向上心。ラッキー。締め切り。「やる気」を引き出す3つのきっかけ
「モチベーションアップの方法」については、さまざまな論文、書籍、ネットなどで紹介されています。実際に試して効果を感じたことがあるという人も多いでしょう。
しかし、ひとつの方法を試したからといって、すべて解決するかというとそうでもないのが人間の難しいところ…。行動心理学の研究者である池田貴将さん著『図解 モチベーション大百科』(サンクチュアリ出版)を参考に、感情と行動のメカニズムを知ることで、人との関わりや対話を、より豊かなものにしていきましょう。
競争心より、向上心
仕事において「競争」は不可欠なもの。
競争があるからこそお互いを高め合い、成長を促進させることができます。なぜなら、仕事の出来不出来によって順位がつき、報酬の増減が決まることによって、人は「もっと認められたい」と思い、さらに仕事を頑張ろうと思うからです。
ところが競争は「勝敗の結果が出た後」が問題です。人は結果が出ると、なぜその結果が出たのかを分析します。競争に勝った場合は「自分はできる人間だから」「自分は強運の持ち主だから」とし、競争に負けた場合は「自分はできない人間だから」「自分は運がないから」と結論づけやすくなるのです。
こうして組織内で繰り返し競争させていると、次第に努力も工夫もしなくなる人が増えていきます。するとどうなるか? 活躍できる人とできない人が固定化するのです。これではただの弱い組織に成り下がってしまう一方です。女性よりも男性のほうが競争的報酬を好む傾向があるようですが、それは女性よりも男性のほうが単に自信過剰な人が多いからという、ただそれだけのことです。
競争心を高めるのではなく、「自分ならできる」と向上心を煽る方向に進んだほうが、仕事力は向上します。
「自分は運がいい」と
思って仕事をする
唐突ですが「自分はラッキーだ」と思っている人は仕事でもプライベートでもよくチャンスに気がつきますし、こういうタイプの人たちと付き合っていると、さらに多くのチャンスに恵まれやすくなります。
この法則から分かるように、目の前で起きている出来事そのものが、ラッキーかアンラッキーかを決めているわけではありません。その出来事に対して「どういう意味付けをするのか」によって、結果は変化するのです。ショックな出来事が起きたときに「ひどい目に遭った」という意味付けをすればそこまでの話ですが、「ハッピーエンドの布石だ」という意味付けをすれば、その後の展開が変わってきます。「ここに人生を好転させるヒントがある」と思ってまわりを観察すれば、意外と何かが見つかるかもしれません。
ある実験を紹介しましょう。
店の入り口にわざと5ドル札を落とし、運と偶然のチャンスの関係を調べました。事前の調査で「くじが当たる」「数々の危機一髪を逃れてきた」など「自分は運が良いと思う」と答えた人をAチーム。「よく事故に遭う」「恋愛がうまくいかない」など「自分は運が悪いと思う」と答えた人をBチームとしました。
【結果は…】
Aチーム→店の入り口にわざと落としておいた5ドル札に気づいた。
Bチーム→5ドル札に気づけなかった。
どうやら「将来に対する期待」が、目標を達成できるかどうかの鍵になるようです。「必ず何か学べることがある」と信じて行動することで、掴めるものがあるのかもしれませんね。
「締め切り」は
細かく区切る
年が明けるたびに、1年の目標を立てる人がいます。でも、達成したことがないという人がほとんどではないでしょうか?
そういう人にとって、何かに集中して取り組むのに1年という期間が長すぎるのでしょう。「1年の目標は、12月に立てたほうがいい」なんていう冗談もありますが、人は「期限が見えないと集中できない」ようにできているようです。
期日を決めるということは、「いつ集中して取り組む時間を作るか」を決めることでもあります。この特性を活かしたのが、ピリオダイゼーション(時間を区切る)という手法です。ついつい怠けがちな私の場合は、1日のピリオドを3時間ごとに設定しています。
「今日1日で何ができるのか?」ではなく「これから3時間で何ができるのか」という考え方をしています。そうすると、脳の動きがアップテンポになるのが自分でもよく分かるのです。
この方法にタイマーはいりません。時間を正確に測ることにはあまり意味がないからです。私は「これならやり切れる」というサイズで考えながら活動しています。だから無駄な体力を消耗しませんし、休憩も上手に取れるようになりました。締め切りは、自分に対する思いやりです。追われて苦しむこともありますが、締め切りがあるからこそ今日という日を充実させられるのです。
どんなに細かな仕事にも「期限」を設けるようにしましょう。