進行する都市化。農村部はますます食料不安・栄養不良に……?【ユニセフ調査報告】
「ユニセフ(国連児童基金)」をはじめ国連の5つの専門機関が、7月中旬に報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状」を共同発表した。
ここでは、新たなエビデンスとして紹介されていた「食料不安・栄養不良に関する都市部と農村部の特異性」に焦点を当ててご紹介したい。
まず、都市部と農村部の空間的格差は依然として存在し、食料不安・栄養不良に陥るのは後者に住む人々の方が多いようだ。
同書が11ヵ国を対象におこなった調査によれば、お金やその他のリソース不足により、食料の質と量を減らさざるを得ない状態を指す「食料不安」が中度または重度のレベルにあるのは農村部に住む成人の33%、一方、都市部では26%。
子どもの健康状態ついても同じような傾向が見られ、慢性的な栄養不良に陥り年齢相応の身長まで成長できていない状態を指す「発達阻害」の割合は都市部が22.4%で農村部が35.8%。さらに、栄養不良で差し迫った死のリスクに直面している状態を指す「消耗症」は都市部が7.7%で農村部が10.5%。
しかし、正常体重と肥満の中間を指す「過体重」となると、都市部が5.4%で農村部は3.5%であった。
この報告書について、ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のコメントを寄せている。
「栄養不良は、子どもたちの生存、成長、発達に対する大きな脅威です。栄養危機の規模は、栄養価の高い手ごろな価格の食事と必須栄養サービスへのアクセスを優先させること、栄養の乏しい超加工食品から子どもと若者を守ること、子ども向けの栄養強化食品や栄養治療食を含む食品と栄養のサプライチェーンを強化することなど、子どもに焦点を当てたより強力な対応を求めているのです」
同報告書の主題は、2030年にも6億人近くが飢餓に直面していると見込まれると警鐘を鳴らすことであった。
度重なる天災やパンデミック、ウクライナ戦争をはじめとする武力衝突……にくわえ、メガトレンドとなりつつある都市化もまた、空間的格差をさらに拡大し農村部における食料不安・栄養不良のリスクを高める──ひいては「飢餓をゼロにする」というSDGsの目標達成は困難にする要因のひとつと理解しておく必要があるだろう。
『日本ユニセフ協会』