建築先進国の「水に浮くオフィス」
オランダ第2の都市、ロッテルダム。
近代的な建築が立ち並ぶこの街は、ヨーロッパでは“海の玄関口”とも呼ばれるほどの港湾都市で、その規模はニューヨークを抑えて欧米ナンバーワンの貿易量を誇っているほど。ただし、水の恩恵で栄える一方で、そこには別の側面もある。
今回紹介するのは、そんなロッテルダムに新たに誕生した世界最大の水に浮くオフィス、その名も「Floating Office Rotterdam」。
オフィスのテーマは、「A Vessel for Change」、つまり変化へと運ぶ方舟。
じつは、土地のおよそ9割が海面下にあるロッテルダムでは、気候変動に伴う海面上昇が死活問題。迫り来る海面上昇に対応するために、オランダでは80年代から水に浮く家が建設されてきたのだ。
レインハヴェン港に建てられたこのオフィスは、潮の満ち引きに合わせて上下するように設計されており、港が浸水するほどの増水でも無傷でいられるそう。
さらに、本島の電力に頼らないオフグリッド構造で、天井に備え付けられた840㎡にも及ぶソーラーパネルによってビル全体の電力を供給・貯蓄できるシステムも搭載。浸水が起こってしまっても独立して暮らせる、まさに“方舟”のようなビルというわけだ。
建設した地元の建築スタジオ「Powerhouse Company」によると、同オフィスはコンクリートの土台と木造のビル部分に分かれていて、15個のブロックを「レゴのように」組みあわて造られたそう。
この方法は容易に建設できて再現性が高い上、それぞれのパーツはすぐに解体・再利用ができるから非常にサステイナブル。もちろん素材もカーボンニュートラルで、地球にも優しい。
あらゆる点で革新的なこの「Floating Office」は、まさに“変化への方舟”。簡単に他の場所にも建設できるということで、今後の普及と発展にも期待できそうだ。
この方舟が、サステイナブルな未来へと運んでくれることを願いたい。