社会への疑問を“ゲーム”を通じて訴求する「現代アート展」開催
「歴史を通じて、匿名であり続けたのは女性だった」
歴史上の偉人における男性率が圧倒的に高いことを指した、イギリスの名作家ヴァージニア・ウルフの言葉。男女差だけではない。社会のなかには、押し付けられた役割に縛られ埋もれがちな人々が多くいる。
スクリプト(台本)に従い、ただただ「主人公」の物語を補完するだけの脇役──こうした人々は本当に“与えられた役割”に甘んじるしかないのか。そんな疑問に一石を投じる個展「WRONG HERO」が、今週末10月19日(土)〜27(日)までの9日間にわたって開催される。
姫になりたくない女性主人公が
社会の固定観念と戦う
同個展の主催者である現代アーティストの藤嶋咲子は、ゲームとアートの領域で現代社会への疑問を投げかける。
ゲームの主人公は、「姫になることを捨て、勇者になることを選択をした」という設定の女性。彼女が「女の子なのに……」という固定観念からくる言葉と戦いながら成長し、<女性は救われるのを待つ姫><男性は強くなければならない勇者>という役割を押し付けられる必要はない、と自ら新しいクエストを作る。そんなストーリーだ。
主人公の戦いぶりに影響された各キャラクターが、「勇者」や「脇役」といった決められた役割から解放されることで、埋もれていたはずの意見や意志が浮かび上がる──。この個展は、鑑賞者が自身に押し付けられた役割と対峙する場となる。
なぜ今回、ゲームでそれを再現したかというと、娯楽的なイメージが多いゲームがメディアアートとしての大きな特徴を持っているからだとか。言うまでもなく「WRONG HERO」の画期的な点は、単に問題提起を行うだけでなく、ゲームというインタラクティブな体験を通して、プレイヤーに自分ごととして社会の無意識の偏見を体感させる点にある。
プレイヤーが自らアートに参加することで、他者が本来の自分ではない“仮面”をかぶっている経験を、個人的かつ没入的に提供。この特性は、社会問題に新たな視点を提示することにつながる。
現代アートはその場で体感してこそ、さまざまな気づきがあるもの。気になる方はぜひ足を運んでみてはいかがだろう。
【「WRONG HERO」】
【会期】10月19日(土)〜10月27日(日)
【営業時間】12:00〜19:00
【休館日】10月21日(月)
【会場】9s Gallery by TRiCERA(東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F)