あぁ無常……人間の平均寿命、「限界値に」達した可能性
医療技術の進歩によって、かつてないほどに人間の寿命は延び、待望の「人生100年時代」が到来しようとしている。しかし、最新の研究はそんな希望的観測に待ったをかける。
私たちは、すでに寿命の限界に達しつつあるかもしれない、と──。
医学がもたらした
寿命の“伸び悩み”
20世紀における医療技術と公衆衛生の進歩は目覚ましく、先進国での平均寿命は約30年も延びた。しかし近年、その伸びは鈍化しつつあるそうだ。
学術誌「Nature Aging」に掲載された研究によると、1990年以降の平均寿命の伸びは、わずか6〜12年。研究者らは、生物学的老化のプロセスが著しく遅くならない限り、今世紀中に人間の寿命を大幅に延ばすことは実現不可能であると結論付けた。
同研究の共著者であるイリノイ大学シカゴ校のS. Jay Olshansky教授は「人間の自然な平均寿命は30〜60歳」と述べている。つまり現代人の多く、特に60歳を超えた人々は医療の力によって作られた“人工寿命”を生きていると解釈できるというのだ。Olshansky教授は、現代医療を「老化という根本問題に対する一時的な解決策」と表現しており、本当に注目すべきは寿命ではなく「健康寿命」であると主張。
ただ生きるのではなく、心身ともに健康で自立した生活を送れる期間を指す、健康寿命。厚生労働省の「令和元年版高齢社会白書」によると、日本の健康寿命は世界的な平均寿命より男性で約9年、女性で約12年も短い。つまり、仮に平均寿命まで生きたとしても、10年近くは病気や介護が必要な状態になる可能性があるということ。
人生100年時代の実現が困難であると判断された今、ただ長生きすることではなく、健康寿命をいかに伸ばせるかに注目が集まっている。
寿命は「量」よりも「質」
では、健康寿命を延ばすためにはどのような点に注意するべきなのか。
食事や運動、睡眠など基本的な生活習慣を整えることはもちろん重要。しかし、現代社会においてはストレスマネジメントや人間関係の構築など、心の健康にも気を配る必要がある。
“人工寿命”がもたらした現代社会。私たちは与えられた時間をどのように使い、どんな人生を創造していくのか。その答えは、一人ひとりの意識と行動に懸かっていると言えよう。
👀 GenZ's Eye 👀
まさか自然な人間の寿命が30〜60歳だったとは。ということは、それ以降の数十年は、医療技術によって与えられたもの。そう考えると、「人生100年時代」と言われるいま、自分の生きたいように幸福に生きることだけが、現代に暮らす我々に許された特権なのかもしれない。