【100円で買った中古本】『「上から目線」の扱い方』

国道沿いや駅前の古本屋チェーンの店内にひっそりとたたずむ、たたき売り同然の「100円」の書棚。そんな一角で偶然出会った一冊から、あなたの人生を変えるかもしれない「金言」をほんの少しだけおすそわけ。

今回は誰しもがきっと思い当たる厄介な人たちへの対処法を説く『「上から目線」の扱い方』をご紹介していきます。

人より優位に立って安心したい……
「1億総不安社会」を生き抜くために

いまやすっかり日常語のひとつになった「上から目線」

なにかにつけて優劣をつけたがる世間の風潮もあってか、近頃ではマウンティングなんて言葉もしばしば耳目にするようになりました。

本書はそんな厄介な代物である「上から目線」が起こるメカニズムを解説しながら、具体的な対処法をレクチャーしてくれるハウツー本。

著者である心理学者・榎本博明氏が本書を書くにあたって実施した、20代から50代のビジネスパーソン、計700人(各年代175人ずつ、男女それぞれ350人)への意識調査によれば、どの年代でも半数を超える人たちが『「上から目線」でものを言われてイラッとくることがある』と答えたそうですから、なかなか穏やかではありません。

・他人に批判されると、それが当たっていてもいなくても無性に腹が立つ

・人からバカにされたくないという思いが強い

・何かにつけて不満に思うことがある

・何をやってもうまくいかないと思うことがある

・人と自分をすぐ比較してしまう

・仕事がイヤでたまらないことがある

・人からどう思われているかがとても気になる

出典:『「上から目線」の扱い方』(榎本博明 著、株式会社アスコム)

……といった著者の挙げる「上から目線に過敏な人」の特徴に思い当たるフシが複数ある、という人は、きっと少なくないでしょう。

たしかに、よかれと思ってしたアドバイスや注意が、それを言われた人から「上から目線」と受けとられてしまうなんてのは往々にして起こり得ること。その反対に、上司や先輩からお説教をされて「なにを偉そうに!」と反発心を覚えることだって、人間だもの、一度や二度はありますよね。

そこで、簡単にキレてしまわないために、我々がすべきことを初歩の初歩から教えてくれるのがまさに本書。

「近頃の若者はようわからん」と思ってたところへ、「人が上から目線に過敏になるのは、自信のなさと承認欲求の欠乏から来る“見下され不安”によるものなんですよ」などと解説をされると、「なるほど、そうだったのか」と、ついヒザを打ってしまいたくもなるものです。

とはいえ、それに対するもっとも効果的な手段が「相手の話をしっかり聴くこと」(文中では「傾聴力」と表現)というのは、いささか当たり前にすぎるような気もします。

・相手の話を真剣に聴く

・一方的にしゃべらない

・自分のことばかり話さない

・相手に関心をもつ

・押しつけがましいことは言わない

・相手の気持ちに共感する

・話しにくいことをしつこく訊かない

・適度に話を切り上げることができる

出典:『「上から目線」の扱い方』(榎本博明 著、株式会社アスコム)

……と、対話上手な人の特徴をわざわざ列挙して、「なかでも“押しつけがましいことは言わない”がいちばん大事ですよ」などと言われると、それこそ「上から目線」で「んなことわかっとるわっ!」となってしまうのは、おそらく読み手であるこちらの心が無意識のうちに荒みきってしまっているからに違いありません。

ともあれ、肝心要(かんじんかなめ)は、何事も真っ正面から受け止めようとせずに、ときに受け流すスキルも覚えること。

「初めまして」からいきなり相手の心のトビラをこじ開けるのが仕事でもあるライターの端くれとしては、本書に書かれているようなタイプ別の対処法を実践するより、四の五の言わずに場数を踏むほうが絶対鍛えられますよ、ということだけは「上から目線」で断言したいと思います。

ちなみに、著者が本書内で紹介している社会心理学者テイラー&ブラウンの研究によれば、精神的に健康な人は「自分のことを実際以上に肯定的にとらえる幻想をもち、なんとかなるさと楽観的に構える傾向がある」とのこと。それを名づけて「ポジティブ・イリュージョン」と呼ぶそうです。

ポジティブ・イリュージョン──。

なんだか響きからしてバカっぽくて、いろいろどうでもよくなる素敵な言葉のように思うのですが、みなさんはどうですか?(笑)

『「上から目線」の扱い方』から学ぶべきは......

ポジティブ・イリュージョニストになろう!

『「上から目線」の扱い方』(榎本博明 著、株式会社アスコム)

written by chogetsu suzuki

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。