「やりたいことをやらない人生なんて、命のムダづかいだ」 四角大輔×吉田拓巳-vol.2-
vol.1では、「過去に戻るなんて、ナンセンス」と伺いましたが、今回は本題である「ロールモデルからの抜け出し方」について、詳しく聞いていきたいと思います。
15歳で起業、絶頂期での退社…
すべて“超王道”の選択だった
――今、いい大学や会社に入れば成功するといったロールモデルがない時代です。とはいえ、ロールモデルを外れることに不安を感じる人もまだまだ多いと思うんです。お二人はそれぞれ、大手レコード会社を辞めること、15歳で起業することに不安はなかったんですか?
四角 僕らは自分のやりたいことをやっているだけ。頭じゃなくて、心のど真ん中から発せられる声に従って生きて、それを極めたいだけ。それが世間一般からすると、道を外れていたり、ドロップアウトとかに見えるかもしれないけど、僕らからしたら、“自分にとっての超王道”の人生を生きていると思ってる。
僕は会社を辞めることや、フリーになることを勧めていると思われがちですが、そんなことは実は一度も言ったことなくて。 世間体とか、親の期待とか、どうでもいいことのために生きるのではなく、「自分の心の声をしっかり聴いて、自分にしか創れない人生をデザインして欲しい」と思っているだけなんです。
吉田 本当に重要なのは、何を本気でやりたいのか、それだけ。
でも、なんとなく就活をしなきゃいけない、なんとなく大学にいかなきゃいけない、なんとなく受験勉強しなきゃいけない、みたいな風潮がまだまだ世の中にはあって。自分が本当にやりたいことをやりにくい、または、やる瞬間さえも見つけられないような社会の雰囲気はあると思います。
とにかく重要なのは自分がやりたいことをやること。もし自分がすごく会社員になりたかったら、それはとてもいいことだと思います。
何よりも
"大きなニジマスを
毎日釣る生活をしたい"
と思った
――ちなみに、四角さんは大手レコード会社を辞めるときに、不安に勝る期待やビジョンはあったんですか?
四角 そんなのは何も考えていなかったです。音楽業界でフリーになる人は山ほどいるけど、そういった人たちは引き続き音楽の仕事をしている人が多いんです。僕の場合は、音楽の仕事は全部捨てて、完全リセットした。
——そうなんですね。
四角 僕にとっては「美しい湖で大きなニジマスを釣る」っていうのが人生で一番やりたいことで、“睡眠欲・食欲・性欲”といった、いわゆる人間三大欲求よりも気持ちいいことで、「これを極めない人生はありえない!」と思ってました。
で、「せっかくやるんだったら世界最高の環境でやりたい!」ということで、いろいろ調べたら、ニュージーランドが“湖とニジマス”の両方で世界最強ってことがわかりました。だけど、当時22、3歳の僕にニュージーランドへの移住は夢のまた夢のようなもので。 それで、「10年働いて移住しよう」と。それまでに異国で生きていけるだけのスキルやサバイバル能力を身につけて、お金をためようと考えました。
——それで日本で会社員生活に入ったんですね。
四角 そう。最初に入ったのがソニーミュージック。でも、たまたまで。当時、プロデューサーになろうなんて思わなかったし、この業界で出世してやろうなんて一ミリも考えなかったし、レコード会社のこともよくわかってなかった。
だから、最初に「希望の職種とかある?」って聞かれたときに、「営業です」って答えたんです。営業はなんとなくイメージできたけど、プロモーターとかプロデューサーとかディレクターが何やってるかよくわかってなかったから(笑)
でもその後、心から惚れ込むアーティストたちに出会ってしまった。気付いたら、大げさではなく命がけで、“アーティスト”と“彼らが創る音楽”を世の中に届けることに夢中になってた。そんなプロデュースの仕事をやっていたら、奇跡的なヒットが続いて、評価されて、すごいって言われるようになった。
——では、満を持して退職されたんですね。
四角 正直、満を持してという感覚はなく、何年も取れなかった念願の永住権が取れたタイミングに移住しただけなんです。 働きはじめる前から、ニュージーランドの湖畔で暮らし、魚を釣ってオーガニック農園をやる自給自足の“森の生活”がしたかったから、単純に本来の自分に〝還れた〟という感じですね。
手にしていた年収や地位は“もともとなかったもの”だったから、“捨てる”という感覚はなかった。それらを失うことにもったいないという気持ちは一ミリもなくて、不安よりもワクワクの方が強かった。「ついにこの瞬間がきた~!」って感じでしたね。
家を買うだけの金は貯めてたから、仕事がなくったって「住みかがあって、食べる分は自給自足すればまぁ大丈夫だろ」としか考えてなかったです。
ダメだったらやめればいい。
まずは後先考えずやってみる
――やりたいことをやるのが当たり前っていう考えには、どうやって至ったんですか?
吉田 シンプルな話だと思います。「やるしかない」「他に選択肢はない」と思っているから。
社会に対していつも思うのは、みんな慎重すぎるということ。本当に何が自分に合うかどうかは、やってみないとわからないじゃないですか。だから、目の前にあるちょっとした面白そうなものをとりあえずやってみて、ダメだったらやめればいいと思うんです。
四角 ITのスタートアップ用語でピボットっていうのがあって、今成功しているすごいベンチャーも過去を調べると、多くがトライ&エラーを繰り返してきている。いろんなWebサービスに挑戦しては失敗し、今の業態に落ち着いている。多いところで5~6回とか。
吉田 だから、後先考えずにやることがすごく大事。
例えば、エアアジアはもともと、ワーナーミュージックの役員が20〜30円で買い取って、貯金していた2000万円で今の会社にしたそうです。航空会社を2000万でやるなんて「アホかっ!」て話ですよね。そもそも負債が何十億もあった会社なのに。けど、今やエアアジアは世界有数のLCCにまで成長していますよね。
四角 これが拓巳くん世代の発想。そういうアドバイスをする大人は少ないよね。
吉田 そうですね。「物事をはじめるにはしっかり準備して、修行してやり続けろ」みたいな風潮があるじゃないですか。
四角 たしかに。それも一つの方法なんだけど、それだけを押しつけるのはどうかと思う。
これまでは、ちょっと試してダメで、また次行くのをよしとする風潮ってなかった。昔は「絶対転職したらダメ」「一回会社入ったら勤め上げろ」みたいな感じだったでしょ。 当時はそれがスタンダードだったけど、今考えると異常なわけで。
吉田 「最低5年はやれ」みたいによく言われていますよね。
四角 そう。もちろん、一つのことをやり続けることも素晴らしいし、美しいことだと思う。ただ、方法は“それだけ”じゃない。僕もそうしてきたこともあり、「とにかくやってみる」というスタイルには僕も賛成。 やってみなきゃわからないことってたくさんある。
吉田 そうですね。
四角 さっきの、なぜやりたいことをやるんですか?という質問の答えに戻るけど、僕らがやりたいことをやる理由は、それ以外の選択肢は考えられないし、やりたいことをやらない人生なんて、考えただけでゾッとする。
極端なことを言い方をすると、やりたいことに挑戦しない生き方なんて、命の無駄遣いだし、人生に対して失礼だと思う。
多くの人が自分の心に従って生きていく社会になれば、日本はもっと元気になると思います。お二人の話を聞いて、心からそう感じました。
次回は、やりたいことをやるための一歩を踏み出す秘訣についてお伺いしたいと思います!
コンテンツ提供元:QREATOR AGENT