なぜフランスの若者たちは、いまパリよりも「ボルドーに注目」しているのか?

人口約24万人(都市部全体だと約114万人)、フランス第5の地方都市ボルドー。この町を歩いていて感じるのは、若い人が多くて活気があるということ。

それもそのはず。ボルドーは2015年の「Best European Destinationランキング」で第1位を獲得。ニューヨークタイムズが選んだ「2016に行くべき観光地」で世界2位。そしてフランスの国内調査では「フランス人の住みたい街ナンバー1」、いまとてもアツイ街なのだ。

実際に移住してきた人々に理由を聞いてみると、実に多くの人が「パリよりも質の高い暮らしができるから 」と口を揃える。彼らの求めるニーズに、この街がどう応えてくれるというのだろう?

人々の声に耳を傾けてみれば、こんな魅力が浮かんできた。

01.
豊かな自然が目と鼻の先

82caa675839a26b6186e8aa5fa94da4ddc754ec7

ボルドーに移住した多くの人がまず挙げるのが海や山への近さだ。ボルドー市から海まで車で2時間弱。 週末にちょっと街の外に出れば、海にも山にも、砂丘にも辿り着くことができる。 

02.
ゆえに、
海と山の幸の宝庫

77545881b17d95bf800e9d0c95d2cf7e5f23ecf53cdd8bd1faf068c3e25f5854384fd0a3035cdb25

自然に近い立地は、新鮮な海の幸や山の幸に恵まれている証拠。マルシェには、近くの山でのびのびと育つ牛やヤギから作られる美味しいチーズや肉、新鮮な野菜が並び、牡蠣やムール貝も手頃な値段で手に入れることができる。

そしてブドウ畑から届けられるワイン。世界的なワインの産地ということもあり、マリアージュされる食の文化も豊かだ。実は人口辺りのレストラン数もフランスで最も多い地域なのだとか!フランスの伝統菓子カヌレもここが地元だったり。

03.
街並み(景観)への美意識が
市民レベルに浸透している

F9194db21cc927c9857f5b872d7ab72f4396103f546a86900394cbb594b59bf6dabff08519e10d28

自然への近さと合わせて人々が挙げるのが「街がきれい」だということ。 バーやレストランのひしめく小さな広場がいくつもあり、クリーム色をした古い建物たちは太陽にじつに良く映える。

石造りの伝統的なヨーロッパの町並みに時々モダンな建物が混ざっているのも楽しい。路面電車で緑生い茂る街路樹の中を走るのも気持ちがいい。ちなみにヨーロッパNo1の長さを誇る歩行者天国があるのもボルドー。

でも、ボルドー市はずっときれいだったわけではない。ワイン交易、そして航空産業をはじめ工場を多く保有したこの地域は重工業の撤退に伴って衰退、90年代初期にもなると古い建物は通る車の排気ガスで黒ずみ、街全体の印象も暗かったという。

ボルドーが変わり始めたのは1995年からだ。ボルドー市長に就任したアランジュペ氏が、住宅のオーナーに対し定期的な外壁の清掃を義務づけ中心街への車の立ち入りを制限。路面電車を復活させて、川沿いを美しく整備するなど徹底的な美化政策に取り組んだのだ。

04.
移動手段は「シェア」で十分

A728e71cc9f0ec71296416c3d6e44c4e8bc54707301124fe9fe0eca6c2c261e399fca7198faf1934

“自転車フレンドリーな街”としても、ヨーロッパでトップ10入りだ。市は住民たちがシェアできるようレンタルスタンドに自転車を無料で配備している。それもデザイナーがわざわざ設計したカッコイイやつだ。

市の動きに追従して自転車を時間貸ししてくれるサービスを提供する会社もあり、最近では電気自動車のレンタルも定着している。どちらも乗る場所から借りて、降りる場所の近くに返せるのでとても便利だ。

元から自動車を所有していた人たちは格安で駐車場を借りることができ、必要な時のみ取り出して使っているそう。

05.
教育、子育て環境も充実

川沿い一帯には緑地が広がり、街のトレードマークである商工会議所と川の間に位置するブルス広場には、薄く水を張った「水鏡」がある。この広場では子どもも大人も水遊びに夢中だ。夜になるとライトアップされた川沿いの建物やトラムが水面に映り込んでロマンチックな光景に。これも市が取り組んだ都市計画のひとつだ。

もうひとつボルドー市が投資しているのが教育だ。大学の研究所などに多くの予算をつけ、学生を全国から誘致した。だから学生のときにこの街に住んで、そのまま残っている人たちは意外に多い。公園が多いことが子どもを育てやすい環境にも繋がり、なにより自分たちも心地いいのかもしれない。

06.
新しいことが始めやすく
起業家が集まってくる

新しいブティックやレストランの経営に挑戦する人、ワインやビール造りに挑む人、イベント企画やデザイン会社を立ち上げる人など、街で出会う起業家たちに聞くと、彼らは「ボルドーは新しいことを始めやすい」と異口同音の答えが返ってくる。

 元からあったワイン産業が発展したところに加えて、美しくなった街並みは毎年580万人もの観光客を呼び寄せているから、人口が少なくても顧客は多い。 

それにかつての工場をリノベーションするなど、コワーキングスペースの動きも盛んで、ボルドーで起業する人たちを支援する会社も入居している。

かつての重工業のような大きな産業があるわけではないけれど、だからこそ自分で仕事を作ろうとする起業家スピリットに溢れる人たちが集まり、それを支える環境ができてくるのは、例えばドイツのベルリンなんかとも状況が似ているかもしれない。

07.
じつは、パリからも近い。
でも物価は安くて、
暮らしはゆっくり

4067877bdd7fb025cefbe798eb9b9a1bf609699d

首都のパリからは電車で3時間ちょっと。2017年からは特急専用線路ができるので、わずか2時間の近さになる。それだけ首都が身近にありながら、生活は大都会パリと比較しても、よっぽどゆっくりしているという。

夕方になれば、雄大なガロンヌ川の流れを見ながらのんびりピクニックしている老若男女をよく見かける。スペインに近いこともあって、シエスタ(お昼休み)を設けているお店も多い。

当然パリよりも物価は安く、おおよそパリの7割くらいだ。学生が多いので安く食事をできるお店も沢山ある。これは旅行者にとってもメリットだろう。

近年、急に人気が高まっているので、不動産価格は上がっているけれど、ボルドー人が「ゆったり」という贅沢を手放すことはなさそうだ。

フランス人にとってのボルドーの魅力を聞いていると、必ずしも便利な大都市に住むことが「人生の幸せ」とは考えていないのが良く分かる。

自然や緑に囲まれて、美味しいものが沢山あって、あくせくしていなけれど、活気のある街で暮らす。日本で地方都市への移住を考えている人たちにも、彼らの豊かな暮らしの基準は参考になるかもしれない。 

Photo by Akiko Terai
取材協力:ボルドーワイン協会
フランスの4都市に、大量発生した隠れミッキー。
世界へ飛び出して仕事をしてみたい、と考えている人がいるでしょう。しかし、海外在住の人たちがどのように生活しているか…現実は情報も少なく、イメージが湧きにく...
ある匿名アーティストたちによる、フランス・ボルドーの歴史的建造物を、ビニール袋で埋め尽くすというインスタレーション。リサイクルだけでは、ゴミ問題を解決でき...
ボルドーワインと聞けば、多くの人が重厚な赤ワインを思い浮かべるだろう。しっかりとしたお肉料理にどっしりと重いフルボディの赤。しかし太陽がさんさんと降り注ぐ...
クールなパッケージに甘い香り。ギャップが魅力の「GROWN ALCHEMIST(グロウン アルケミスト)」のハンドクリームの紹介です。
ハイドパークやヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、サイエンス・ミュージアムからも近い好立地。1泊11万円ほどで、ベッドルームはふたつあり、最大6名まで...
フランスを旅行中、イイ香りに誘われて「そうだ本場のバゲットを食べてみよう」と店内へ、なんてこともあるのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。そ...
フランスを旅行中、イイ香りに誘われて「そうだ本場のバゲットを食べてみよう」と店内へ、なんてこともあるのではないでしょうか。でも、ちょっと待ってください。そ...
仏ボルドーに今年6月オープンした 「La Cite du Vin (ワイン文明博物館)」。ボルドーワインで有名なこの街の新たなシンボルとして、構想から8年...
パリから北西フランス、または南フランスを巡る旅に出発し、その模様を動画で伝える。現在、そんなフランス旅行の「公式レポーター」を募集するキャンペーンが展開さ...
カナダのケベック・シティにある「Hotel de Glace」は、毎年テーマが変わるアイスホテル。前回の冬、2018年のテーマはサーカスでした。2019年...
フランス近代絵画に造詣が深い高橋芳郎さんの著書『「値段」で読み解く魅惑のフランス近代絵画』(幻冬舎)では、19世紀後半のフランスにおける近代絵画の「隆盛の...
世界で若者が暮らしやすい都市のランキングが発表された。トロントにある市場調査会社によって制作されたものだが、そのランキングとは如何に!?第1位は、フランス...
このマラソン大会、毎年ボルドーで行われているもので、ランナーはぶどう畑を通る42.195キロのコースを走ります。20ヵ所以上ある給水地点では、さまざまな醸...
6月あたりからフランスで精肉店が襲撃される事件が徐々に増えています。
Billionaire's Row(億万長者通り)に、2020年完成を見据えて建設中の「Central Park Tower」。10月中旬、不動産開発企業...
「環境問題に対する貢献度」や「動物実験をしているかどうか」、「企業に対するボイコットが起きているかどうか」という情報を知れます。
リヨンの川やサントロペの海を駆け抜けた水上タクシー「SeaBubbles」。近く、パリにも導入予定らしい。フランスだけでなく、スイスやUAEも興味を示して...
違法でフランスに滞在していたMamadou Gassamaさん。非難されるべきだった存在の彼は今年、ある出来事がキッカケでなんと国籍を取得するに至りました。
華の都パリ──なんて呼ばれるように、キラキラしていて華やかな面もたくさんあります。でも、それは外側から見るパリの一面にすぎないんじゃないでしょか。パリに住...
先日、パリの街角に赤色の簡易トイレ「Uritrottoir」が設置されました。トイレの排泄物がたまったら、土を混ぜてそのま養土となります。
2024年のオリンピック開催地にパリが選ばれたことを機に、フランスの人権団体はアスリートと難民を比較した動画を作成しました。どれも30秒ほどですが、短い時...
1803年に創業したフランス・パリの総合美容薬局、『OFFICINE UNIVERSELLE BULY』。夏にオープンしたパリの2号店では、おにぎりを食べ...
フランス革命期の1796年に起きた「ヴァンデの反乱」で焼かれてしまったお城「Ebaupinay Castle」の共同オーナー権を売ることで、その復元・保存...