ハーバード大、女性の「若返り」に役立つ飲み物を明かす

人生100年時代。ただ長生きするだけでなく、心身ともに健やかに、自分らしく輝き続けたい――。

「ウェルエイジング」への願いは、多くの人が抱くもの。日々の小さな習慣が、未来の自分を大きく左右するとしたら? 私たちの日常に溶け込む一杯のコーヒーに、そのヒントが隠されているのかもしれない。

ハーバード大が発見
コーヒーと「健康的老化」の関連性

朝の目覚め、仕事の合間、午後のくつろぎ。この身近な存在が、特に女性の健やかな年の重ね方に貢献する可能性を、ハーバード大学の研究が示唆している。

同大学の研究者たちが、中年女性のコーヒー習慣と「健康的な老化」の間に、驚くべき関連性があることを見出した。この研究は、米国の女性看護師を対象とした大規模コホート研究『Nurses' Health Study II』の長年にわたるデータを活用。4万7513人もの女性の30年間の食事や健康情報を詳細に分析した結果で、信頼性も高そうだ。

彼らが注目したのは、中年期(45~60歳)のカフェイン入りコーヒーの摂取。そして、それが70歳を超えてからの健康状態にどう影響するか、という点。ここでいう「健康的な老化」とは、単に長命であることだけを指すのではない。11の主要な慢性疾患を抱えておらず、身体機能も良好、精神的にも満たされ、さらに認知機能の低下や記憶障害もない状態。まさに、私たちが目指したい理想の姿そのものではないだろうか。

毎日の一杯が70代の輝きに!?
データが明かす、中年期のコーヒー習慣

では、具体的にどのような効果が示されたのか。

ハーバード大学の研究によれば、健康な高齢者とされた女性たちは、1日に追加でコーヒーを1杯飲むごとに(1日に最大で小さなカップ5杯、現在の基準では約2.5杯まで)、将来元気に過ごせる可能性が2~5%高まったという。彼女たちが1日に摂取していたカフェイン量は平均315mgで、そのカフェイン源の実に80%以上が、通常のコーヒーからだったようだ。

この結果は、中年期に意識して取り入れる一杯のコーヒーが、数十年後のクオリティ・オブ・ライフに影響を与える可能性を示唆している。70代になっても輝き続けるための、ささやかな、しかし確かな布石となるのかもしれない。

なぜ、コーヒー?
紅茶やコーラでは得られない「質」

ただ、ここで疑問が湧く。カフェインを含む飲み物なら何でもよいのか?研究結果は、明確に「ノー」を突きつける。たとえば、同じくカフェインを含む紅茶や、カフェインを取り除いたデカフェコーヒーでは、コーヒーと同様の健康効果は見られなかったという。

さらに衝撃的なのは、砂糖を多く含むコーラのようなカフェイン飲料との比較。これらの飲料の摂取量が多い場合、健康的な老化の可能性は著しく低下するようだ。具体的には、炭酸飲料を追加で小さなグラス1杯飲むごとに、その可能性が20~26%も下がったと報告されている。

この事実は、単にカフェインを摂取するということ以上に、何を「源」として摂取するかが、私たちの健康にとってきわめて重要であるということ。コーヒーには、カフェイン以外の何らかの“質的なアドバンテージ”があるのだろうか。

「コーヒー習慣=健康意識の表れ?」
飲み物を超えたライフスタイルへの示唆

コーヒーが持つ健康効果の背景には、何があるのだろうか。

一つには、コーヒー豆自体に含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質の力が考えられる。これらの成分が、体内の酸化ストレスを和らげ、細胞レベルでの老化プロセスにブレーキをかけるのに役立っているのかもしれない。紅茶では同様の効果が見られなかった点を踏まえると、コーヒー特有の成分バランスや、カフェインとの相乗効果が、その秘密を解く鍵となりそうだ。

また、もう一つの視点として、「コーヒーを飲む」という行為そのものが、健康的なライフスタイルと深く結びついている可能性も指摘できる。朝の一杯が活動的な一日の号砲となったり、仕事の合間のコーヒーブレイクが知的な刺激やストレス軽減をもたらしたりすることは、コーヒーラバーでなくても納得だろう。

同研究でも、食事の質、運動習慣、喫煙の有無といった他の主要な生活習慣の影響を考慮してもなお、コーヒー摂取と健康的な老化の関連性は揺らがなかったとされている。しかし、コーヒーがそうした良い習慣を続けるための、心地よい“伴走者”のような役割を果たしていることも十分に考えられる。それはもはや単なる飲み物を超え、その人自身の健康意識やライフスタイルの一端を映す鏡なのかもしれない。

平均寿命と健康寿命の「12年間のギャップ」
コーヒーで縮められるか?

さて、この興味深い研究結果を、日本に引き寄せて考えてみよう。厚生労働省の報告(2022年)によると、日本人女性の健康寿命は75.45歳。いっぽう、23年の平均寿命は87.14歳と、世界トップクラスの長寿を誇る。

しかし、この二つの数字の間には、約12年もの無視できない「ギャップ」が存在する。この期間をいかに短縮し、生涯を通じて活動的で自立した生活を送れるか。これは、現代日本に生きる私たちにとって、きわめて大きな課題といえる。

ちなみに、「全日本コーヒー協会」の2022年度調査によれば、日本の女性は40~59歳の層で、1週間に平均13.95杯と、もっとも多くのコーヒーを愛飲しているという。これ、まさにハーバード大学の研究が対象とした「中年期」と重なる。この習慣が、将来の「健康寿命の延伸」というパズルを解く、一つのピースになるかもしれないと想像すると、日々のコーヒータイムが、より味わい深いものに感じられてこないだろうか?

「適量」を知り、コーヒーと上手に付き合う秘訣

もちろん、コーヒーが万能薬であるわけではない。どんな健康法も「過ぎたるは及ばざるがごとし」だ。ハーバード大学の研究でも示唆されているように、1日にカップ1~2杯という適量を意識することが重要。そして、その上でバランスの取れた食事、定期的な運動、質の高い睡眠といった、ウェルエイジングの基本となる生活習慣を疎かにしないこと。これらが組み合わさって初めて、コーヒーの持つポテンシャルも最大限に引き出されるのだろう。

それでも、ハーバード大学から届けられたこの朗報は、日常の一杯のコーヒーが、未来の自分を健やかにデザインするための、心強い味方となりうることを教えてくれる。それは、単に病気を避けるという守りの姿勢ではなく、心身ともに生き生きと、自分らしい人生を謳歌し続けるための、攻めのエイジングケアともいえるかもしれない。

Top image: © iStock.com / Galina Zhigalova
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