素晴らしいリーダーは、時々「素晴らしい役者」でもある。

スティーブ・ジョブズが基調講演の時に「そして、もう一つあります…」という決まり文句を多用していたのには意味がある。

よいリーダーは、様々なスキルを要するもの。とりわけ、素晴らしいリーダーになるためには、あるスキルが重要な鍵を握っている。それは、演技の才能だ。

もちろん、違う人格を演じろといっているわけではない。ただ、瞬間瞬間をもっと意味があり、インパクトのあるものにするためには少しドラマ調にするのがコツだ。

Amazonなど数多くの企業レポートやビジネス書籍を手がけてきたジェフ・ヘイデン氏が「Inc.」に寄稿した記事を紹介していこう。少し長いけれど、最後には必ず「なるほど」と納得できるはず。

伝説のヒーローが取った行動

米国で、最大のモータースポーツ団体NASCAR。その元ドライバーであったリック・マストが、デール・アンハートについて話してくれた内容が印象的だ。

デールは、ただの伝説的ドライバーではなかった。リチャード・ペティ、ジミー・ジョンソンたちと共に、ビジネスとマーケテイングの帝国をもつくりあげたのだ。

90年代前半、リックはチャリティーイベントを主催し、注目を集める施策を探していた。そこで、当時、レース界のヒーローだったデールに参加を依頼したのだ。デールは同意したが、1つ条件を出した。それは、予定が詰まっているので、イベントに出席するのは、2時間だけというものだった。

リックは了承した。少しでも参加してもらえるなら全く来ないよりマシだと考えたからだ。

イベントでは長い行列ができた。デールは時間通りに来て、ファンと会ったりサイン会をしたりした。そして、2時間が経過しようとしていた時に、リックにチラリと視線を送った。

リックはその視線を読み取り、ロープを張りながら次のように言った。「申し訳ありません。この線より後ろの方たちは対応できません。まもなく時間切れです」と。

数百人の人が不満を言いながらもゆっくり離れていった。デールは、サインをしていた手を止め、ふと見上げると呟いた。「あれ?一体、どうしたんだい?」

その瞬間、全員が振り向いた。リックは混乱しながら言った。「デール、僕が時間切れって伝えたんだ」

「何だって?」デールは、声を荒げて言い放ったのだ。「君は時間切れかもしれないけど、俺はそうじゃない。全員に会うまでここを離れないぞ!」

お客さんは歓声をあげた。再び、すぐに長い列ができた。この瞬間、デール・アンハートは、熱烈なファンを数百人も増やしたのだ。

「もちろん、あの時は、私が悪者に見えたはず」と、リック。「でも、全然構わなかったのさ。それが、いつものデールだからね」

その話を聞いた時にピンときた。はじめから、デールは最後までいるつもりだったのだと。彼は、笑顔でサインをすることで、皆を幸せにしたのだ。

ただ、彼は少し演技をすることで、自分の存在をさらにインパクトのあるものに仕立て上げた。彼が「わざわざ残って」会ったファンは特別な気持ちになっただろう。実際、彼らのために残ったのではあるが。

その後、ファンたちはきっと友達にこう話しただろう「見ものだったよ。僕らは帰されるところだったんだけど、デールが割って入って、全員と会うまで帰らないと言ったんだよ!」

それは演技であり、きっと計算済みでもあった。でも、絶対的に効果的だったのだ。 

従業員との接し方にも
応用できる原理

同じ原理は、あなたの部下との接し方でも使える。

従業員表彰式をするとしよう。その際には、受賞者が他の人にシェアしたくなるイベントにすることがポイント。受賞者、参加者、時には、受賞者の家族のことまで考えて。シンプルな方法で、インパクトをより大きくすることが大切だなのだ。

もしくは、新しく従業員を採用する際も同じ。すぐにトレーナーに引き渡すのではなく、会社の仲間であるように感じてもらえる演出をすることだ。 どんなに小さなイベントであっても注目されるものにすれば、効率的なカタチで、会社の文化をつくり上げることができる。

ほとんどの従業員は社是については、一生、話さないかもしれない。

でも、あなたが従業員をどういう気持ちにさせたかについて、彼らは、ずっと覚えているだろうし、そのことをずっと話し続けることだろう。 

Licensed material used with permission by Inc.
ビジネスカテゴリーの真面目な記事なのですが……。え〜と、日本人が使うとちょっぴりキザなセリフが多いです。
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