【ワゴンセールで出会った一冊】『フェイスブックをつくったザッカーバーグの仕事術』

国道沿いや駅前の古本屋チェーンの店内でひっそりとたたずむ、たたき売り同然の「100円」の書棚。そんな一角で偶然出会った一冊から、あなたの人生を変えるかもしれない「金言」をほんの少しだけおすそわけ。今回はあのSNSの創業者について書かれた『フェイスブックをつくったザッカーバーグの仕事術』をご紹介します。

ゲームは「遊ぶ」じゃなく「作る」もの
少年時代から神童と呼ばれた彼だけど......

著者の桑原晃弥氏は、トヨタやApple、Googleといった世界的企業にも豊富な取材経験をもつという経済ジャーナリスト。著名な投資家ウォーレン・バフェットや、かのスティーブ・ジョブズに関する著書も数多く、本書には彼らの言葉も多数登場してきます。

書かれているテーマは、読んで字のごとく、マーク・ザッカーバーグの仕事について。

名門・ハーバード大学のイチ学生だった彼が、学内SNSとしてスタートさせた『Facebook』を世界的企業へと育て上げるまでを、ITに疎(うと)い人にもわかりやすい言葉で、明瞭簡潔に教えてくれます。

とはいえ、わずか数年でドラスティックに変貌してしまうIT業界の出来事を、7年も前に書かれた2012年刊行の書籍で知るというのは、いささか時代遅れ感も否めませんが、まぁそこはワゴンセールで運命的に出会ったということで……。

そんな本書ではありますが、既存の枠組みや固定観念にとらわれないザッカーバーグの仕事ぶりについては、いま読んでも非常に示唆に富む普遍的な内容ばかり。

巨額の買収話と引き換えにその才能まで買い取ろうとする大人たちの企みには「僕たちにその気はない」「僕が退屈するのはまだまだ先のことだよ」とキッパリ応じ、オフィスの壁には「この旅はまだ1%が終わっただけ」と書いてしまう。

いかにも現代的で潔い彼の言動は、そろいのリクルートスーツでする無個性な就職活動につい違和感を抱いてしまうアグレッシブな学生さんあたりにはとてもよい刺激になることでしょう。

もちろん、「選ばれし成功者の話に感化されてなんになる!」とソッポを向いてしまう天邪鬼(あまのじゃく)な人もなかにはいるかもしれません。

両親ともにお医者さんで、11歳からソフトウェア開発者の家庭教師が週に1回自宅を訪れ、少年時代からゲームは「遊ぶ」より「作る」側だったと聞けば、なるほどそれは「持てる者」。彼の成功に、才能以外の要素が少なからず影響したことは想像にかたくありません。

ですが、彼を突き動かしていた源泉は、おもしろくて、便利で、世界をよりよく変えるツールを作りたい、というその一心。

今日の彼の成功は、自分が「熱くなれるもの」に正直であり続けた、その積み重ねが引き寄せた結果でもあるのです。

Facebookをめぐっては、サービスを開始した2004年からわずか1年後には、MTVなどを傘下にもつバイアコムグループから7500万ドルでの買収を提案され、翌05年にはYahoo!が10億ドル。さらにその翌年にはMicrosoftが150億ドルという破格の提示をしたといわれています。

あまりに途方もなさすぎて、ひたすらクラクラしてしまうそんな誘いを、彼自身がいともあっさり蹴ってしまえたのも、我々の多くがつい置きざりにしがちな「あの頃の情熱」を、彼がいまなお燃えたぎらせているから、なのかもしれません。

確かに、存在は霞んで見えないくらいの雲の上。彼が有言実行している「年俸1ドルでいい」なんて言葉は逆立ちしたって吐けません。

ただ、現在35歳の彼が、名だたる起業家のなかでも突出して我々と近い感覚をもっているのもまた事実。

肌身離さず持っている日記帳に「世界を変えたければまず自分が変わらなければならない」というベタとも思えるマハトマ・ガンジーの言葉を書き留めているなんてエピソードを聞けば、なんだか「俺たちと一緒じゃん」という気にも少しなるような気がします。

『フェイスブックをつくったザッカーバーグの仕事術』
から学ぶべきは……

「熱くなれることに正直になれ!」

『フェイスブックをつくったザッカーバーグの仕事術』(桑原晃弥 著、株式会社 幻冬舎)

written by chogetsu suzuki

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