キャラとプレイヤーが共鳴するとき、ゲームの「プライド」は本物になる
物語のおもしろさとは、「いかにキャラクターに感情移入できるか」。映画や小説などでは自明だが、それはゲームにとっても同じ。
特にRPGは、ロールプレイングの名の通り、“ロール”を”プレイ”するのが本質。ならば、プレイアブルキャラクターに感情移入できる方がおもしろいのは当然だ。
今回紹介するゲームソフト『オーバーウォッチ2(OW2)』は、eスポーツ時代の最先端RPG。
近未来を舞台に5対5のチームを組んで敵と戦うPvPメインのFPSで、一見するとシンプルな対人系シューティングゲームだが、このソフトが目指すのはその一歩先「戦う価値のある未来的な世界を築く」こと。
戦う価値のある未来的な世界とは何か?
公式のリリース文には「人々がヒーローとつながり、本作の世界の中に自分自身の存在を見つけてこそ、このゲームはその希望に満ちた世界にふさわしい」とある。
というのも、OW2最大の特徴となっているのは、「ヒーロー」と呼ばれるキャラクターを選択し、彼らを操作してロールを遂行するというシステム。
ヒーローはそれぞれが専用の武器や能力を持っているだけでなく、キャラクター性を裏付けるストーリーが展開されており、これがキャラとゲームのユニークさを際立たせているのだ。
例えば、もっとも人気とされるヒーロー「アナ」は、エジプト出身のスナイパー。かつて軍人として活躍していたが、ある戦いで致命傷を負い、以降は祖国と仲間を守るためにサポーター(≒ヒーラー)として戦場に赴くようになる。彼女の装備はこのエピソードが反映されたもので、敵にはダメージ、味方には回復を与えるものとなっている……といった感じ。
現時点で30人を超えるキャラクターがそれぞれの物語や個性を有するため、OW2における、ゲーム世界の中に自分自身の存在を見つけるが意味するところは、察しがつくことだろう。
だからこそ、このゲームがプライドのイベントを開催することには大きな意味がある。
人間の多様性に基づいてデザインされたヒーローの中には、LGBTQ+に属する設定を持つキャラクターも多数存在している。
以下の画像より、レズビアンのトレーサー(中央左)とファラ(上)、ゲイのソルジャー76(左)、バイセクシャルのバティスト(中央右)、パンセクシャルのライフウィーバー(右)だ。
6月2日より開催中のゲーム内のプライド月間では、多様なアイデンティティを表現するプレイヤー用のアイコンやネームカードのコレクションが配布される。
ゲーム内のキャラクターと性的嗜好を記したカードによって、プレイヤーはアイデンティティを誇示し、ヒーローとのつながり・感情移入を深めることができるのだ。
もちろんプレイするヒーローの選択は自由だが、自身のアイデンティティと重なるキャラクターで参戦すれば、より没入感の高い“ロールプレイ”になるはず。
さらに、プライド月間のきっかけとなった「ストーンウォールの反乱(1969年にニューヨークで起こった事件)」に敬意を表し、6月中はプライドパレード直後を舞台とした新マップ「MIDTOWN」が追加。
街にはプライドを象徴する虹色のオブジェクトが散りばめられ、兵舎にはトレーサーと彼女のパートナーを写した写真が設置されている。
これに続き、それぞれのアイデンティティにフォーカスした新たなショートストーリーも近日公開予定(海外版は既に公開)とのこと。
ただし、プライド月間の開催はOW2にとって「プライドのはじまり」に過ぎないという。リリースでは、今後シーズンやストーリーが更新されていくなかで、より深いストーリーが展開され、多くのことが共有されると明かされている。
単なるゲーム内イベントを超越した、プレイヤーとキャラクターの繋がりを深める有意義なイベント。
流行りかけたメタバースや躍進中のeスポーツ等、デジタル空間の可能性はまだまだ広いが、ゲームとプレイヤーの心を繋げるこの取り組みは、ひとつのマイルストーンと言えるのではないだろうか。
OW2が掲げる「戦う価値のある未来的な世界」の実現に期待したい。