健康という「妄信」が、アナタの身体を蝕んでいく……【オルトレキシア】
ヴィーガンやベジタリアンとまではいかなくても、添加物を避けたりオーガニック食材を取り入れるなど、食へのこだわりがある人は少なくないはず。
しかし、健康的な食生活を気にしすぎるあまり、身体精神ともに“不健康”な状態に陥ってしまうことがあるようだ。
オルトレキシアの症状
この矛盾状態、「Forbes」が伝えたところによると、いわゆる食べ物の質に対する強迫観念のようなもので、「オルトレキシア」と呼ばれ摂食障害のひとつとして捉えられているらしい。食べ物の原産地や栄養価、そしてそのものの品質に極端にこだわり、自分が健康だと思う食事しか受け入れられなくなってしまう状態を指すようだ。
現在のところ、米国精神医学会が2023年に発行した「精神疾患診と統計マニュアル(DSM-5-TR)」には正式に記載されていないため、実際に精神障害かどうか、またどのように定義するかについてはさらなる研究が必要とされている。
それでも、独自の健康メソッドを盲目的に信じ、実践する人々は少なくない。以下、専門家が指摘するその症状や発症リスクを列挙してみよう。
・健康的な食事に強いこだわりがある
・他の活動を犠牲にしても食材の調査、計画、準備に過度な時間を費やす
・不健康な食べ物に対する罪悪感や不安が強い
・極端な体重減少、栄養不足、貧血、ホルモンバランスの乱れがある
・うつ病、不安、社会的孤独、コミュニケーションに困難を抱いている
一見すると、ごく普通に健康に気を遣っている人の行動と重なる部分もある。が、そこに落とし穴があるようで、認識するのが非常に難しいことから知らず知らずのうちにオルトレキシアを発症しているケースもあるというのだ。
オルトレキシアを
発症しやすい人の特徴
カナダ・バンクーバーにあるカウンセリングセンターのセラピスト兼創設者Nilou Esmaeilpour氏は、アスリートや医療従事者など、健康に重点を置く人々に影響を及ぼす可能性があると「Forbes」に語っている。さらには、摂食障害の病歴をもつ人や不安、完璧主義、強迫性障害の要素がある人も発症リスクが高いとのこと。
やはり、日頃から人一倍健康へのケアを心がけている人ほど発症の可能性は少なくないということか。ただ、オルトレキシアは特定の職業や特性をもつ人に限った話ではないというところに、我々も注意を向ける必要がありそうだ。
オルトレキシアに
罹ってしまったときの対処法
Esmaeilpour氏の話をまとめると、このオルトレシキアがやっかいなのは、治療に多分野にわたるアプローチが必要となる点にある。たとえば、摂食障害を専門とする心理学者やカウンセラーによる心理療法だったり、患者の思考パターンを理解したうえで、その変化をサポートする認知行動療法など。もちろん、バランス良い食事へと戻していくための栄養面からのサポートも必要となる。
このほか、共に暮らす家族やパートナーの支えも必要となることは言うまでもない。お互いがお互いの食習慣に関心をもち、耳を傾け、そして共に作ったりともに食べたりする時間をちゃんとつくる。そういった、当たり前でありながら現代において徐々に失われつつある習慣を取り戻すこともまた重要なのではないだろうか。
なにごもとほどほどが一番とは言うが……健康を意識しすぎるあまりカラダを壊してしまうという状態だけは避けたい。自戒を込めて。