自分を客観視するビジネススキル「ダブルループ」を知っていますか?

世の中には、経験から学んだことを別の事象に応用できる器用な人がいます。

事業変革パートナーの安澤武郎さんの著書『ひとつ上の思考力』では、そういう人たちのことを「ダブルループで仕事を回せる人である」と賞賛しています。

ダブルループとは、どうすれば結果が出るのかを考え、行動する仕事術のこと。

目標を達成するために必要な分だけ仕事をして結果を得るよりも、ダブルループ的思考で体験したことを進化させたほうが仕事は捗りますし、もちろん人間的にも成長します。ここでは、ダブルループを会得するために必要な「経験したことを振り返る」ことの意味について紹介したいと思います。

成功している企業ほど
社員が育たない!?

ビジネスを成功させるポイントは、「人間の資質に依存せずに成果を生み出せる(顧客に価値を届けられる)仕組みを構築する」ことです。一方で、自ら考えて能動的に行動できる社員を育成することも、競争力を高める上で重要なポイントとなります。

しかし、売れる仕組みを形成するのと人間を育てることの両立は難しく、どの企業も苦戦している課題です。入社してから、ある程度モノが売れてしまう環境があった場合、それに甘え自分を磨かなかった人は、売れなくなった時に「自分の営業力」に問題があるという視点が生まれにくいでしょう。

では、どうすれば良いのか?

思い通りいかない時、思い通りの結果が得られない時に、自分の外に原因を求めるのではなく、「自分に何ができるか?」を考える習慣を持つことです。そうすれば、何事も自分次第で変わるという思考が生まれ、営業の根本的な課題を捉えることができるようになってきます。

ちなみに

「経験していないことには価値を感じられない」
「ある程度成功すると、自分に自信がついて奢ってしまう」

というのも人間の特徴のひとつ。そのような人間の性を自覚し、客観的な意見をもらう機会を意図して持つようにすることも、ダブルループにおいては大切なのです。

「やらなきゃいけない」から
「やりたい」へ

さてここからは、目の前の仕事が面白く感じられない…と、意欲を見失いがちな人へやる気が起きるヒントを。

先日、ある企業の部門会議で、次のような議論がありました。

「何をモチベーションとして毎日会社に来ていますか?」
「この会社で何がしたいですか?」

あなたはどうでしょうか。

毎朝、出社の際に「今日はこれがしたい」とはっきりした目的を持って、出社することができていますか?節目の目標を立てる場面で「今期はこれをクリアしたい」と自分のやりたいことを活動に組み込めているでしょうか。

じつは上述の会議で、ある社員がこんな発言をしました。

「今まで自分のやりたいことなんて考えたことなかった。やらなければならないことを、やりたいようにすることが自分へのモチベーションになっている」

これは、何をするかは選べなくても、どう捉えるかを自分で決めるという思考です。

自分の裁量で仕事を進めると「やらなければいけないこと」も「やりたいこと」に変わっていきます。そうやって創意工夫を加えて仕事をしていると、仕事の質も高まり、受け手から感謝されます。自ずと価値を感じられるようになっていくでしょう。

仕事がつまらないと感じているなら「自分が主体となって創意工夫をし、やりたい仕事へと変化させる」という姿勢で取り組んでみてください。きっと仕事に対する思いが変わってくるはずです。

言葉は発信したほうではなく
どう受け止めるのかが重要

次に、解釈ひとつで事実とは違う世界が見えてしまう…という話をしましょう。

ある元請会社と下請会社の定例ミーティングに参加した時の話です。そもそも、私がその会議に参加したのは下請会社から「無理難題を押し付けられて困っている。同席してくれないか」と相談があったからです。

しかし、会議に参加してみると、聞いていた話とまったく逆の現象が起きていました。指摘されないように報告書で武装している下請会社。それに対して、ムダな仕事をしてほしくないので、目的と手段の関係を整理して「何のために作業をするのか」を理解させようとする元請会社というような構図になっていたのです。

言い訳を繰り返す下請会社に対して、元請会社は手を変え品を変え歩み寄ろうとします。しかし話が噛み合わず、解決すべき問題がはっきりしないまま会議が終了しました。

会議後に下請会社の人間から出てきたのは「今日は指摘が少なかった(うまくできた)」「先方は解決策を考えようとしていない」と批判的な言葉ばかり。相手の意図(一緒に仕事がしたい)には、まったく気づいていませんでした。

言葉は往々にして発信した方ではなく、受信した側の感受性に意味のすべてが委ねられます。人は情報や物事と出会う時、立場、状況、経験などによって受け止め方が変わります。誰かと同じ音楽を聴いても、同じ食事をとっても同じ時間を過ごしても、どれだけ楽しめるかは「自分次第」です。この「自分次第」という感覚は、日常生活のふとした瞬間に思い出して、自覚的に磨いていくしかありません。

こちらの発言が誤解されることもあるかもしれません。しかし、起きたことや他者の考えをどう解釈するかは自分でコントロールすることができるはず。

他人を批判する心が生まれたときには、自分がその相手に何をしてあげられるのかという発想に切り替えることです。そうすれば、多くの人と繋がり、仕事やプライベートで可能性を広げられるでしょう。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。