イタリアに増殖中の「1ユーロ物件」海辺の町でいま、何が起きている?
長靴にたとえられるイタリアのちょうどヒールにあたる南部の港町ターラント。紀元前8世紀にギリシャ人の植民地としてできた町は、古代ギリシャの遺跡と旧市街が折り重なり、目の前のイオニア海はイルカの生息地としても知られる、知る人ぞ知る観光地だ。
そのターラントでいま、耳を疑うような“募集”が行われている。募集条件がこちら。
「1年以内にリノベーションを実行してくれたら、1ユーロでアパートのオーナーに!」
日本円にすれば約130円。どういうコト……? なかなか頭の整理がつかないが、じつはここ数年、イタリアではこうした「1ユーロ物件」が急増中。背景にあるのは、イタリアが抱える超高齢化社会と、地方都市の過疎化だ。
新型コロナウイルス感染拡大でも話題となったが、イタリアは65歳以上の人口が、全人口の25%に迫る超高齢化という問題を抱えている。大都市を目指して若者が町を出れば、必然的に地方は過疎化。そして、あるじを失い老朽化した家だけが残るという構図。
こうした問題への打開策として、各州政府が打ち出した地域おこしこそが「1ユーロ物件」というわけ。
すでにターラントでは第1弾が実施され、大好評。今回2度目の募集となったようだが、条件面にアップデートが。
1年以内のリフォームが条件ではあるものの、必要に応じて期間延長が認められているほか、住民として居住せずとも、セカンドハウスとしての利用やAirbnbようにバケーションレンタルでの活用もできるという。
さて、これを対岸の火事とも言っていられないのが、イタリアの上を行く世界No.1の超高齢化社会・日本。コロナがもたらしたニューノーマルな働き方が、都市と地方の垣根をなくしつつあるのも事実。それでもなお山積する、過疎化、空き家問題。そう遠くない未来に、“1円物件”なんてものが現実になる日も?