家を売り払って、Airbnbで暮らす熟年カップル。初来日のついでにインタビュー
マイケルさんとデビーさんのキャンベル夫妻は「The Senior Nomads(シニアノマド)」というネーミングで、アメリカではちょっと知られた存在。仕事を引退後、ありきたりなリタイア生活ではなく、世界を旅するという冒険的なライフスタイルを選択した勇気あるカップルです。
旅のスタイルも悠々自適に高級リゾートを巡って、なんていうのとはワケが違います。自宅を売り払い、旅先ではAirbnbをフル活用。そんなノマドな二人が来日!
想像通り。とっても素敵な方々でしたよ。
「じつはこのライフスタイルは、戦略的に実現したものなんだよ」
──失礼ながらお二人は72歳と62歳。それで世界を回っているなんて!素直に尊敬します。
デビー:はじめから、こうしようと思っていたわけじゃないの。5年前に仕事を引退しようと思った時は、その後に何をするかまでは決めてなかったのよ。
マイケル:でも、彼女は「もう1つくらい冒険ができるわよ」と僕に言い続けるんだよ。とりあえず、僕らはやりたいことと行きたい国をリストアップして、2人で具体的に考えてみることにした。
そんな時にフランスに住んでいる娘がシアトルに帰ってきて、僕たちのリストを見ながら、Airbnbについて教えてくれたんだ。
デビー:「これを駆使すれば冒険できる!」って直感的に思ったわ。それから、自分で調べてみて、ますます興味が湧いてきたの。
──Airbnbっていうのが、ひとつのきっかけだったんですね。
マイケル:好奇心があったんだよ。僕たちは「Lifelong-learner(生涯学習者)」なんだ!お互いにビジネスをやっていた経験があるから、戦略的に今のライフスタイルを実現させる方法を考えることもできたしね。
デビー:実は「シニアノマド」というネーミングも、旅に出る前に自分たちでつけたものなの。もともと私はマーケティングをやっていたから、こういうことを考えるクセがあって。グラフィックデザインの知識をいかしてWEBサイトを作って、そこから自分たちの体験を発信することにしたの。
まあ、正直に言えば「誰がこんなものを見たり読んだりするんだろう?」と思っていたけど(笑)。
──結果的に、そのWEBサイトを通じて、多くの人にお二人の冒険は知られることになったわけですね。
デビー:私たちはどんどんチャレンジをするタイプのカップルなの。多少の不安があっても、ね。
マイケル:僕はかなり不安だったけどね(笑)。長い間蓄えてきたお金を使っちゃうわけだから。「本当にこれは正しいことなのかな?」「どうなっちゃうんだろう?」「そもそも知らない人を自分の部屋に泊めてくれるなんて、ホストってどんな人たちなんだろう?」そりゃもう、いろいろ考えたよ。
デビー:たしかに、お金のことは大事。今は自分の家もないから、帰るところがないのよ。考えてみればこれは大きなリスクね。
マイケル:だけど、彼女の言う通り、チャレンジは悪いことじゃない。
──自宅を売ってしまったっていうのは思いきりましたね。そこまでしなくても……。
デビー:う〜ん、あなたの言っていることはわかるわ。それを説明するなら「直感的に判断して現実的に考えた」ということかもしれない。私たちも最初の2年間は自分たちの家を貸しながら旅をしていたんだけど、うまくやればこの生活をずっと続けられると思ったの。それなら家はもう要らないんじゃないかって。
マイケル:シンプルな話さ。1日の宿代は90ドルまでとか、旅にかかるコストを管理すれば旅を続けられると考えたんだ。だから、家は売ることにしたってわけだよ。
「もしも、同じように旅に出たいって人がいたら、喜んでアドバイスをするよ!」
──旅をはじめて5年間。ありきたりですが、一番の思い出は?
デビー:日本では巨大な蛇みたいになっているビーズを回したことだわ。あとで調べたら、“百万遍念仏”というらしいわね。知らない人に手を引かれて、15分くらい何がなんだか分からない状態でその蛇みたいなのを回していたの。ふと出向いたお寺での体験だったけど、とても神秘的な時間だったわ。
マイケル:自分たちの体験もそうだけど、周囲の反応かな。娘が「僕たちのライフスタイルからは刺激をもらってる」と言ってくれたり、いろんな人が僕たちの旅から「励まされてる」ってメッセージをもらうんだ。だけど、僕たちはただ自分たちの好きなことをやっているだけ。それが、いつの間にか世界中の人をインスパイアしていたっていうのは、素直にうれしいよ。
──お子さんに生き方を褒められるっていうのは、うれしいですね。
デビー:とくに息子は、私たちの真似をして旅に出ると言い始めたわ。
──なんて返したんです?
デビー:「Oh my god! Seriously!? Are you really sure?」って。親としては、とってもリスキーだと思ったの。当時、彼は40歳で仕事をしていたし。1年間の旅が終わった後に、もっと良い仕事につけたから結果的に良かったけれど……孫まで連れて行ったんだから。
──デビーさんのやっていることのほうが、はるかに冒険的ですよ!
デビー:そうね(笑)。息子に限らず、私たちの生き方が誰かの価値観を広げることに役立っているとしたら、とてもうれしいわ。
マイケル:僕もだよ。若い世代に刺激を与えることができるなんて。日本にも、僕たちと同じような生き方をしたいって人がいるなら、喜んでアドバイスするよ!