jordi Picas氏は、「回生ブレーキを導入していない地下鉄では、使用されずに失われるエネルギーが大量に発生し、それが熱となってトンネル内に広がり、温度上昇を引き起こす」と指摘。
回生ブレーキを導入したことで、バルセロナ地下鉄ではトンネル内の温度が華氏1.8度(摂氏1度)低下したという。これは、都市部で問題となるヒートアイランド現象の緩和策としても期待できる効果と言えるだろう。
未来都市のインフラへ
「エネルギー循環型都市」の可能性
MetroCHARGEプロジェクトには約780万ユーロ(約860万ドル)の費用が投じられたが、エネルギーコスト削減とEV充電ステーションの収益により、5年以内の投資回収を見込んでいる。
バルセロナの事例は、公共交通機関のエネルギー効率化と収益化を両立させる、持続可能な都市交通システムのモデルケースと言えるだろう。「CleanTechnica」によると、ニューヨークやニューデリー、ウィーンなどの都市も、バルセロナの取り組みに関心を示しており、同様のシステム導入を検討しているという。
近い将来、私たちの街でも、地下鉄を降りた人がそのままEVに乗り換え、回生ブレーキで生まれたクリーンなエネルギーで街を駆ける、そんな「エネルギー循環型都市」の風景が見られるかもしれない。
👀GenZ's Eye👀
エネルギーの再利用とCO2排出量削減を実現し、都市交通システムの新たな可能性を示している。さらに、トンネル内の温度低下という副次的効果も。他の都市も関心を示していることから、この技術が都市設計の新たな標準となる可能性があり、日本でも実現可能なのではないかと期待が高まる。