アジアでは、よく眠れない──人々の不満が、国際研究で明らかに
新たな研究によると、アジアの人々は北米やヨーロッパに住む人々と比べて、睡眠の質が著しく低いという。
学術誌のプラットフォーム『ScienceDirect』に掲載されたこの研究は、シンガポール国立大学を主体とするチームが、22万人以上の被験者を対象に「Oura Ring」と呼ばれるウェアラブルデバイスを使って体温や心拍数変動を測定し、5000万件以上の睡眠データを分析。回帰分析を用いて、居住国が睡眠の質や量に与える影響を評価したものだ。
結果として、アジアの人々は他の地域に比べて睡眠時間が短く、また睡眠効率が低いことが明らかになった。
さらに、平日の睡眠時間が非常に不規則であること、週末に睡眠時間を増やす傾向が少ないことも指摘された。ヨーロッパやアメリカで一般的な、週末に睡眠時間を増やす“週末睡眠延長”の習慣が、アジアではあまり見られないという。
研究の主著者であるAdrian Willoughby氏は次のように述べている。
「ヨーロッパでは、週末はリラクゼーションと社交の時間です。一方、アジアでは週末を仕事の遅れを取り戻したり、家庭の責任を果たす時間として使うことが多いからではないでしょうか」
そのため、アジアの人々は週末に睡眠を取り戻すことが少なく、平日の睡眠不足を習慣的に補いにくいと結論づけた。
この問題は深刻であり、効率の悪い睡眠が生活スタイルや仕事によるストレスからくると報告されている。
また、研究にあたったMichael Chee教授は「研究によって、個々の睡眠ニーズや環境要因、さらには社会文化的な圧力まで考慮した、カスタマイズされた睡眠のアドバイスを提供できるようになります」とコメント。
アジアに住む人々は仕事や生活のスタイルによって、質の良い睡眠が取れていない可能性が高い。この問題は個人的なものではなく、社会全体で考えなければならない健康課題と言えるだろう。
Chee教授の言う通り、睡眠の質を向上させるためには、居住環境や文化を踏まえた、働き方の改革やライフスタイルの見直しが必要なようだ。
研究のサマリーでは曖昧になっていますが、日本にお住まいの皆さんであれば「仕事や生活のスタイルによって睡眠の質が下がる」というのは、ある程度ピンと来るのではないでしょうか。
アジア全体の問題ですから日本固有のそれとは違うかもしれませんが、いずれにしても“カスタマイズされたアドバイス”というのは注目です。盲目的に西洋の生活を模倣するのは不適切でしょうから、地域に応じた解決策の提案を期待しましょう。
先日紹介した「地中海ライフスタイルの導入」など、QOL向上の可能性は少しずつ大きくなっているようです。