「すべてを晒さなきゃブランドは生き残れない時代になる」iLLNESS インタビュー【後編】

洋服が売れないとされるこの時代に、新作をリリースすれば即完売となる話題のストリートブランド「BLACK BRAIN Clothing」(以下 BBC)。 BBCのディレクターであるiLLNESS氏はこう言う、「スマホというツールのなかにストリートが移動しただけで、やっていることは今も昔も同じ」──。すでに公開している【前編】に続き、ストリートブランドの未来とSNSとの関係性についてiLLNESS氏にインタビュー。

着る人のテンションまで
自在に操るSNSの活用術

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© 2018 TABI LABO

──インタビューの【前編】でiLLNESSさんはストリートを「居場所」と表現していましたが、BBCのファンはたんに洋服を買っているだけでなく、ブランドや周辺のカルチャーへの所属意識みたいなものを感じているように思います。

 

それは俺も感じるし、意識してます。

俺は自分をBBCのデザイナーではなくてディレクターだと思ってて、Tシャツの色を決めるときも、電話番の女の子に「何色がいいと思う?」って訊くぐらい、デザイナーらしいことは何ひとつしていない。それに、そのいい加減さこそがストリートブランドのあるべき姿だとも思ってます。

そんな俺ができるのは、服を買ってくれた子たちに付加価値をつけてあげたり感じさせることだと思ってて、その方法がSNSを使って常に自分のアティテュードを見せてあげること。

 

──とくに、BBCはTシャツからスタートしたブランドだという点も、ファッション以外の付加価値をつけやすかった理由のひとつかもしれませんね。

 

そうそう、Tシャツは着てる人の看板だからね。

よく、ほかのブランドの人から「ウチの服はカッコいいんで、SNSで認知されれば売れるはず。フォロワーを増やすにはどうすればいいですか?」みたいな質問をされるんだけど……お前ら、全然わかってねぇなって。コッチは買ってくれた子がウチの服を着るときのテンションの上がり幅すら、俺が言葉を使って後押ししてるから売れるんだよって。

もちろんフォロワー数はたくさんあった方がいいし、カッコいい服のほうがいいんだけど、それだけじゃ売れない。だから、ファッションしかバックボーンがないブランドはインターネット上では売れないんだよね。

最近めちゃくちゃ見かけるYouTuberが関わってるブランドとか、そういうファッション以外のバックボーンがあるブランドは強い。

これからの時代を生き残るには
「いかに自分を晒せるか」が重要

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© 2018 TABI LABO

──これから先、ファッション業界はどのように変わっていくと予測してますか?

 

これからは「有名なブランドだから買う」ってスタイルから「誰々が作ってる服だから買う」っていうふうに変わっていくと思ってる。

だから、ブランドをディレクションをしてる人は自分の考え方や生き様も全部晒していかなきゃだし、「なんかよくわかなんないけどカッコいい」って雰囲気だけ醸し出してれば売れる時代は終わったよね。

インターネット化されたことで、情報は全部出てくるから、“ファッション”っていう言葉がもっていた“魔法”が今の時代は通用しないんですよ。少し調べればいろいろなことがバレちゃうし。そうなると、俺みたいに最初から「は? BBCのパンツは高いよ? だって、俺、寝てないし。だから2万2000円で売るね」とか言っちゃったほうがいいんですよ。ヘンにボカシたり誤魔化したりすると、若い子はバカじゃないから全部バレる。

昔は中味がないのを隠してカッコよく見せてたけど、今の時代はそれをやると絶対にバレちゃうしカッコよくない。

 

──かつてのストリートブランドでは「値段が高いからカッコいい」とか「レアだからカッコいい」という付加価値の付け方がありましたが、SNSでの振る舞いや言葉で付加価値をつけていくというBBCのやり方は、ある意味では誠実だとも思います。

 

ホント? それを誠実と捉えるか「エグいやり方してんな、コイツ」って捉えるか、2パターンあると思うけど(笑) ただ、SNSをうまく使えば、後付けだろうがなんだろうが付加価値をつけやすいよね。だって、Tシャツ売ってる人が滅茶苦茶ヤンチャだったりすると、ブランドにもちょっと興味が沸くもん。

まえに片手で睡眠薬のパケを一瞬で破って食べる動画をアップしてる服屋のアカウントを見つけたことあるんだけど、そんなの見たら「どんなヤンチャな服売ってんのかな?」って気になるじゃん。

トッポい人がヤンチャな服を売ってるのがカッコいいんだから。

 

──そこまでSNSの特性を理解して使いこなせている理由は?

 

読書量が異常だから。いきなり(フランスの哲学者)ジョルジュ・バタイユの本とか押し付けてきたりするお袋に育てられたし、パクられたときも鑑別所でニーチェ全集とか読んでたし。しかもベラなんで、キッズ用にアレンジした言葉でアウトプットできる。キッズって自分を後押ししてくれたり肯定してくれるものを待ってるし、俺もそうだったから。それに、スマホが普及して思い立ったタイミングでなんでもできるようになったのが、自分に合ってたのかもね。

俺と同じことをほかのブランドが真似しようとしてもできないと思う。

 

──最近では、インディーズのミュージシャンにPVの製作資金を提供したり、周辺のカルチャーのフックアップについても考えているそうですが……。

 

単純に税金がエグいから、国に金を払うよりも使っちゃったほうがいいんで。ブランドのイメージアップとかを一切考えない、ガチのフックアップです。

今、BBCはJinmenusagiくんとかヒップな子たちが着てくれてるんで、そこらへんは逆にタッチする必要はない。野暮ったいけどおもしろいことやってる人をフックアップしたほうがいいかなって。これからRHYBOWってヒップホップミュージシャンのPVを撮るんだけど、彼は曲がカッコいいんだよね。ビースティ・ボーイズ時代の韻を踏んでる。古いねぇって感じで野暮ったいんだけど、俺はそれが好きなんで(笑)

 

──デジタルネイティブの若い世代をどう思っていますか?

 

好きか嫌いかで言うと、ガキは嫌いなんですよ。

ただ、どっちが優れているかといえば、ガキのほうが圧倒的に優れてる。人間って歳をとることで経験値は増えるけど、ガキがのめり込んだときのスポンジみたいな吸収力とかアウトプットしたときの爆発力に、大人は絶対に敵わない。

たまに若い子から「同じような商売したいから相談に乗ってください」ってDMとかくるんだけど、「大人の意見なんか聞かないで素直にやりなよ、お前らのほうが俺より優れてるぞ」って思います。当たって砕ければいいんだけど、そりゃ砕けないほうがもっといいから、みんな下調べするじゃん。

でも、調べただけで満足してちゃダメだよね。

人に質問なんかするヤツのブランドが売れるとは思わないし、俺みたいなオッサンが若いやつらのツールを使ってたまたまうまくいってるだけなんだから、真似してんじゃねぇよって言いたいっす。

BBCが世に放った
話題のグラフィック総ざらい!

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渋谷の人気タトゥーショップ「THE PARLOR」のUE氏に依頼して製作したグラフィティをプリント。UE氏のタトゥーの特徴である極太の線はTシャツになってもインパクト大。

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iLLNESS氏のスマホで撮影した日常の一コマをプリントしたシリーズ「Diary Tee」。一見すると普通のディナーテーブルの風景かと思いきや、よく見ると……。

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SNSをフル活用するBBCのアティチュードをボックスロゴ風にプリント。

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ブランドで最初に作った「Diary Tee」のグラフィック。ODで心臓が停まりかけた際に自撮りした写真をそのままプリント。「死ぬ寸前ですげぇテンパってたけど、そんななかで自分のできることをキチンとやってたし、結局金になったし、そんときの自分はあんまり嫌いじゃない(笑)」とは本人の弁。

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「Three Tides Tattoo」のGanji氏とコラボしたグラフィックの新作。ボールドの線でタトゥーマシンをイラスト化した。

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こちらも「Diary Tee」のひとつ。数年前にiLLNESS氏がお邪魔した某応接室のテーブルの画像をそのままプリントしている。

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胸元に小さくプリントが配された「Diary Tee」シリーズ。「ホントはもっとヤバい写真もたくさんあるんだけど、刺青の柄で誰が何やってるかわかっちゃうから、ボツになってるのも多いんですよね」とのこと。

「BLACK BRAIN Clothing」

HP/http://www.blackbrain.tokyo/

iLLNESS twitter/https://twitter.com/illne5s

iLLNESS Instagram/https://www.instagram.com/illne5s/?hl=ja

【前編】はこちら

Top image: © 2018 TABI LABO
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