疲れて疲れて、壊れそうなとき。「マインドフルネス」で心を整えよう
マインドフルネスの定義は、「今この瞬間に、価値判断をすることなく、注意を向けること」。この根元にある概念は、日本人にも馴染みが深い「禅」に通ずるものがあります。
禅僧でありながら医師の肩書きを持つ川野泰周さんの著書『あるあるで学ぶ余裕がないときの心の整え方』では、ストレスを感じる人はまず心を整えることが重要だと説いています。
最近、心が疲れていると感じることはありませんか?心が疲れると、体も同時に壊れていきます。そうなる前に「マインドフルネス」や「禅」をつかって予防することが大切です。
01.
景色が色を失ったように見える
→目に映り込んだ「色」に集中
その時々の心のあり様によって、物の見え方すら変わることをご存知でしょうか。私(著者)は精神科医として診療を続けるなかで、多くのうつ病患者さんを治療させていただきました。
うつ病の一番重い時期には、仕事を休んで心の栄養を充電しなくてはならないことがあります。そんな状態になった人が口にする言葉。それは「景色が色を失ったように見える」です。これは景色に色がついていることは理解しつつも、視覚刺激に反応する心のエネルギーが枯渇しているために起こります。この症状は、うつ状態から回復すれば取り戻せます。
そこまで重度ではないにしろ、同じような症状を感じたことはないでしょうか。気分がパッと晴れない人は、「マインドフルネスに見る」ことで、風景が変わっていくかもしれません。
方法はとても簡単。視覚に集中して、目に映りこんだ色をつぶやくだけです。ここでのポイントは、できる限り詳しく色をイメージすること。ただ単に「水色」「緑」と色を言うのではなく、「澄んだ水色」「濃い緑」というように、色を細かく観察します。そうすることで脳内に色彩のイメージがつくられていくのです。
重要なのは、何気なく見過ごしていた景色の美しさに気づくこと。景色がよどんで見えるのであれば、視点を変えてみましょう。
02.
イライラして、食べすぎちゃう
→少ない量を全身全霊で食べる
食べ過ぎてはいけないとわかりつつ、食欲をコントロールできない…という経験は、少なからず誰にでもあることではないでしょうか。
食べる行為は、元来私たちが生命を維持するために必須の行動ですが、同時に心のバランスを保つための大きな役割を担っています。よって、ストレスが蓄積したときに「やけ食い」のような、適正量を超えて食べる行動が選択されやすいのです。
食べ過ぎで困っている人にオススメなのが「マインドフルネスに食べる」こと。言い換えるなら、「全身全霊で食べる」ということです。目の前の食べ物にすべての注意を向けて、一口を味わい、大切にいただく。
ストレスがたまって思いきり食べたいときほど、いつもの半分の量の食事を、ゆっくりと噛みしめながら時間をかけて食べてみてください。その体験はきっと、単に食事をコントロールすることだけでなく、心を軽くする訓練になるはずです。
03.
気がつけばいつも…スマホ中毒
→「本当に必要なもの」に絞る
つねにスマホが気になってしまう人のほとんどが、無意識に同じ動作を繰り返しています。これを「自動操縦」と言い、「今この瞬間に、価値判断をすることなく、注意を向けること」を定義とするマインドフルネスとは、正反対の概念なのです。
つまり、心が今この瞬間に向かず、過去からの引力に引きずられている状態。ここで禅から学ぶことがあります。
名高い禅寺の僧堂には、必要最低限の物しかありません。周囲にいろいろな物があれば、それぞれに気を配る必要が生じ、瞑想に集中しにくくなります。気が散る物を置かないというのは、禅宗の長い歴史で培われた先人たちの知慧です。
スマホにあるいくつかのアプリは、あなたの人生において本当に重要でしょうか?重要でないと判断した場合は、速やかにアンインストールし、無駄を省いていきましょう。
04.
休日も仕事が頭から離れない
→4つのチェックリストを
せっかくの休みなのに、未解決の仕事で頭がいっぱい…。職場にはいかないものの、休日でも常に仕事のことばかり考えていませんか?クタクタに疲弊する前に、まず以下のことが休日中に実行できているかチェックしてみましょう。
1.リラクゼーション
神経をしっかり休ませているか2.レスト
体をしっかり休ませているか3.レクリエーション
遊んだり笑うことで気分を変えられているか4.リトリート
普段の生活と離れて静養できているか
もし、実行できていないのなら、まずはこの4つから始めてみると良いでしょう。
ちなみに、禅的にいうリトリートは旅行とは少し違います。海や山へ行き、非日常に身を置いて、心身を静養すること。プチリトリートとして、他人の視線を感じない場所、他人から話しかけられない場所に身を置くのも良い方法です。
限界を感じる働き方をすると、必ず心が壊れます。そうなる前に、この4つの行動を心がけ、自分の心と体を回復させることに努めてください。