【100円で買った中古本】『そうか、君は課長になったのか。』

国道沿いや駅前の古本屋チェーンの店内でひっそりとたたずむ、たたき売り同然の「100円」書棚。そんな一角で偶然出会った一冊から、あなたの人生を変えるかもしれない「金言」をほんの少しだけおすそわけ。

今回は30年以上も前から、いわゆる「ワークライフバランス」を実践してきた著者が綴る、世の課長たちに向けた虎の巻『そうか、君は課長になったのか。』をご紹介します。

世の「課長」にだけ向けられた言葉を
あえて「課長にならない人」が読んでみる

ほとんどの人が「いやいや、課長って……」とツッコミを入れたくなるトリッキーなタイトルなのに、なぜだか呼ばれたような気がして、つい手に取ってしまった本書は、まさにこれから「課長」になる人のために書かれたピンポイントな入門書

酸いも甘いも噛みわけた人生の先輩たる著者が、新入社員の頃から看てきて、このほどついに「課長」へと昇進した「石田君」なる架空の部下に向けて書いた手紙という体(テイ)で、章立ては進行します。

もちろん、書かれているのは「課長」としての心得が中心ですし、「石田君」でも「課長」でもない大多数の読者にとっては、ピンと来ない話も少なくありません。

「課長ほどやりがいがあって、おもしろい仕事はない」などと断言されたところで、働いている会社の規模感や業務の内容が作中のものと違っていたり、個人経営やフリーランスだったりすれば出てくる感想は棒読みの「へー、そんなもんかねー」ぐらいのものでしょう。

とはいえ、著者の佐々木常夫氏は、化学繊維の最大手メーカー「東レ」で要職を歴任してきた一角の人物。

6歳で父親を亡くして母子家庭から苦学して東大に入り、入社後には、自閉症の息子さんと、肝臓病とうつ病を併発する奥さんを抱えて、仕事をしながら育児・家事・看病をこなしたという、とんでもない苦労をされている方ですから、説得力という部分では折紙つき

「24時間戦えますか?」なんてCMのコピーが流行していた80~90年代に、佐々木氏はきっかり18時退社。そのうえで出世コースからも外れない、昨今流行りのワークライフバランスを実践していたと聞けば、多くの企業戦士たちのカリスマになるのもうなずけます。

「つまらないプライドのためにきちんと教えを乞わなければ、間違いなく誤った判断をする」

「ビジネスにおいて『以心伝心』を期待するなど愚の骨頂」

「相手の悪いところではなく、よいところを見る。そして、よいところを第三者に伝える。必ずその言葉は、回りまわって相手の耳に入る」

そんな著者の言葉は、「石田君」や「課長」でなくても当てはまる、人付き合いの極意といっても過言ではないでしょう。

ただ、「部下は家族同然」と言ったそばから「会社は人助けの組織ではなく、あくまで戦闘集団」だから「どうしようもない人は切って捨てるべき」などと言われてしまうと、(面識はないけど)温厚そうな著者・佐々木さんのドライ&クールな一面を見せられた気がして「えっ!?」ともなってしまうのですが……。

とにもかくにも、本書のなかでも著者自身が「多読家に仕事ができる人が少ない」「考える力を養わなければ、読書は有害ですらある」とバッサリ斬っているように、どんなにたくさんの情報をインプットしても、それが自身の血肉にならないようでは元も子もありません。

「たった一度の人生で何をしたいのか、どのような人間になりたいのか、どう生きたいのか」

そう問いかける著者に対するみなさんのアンサーが「課長」(=企業人としてそれなりの地位に就くこと)とは無縁のものなら、「俺にこんな本は必要ない!」と割り切り、もてる力と情熱をほかの何かに向けたほうが、よほど有意義なのかもしれません。

『そうか、君は課長になったのか。』から学ぶべきは……

「進むべき道の先が『課長』か否か。
あらためて自問自答する!」

『そうか、君は課長になったのか。』(佐々木常夫 著、株式会社WAVE出版)

written by chogetsu suzuki

Top image: © 2019 TABI LABO
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