余ったケチャップを「マヨ」に変える錬金術。ヘルマンズの大胆戦略

物価高騰が続く昨今、節約志向が高まるいっぽうで、消費者の心をくすぐるオモシロい仕掛けも求められている。そんな状況下、米食品ブランド「Hellmann's(ヘルマンズ)」がユニークなキャンペーンを展開し、注目を集めている。

眠ったままのケチャップに「価値」を与えるという奇抜な発想の裏には、消費者の心を掴むための緻密な戦略があった。

眠れるケチャップに“価値”を転換

ヘルマンズが仕掛けたキャンペーン、その名も「ケチャップ通貨(Ketchup Currency)」。これ、家庭で余りがちなケチャップの小袋を、スマートフォンのカメラでスキャンすると、ケチャップの残量をAIが推定し、その価値に応じたクーポンを消費者に提供するというもの。ヘルマンのマヨネーズの割引クーポンがもらえるという、まるで錬金術のようなキャンペーンだ。

クーポンはケチャップの数に応じて変動。1~9個で1ドル、10個以上で2ドルの割引になるらしい。一見、奇抜なアイデアだが、その背景には、隠れたマヨネーズ好きの存在と、データに基づいた周到なマーケティング戦略が隠されているようだ。

1/3が「マヨラー」でも隠したい?
データが語る意外な真実

マーケティング情報プラットフォーム「Marketing Dive」によると、ヘルマンがキャンペーンに踏み切った理由は、どうやらマヨラーが関係しているらしい。なんでも、アメリカ人の3分の1がフライドポテトにマヨネーズをつけるのを好むにもかかわらず、それを人前では隠しているという調査結果が。

「ケチャップ通貨」は、そんな隠れマヨラーたちに、こっそりマヨネーズを楽しむための“言いわけ”を提供する、ユニークなアプローチとも言える。キャンペーンサイトは、まるでカジノのようなデザインで、余ったケチャップを「換金」する感覚を演出し、エンターテインメント性も意識しているあたりもおもしろい。

「ケチャップ通貨」成功の裏側

「ケチャップ通貨」キャンペーンは、単なるプロモーションにとどまらない、多角的な戦略が奏功している。

たとえば、消費者のインサイトをついた発想。冷蔵庫に眠る使いかけのケチャップに着目し、それを通貨として活用するというアイデアが消費者の興味を引いた。さらには、AIによる残量測定という、デジタル技術を応用した点も話題性を高めた要因だろう。さらには、SNSでの拡散も抜かりない。「#KetchupCurrency」というハッシュタグを活用し、SNSでの情報拡散を促進。消費者の参加を促し、キャンペーンの認知度を高めたことも成功の証だろう。

個性を尊重するマーケティングの時代

今回の「ケチャップ通過」キャンペーンは、単なる割引キャンペーンではない。消費者の隠れたニーズを掘り起こし、テクノロジーとエンターテインメントを融合させることで、顧客との新しいコミュニケーションを創出するという意味において、新しい試みと言えよう。

「ケチャップよりもマヨネーズが好き」。そんなささやかな個性を肯定し、それをキャンペーンに落とし込むヘルマンズの戦略は、現代のマーケティングのあり方を示唆しているのかもしれない。多様性を尊重し、消費者のインサイトに寄り添う。そんなマーケティングこそが時代に求められている証拠ではないだろうか。

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