飾らない「普段着のパリ」。
華の都なんて呼ばれるように、キラキラしている面もたくさんあります。でも、それは外側から見る一面にすぎないんじゃないでしょうか。
パリに住んでいる人たちの日常はどうなのでしょう。本当の姿を知るには、そこに住む人に話を聞くのが一番。ストリートカメラマンVincent Pfliegerが伝えたいパリは、色鮮やかでリアルでした。
マイ・ホームタウン・パリ
僕は、パリで生まれ25歳までパリで暮らしました。父の部屋で見つけた古いフィルムカメラを持ってパリのストリート写真を撮ったものを紹介します。このカメラで父は、僕が初めて歩いた時の写真も撮ってるんですよ。
普段着のパリを伝えたい
まずはパリの地下鉄をモノクロで撮り始めました。地下鉄の写真はパリの輝かしいイメージとは程遠いものになっています。それから徐々にフィルムが醸し出すアナログの色合いに惹かれていって、ストリートの写真を何時間も撮りました。
“ありのままのパリ”を伝えるため、とにかく注意をひかれたものを撮りまくりました。そして、パリジャンたちのストーリーを繋ぎながら、このポートレートが完成しました。
上の写真はBolekという路上で本を売る店主。よくパリ10区で見かけますね。彼は熱心に自分の人生について語ってくれました。その大半はちょっとロマンチック過ぎたけれど、ね。
2年前僕がNYCに旅立つ時には、彼はタランティーノ監督が伝記映画を作りたがっていることを教えてくれたんです。なんで、そんなことまで知っていたんだろう…。
彼らは毎日同じ席に座っているんですよ。タバコを燻らせながら、コーヒーを飲む。これが僕が見せたかったパリそのもの。
パリには、他の大都市と同じように様々な人がいます。恋人たち、世捨て人、パリジャン・ガール、観光客、ホームレスの人……すべての人たちが、パリをパリたらしめています。
誰もがパリに華やかなイメージを持っています。だからこそ、このシリーズではそのイメージに合う写真は見せないよう意識しました。
誰でも、エッフェル塔とか歴史的建造物のことは知っている。セーヌ川をロマンチックに散歩できることも有名。こういったイメージのベースは、ウディ・アレンによるものだと思います。そんなパリももちろん実在するんだけど、リアリティには少し欠けているように思えて。
パリというのは、実は文化のサラダボールで、すごく芸術的で、もっともっと若くて野心に燃えている街。ベルリンやブルックリンに似たところもあるのだけれど、どちらかというと、パリにはボヘミアンな要素が多いんですよ。
でも…パリには
もう住まないつもり
僕はパリを愛しているし、パリは僕のアイデンティティの一部であり続けると思います。中心地からの郊外への広い並木道や、僕が育った住宅地とかね。友達や家族に会うため、仕事のプロジェクトのために、もう少し頻繁にパリに帰ってこれたらと思っていますが、住むつもりはもうありません。パリには十分暮らしたからね。