先進国を走る「バンブーバイク」が、ガーナの暮らしを変えていく
古今東西、竹を有効活用した製品は数多くあります。しなやかで丈夫な素材の特性を活かした自転車フレームもそのひとつ。アフリカ各国でつくられ、海外へと輸出されるバンブーバイクですが、ここに取り上げるのはその恩恵の部分。
途上国から先進国へと竹製のフレームが普及することで、さまざまなメリットを生産地の地域コミュニティにもたらしている例を紹介します。
竹製フレームの自転車が
先進国で走ることの意味
ガーナ中央に位置する小さな村ヨンソに拠点をおく自転車部品メーカーの「Booomers」。この地域の教育システムの改善を目指す「The Yonso Project」の一環として、2009年にスタートした事業でした。
こう聞くと、ODA(政府開発援助)や先進国からのボランティアで成り立っていると、つい想像してしまうのですが、このプロジェクトはヨンソに生まれ、都会で生活しながら大学を卒業し地元へとUターンしてきた、1人の青年のアイデアから始まったそう。
輸出で収益を得ること以外にも、村の若者たちにもたらすメリットは、決して小さくないことがわかります。
01.
収益の一部で
子どもたちの教育をサポート
Booomersの情報によると、ガーナ国内には経済的な理由から学校に通えない子どもたちが約50万人ほどいるそうです。授業料の支払いだけでなく、教科書や制服にかけるお金も苦しい、それが現実なのでしょう。
そこで、彼らはヨーロッパ、北米、オーストラリアに向けて、輸出したフレームの収益をガーナの教育設備へ投資したり、女性の社会進出を支援する活動に寄付してきました。
このほか、通学距離が遠く学校に通うことが難しい子どもには、自転車を提供するなどしてサポート。これに賛同したUNICEFも、彼らのフレームを買い取ることで支援を続けているのだとか。
02.
働き口のない若者たちに
雇用のチャンスを与える
発展途上国における経済成長率だけを見れば、ガーナは確かに高水準ですが、一方で国内の貧富格差が顕著になるなどの問題も抱えています。いわゆるスラム街に暮らす人々は、満足に働き口を見つけることも難しい現実が目の前に。
こうした状況を変えていきたい。Booomersはスラムの若者たちへの雇用を生み出すことにも積極的。現在、訓練を受けた約50名の若者たちが、フレーム製作に励んでいます。
これだけではありません。竹の栽培から伐採にいたるまで、就職先に苦しんでいた多くの若者たちが、竹製フレームを通して、働く機会を手にできているとのこと。
03.
増えすぎた竹の有効活用にも
人と情報の交流が活発化し、現在では自然の森の生態系に見倣って、樹木の間で農作物や家畜を育てる「アグロフォレストリー」が、ガーナ国内に広く普及しました。現在、ヨンソだけでも200人以上の農場経営者がこれを実践しているそうです。
そこでよく植えられているのが竹。ところが、一部の農園では成長の早さが災いして、逆に増えすぎてしまっているとの声もあるようです。
Booomersが目をつけたのは、こうした余剰分の竹。使用目的のないまま伐採された素材を有効活用するためのアイデアでもあったのです。
地域へと還元される
循環型システムに共感
上の写真は、ユーザーのドイツ人カップルが竹製フレームの自転車で、ドイツから中国まで走破したときのもの。こうした各国ユーザーたちからの生の声が、改良に活かされ、ひいてはヨンソの若者たちに還元されています。
途上国から先進国へ、そして最後は地域コミュニティへ。
地域を支えるための事業がワークすることで、コミュニティ全体が潤う、こうした循環型システムに、異国の消費者たちも心が動かされているのかもしれませんね。