【ライフデザインYouth Lab.】
もしかして私たち、一軒家至上主義国家の住民!? 無意識に作られる憧れとは
この記事は大学生を中心とした若い世代とこども家庭庁によって組織されたプロジェクト「ライフデザインYouth Lab.」が作成したものです。若い世代が主体的に、自らのライフデザインについて考える機会の創出を目指しています。
※「ライフデザインYouth Lab.」について詳しく知りたい方は文末をご覧ください。
【記事執筆者】

【参加した理由/このプロジェクトでやりたいこと】
20歳という節目を迎えた今、対話や発信活動を通して自分の価値観や人生のあり方について見つめ直す良い機会になると思った。/自分らしい将来設計を描く起点とするとともに、一人ひとりがライフデザインと向き合うきっかけとなる企画・記事を作りたい!

【参加した理由/このプロジェクトでやりたいこと】
最近、自分自身が将来について悩むことが多く、参加を決めました。同性代と悩みを共有することや、それを通じた情報発信により、同じモヤモヤを抱える仲間の課題解決のきっかけを生み出したいです!

【参加した理由/このプロジェクトでやりたいこと】
ふわっとした自分のなりたい姿をここでの多くの意見や刺激にふれ、具体化させていきたいです!!
「理想の住まい=マイホーム=一軒家」
という感覚

「理想の住まい」と聞いて、あなたはどんな形を思い浮かべますか?
多くの人が想像するのは、三角屋根に四角い建物が組み合わさった、いわゆる一軒家ではないでしょうか。実際に、私たちのグループでこの話題が出た際も、全員が自然と一軒家をイメージしていました。しかし、よく考えてみると「理想の住まい=マイホーム=一軒家」という感覚は、果たして当たり前なのでしょうか。
このテーマに注目したきっかけは、グループ内で行った「マイホームと貸家」をめぐる議論でした。話し合いを進めるうちに、論点は自然と「一軒家とマンションの比較」へと移っていきました。その過程で、マイホームという言葉が無意識のうちに一軒家を指していたこと、そして誰もそこに違和感を抱かなかったことに気がつきました。その瞬間、私たちの中に、潜在的なイメージが存在しているのではないかと感じました。
そこで、自分たちと同世代の若者を対象にインタビューを実施しました。質問内容は、①「マイホーム」と聞いて思い浮かぶイメージ、②一軒家に住みたいと思う理由、③その住宅イメージが形成された背景の3点です。
調査の結果、回答者全員が「マイホーム=一軒家」と答え、さらに「家族で暮らす場所」というイメージが共通していることがわかりました。タワーマンションを思い浮かべる人がいるのではないかと予想していましたが、そのような回答は見られませんでした。また、一軒家に住みたい理由としては、「家族で長く住み続けたい」「安心感がある」「子育てがしやすそう」といった声が多く挙がりました。中には、「若い頃は貸家で生活しながら資金を貯め、将来は自分の家を建てたい」という将来像を語る人もいました。住宅イメージの形成背景としては、実際の居住経験を挙げる人もいましたが、最も多かったのは、アニメや住宅CMなど、映像メディアからの影響でした。
理想の住まい像は、私たちが日常的に接している映像表現によって形づくられているのかもしれません。そこで本記事では、アニメや住宅CMにおける住居の描かれ方に注目し、「理想の住まい=マイホーム=一軒家」という意識がどのように形成されてきたのかを探っていきます。
アニメの中の住宅像

ここでは映像メディアの中でも、アニメに焦点を当てて考えてみます。当初は、作品の制作・放映時期の順に並べて比較することで、時代ごとの違いや、共通して描かれている住まいへの価値観が見えてくるのではないかと考えていました。しかし「アニメ×住宅」という観点で調べていくと、時代設定がはっきりしていない作品や、複数の時代が混ざっていると考えられる作品、未来の日本を舞台とした作品などが多く、単純に年代順で比較することは難しいことが分かってきました。
その中でも、比較的時代背景を読み取りやすい作品もあります。そこで本章では、1970年代の日本の家族像や住宅像を描いた『ちびまる子ちゃん』と、1990〜2000年代を描いた『あたしンち』の2作品を手がかりに、住宅の描かれ方や「豊かさ」に対する価値観がどのように表れているのかを見ていきます。また、現代のアニメにおいても、こうした「豊かさ」がどのように表現されているのかについても考えます。
戦後から高度経済成長期にかけて、日本では「豊かさ」を測る一つの目安として、住宅の中にどのような耐久消費財(長期間使用できる家具や家電など)が備わっているかが重視されていました。1970年代の日本を描いた『ちびまる子ちゃん』では、父ヒロシが車を所有し、家にはカラーテレビやクーラーが備え付けられているなど、いわゆる「3C」がそろった暮らしが描かれています。さらに、三世代の家族が一軒家で暮らす様子が、当時の「幸せな家庭像」として表現されています。
一方で、1990〜2000年代を描いた『あたしンち』では、都市郊外のマンションで暮らす核家族が中心に描かれています。そこからは、核家族化の広がりや都市郊外への人口移動といった、現代にもつながる社会の変化を感じ取ることができます。
ここで一つの仮説が浮かびます。1970年代に強く結びついた「一軒家=豊か」というイメージは、その背景となる生活条件が変化した現在でも、価値観として残り続けているのではないでしょうか。現代では、カラーテレビがなくてもスマートフォンで情報にアクセスできますし、駐車場がなくてもライドシェアなどを利用して車に乗ることができます。それでもなお、一軒家が「豊かさ」の象徴として語られやすいとすれば、当時の社会状況によって形づくられた「一軒家=豊か」という価値観の中身が変化したあとも、そのイメージだけが残っている可能性があります。
こうした傾向は、現代のアニメ作品にも見られるかもしれません。例えば『僕のヒーローアカデミア』では、幼なじみで同じ学校に通い、家も近所にある二人のキャラクターについて、住居の描写が描き分けられています。能力に恵まれていない緑谷出久はマンションに、能力に恵まれた爆豪勝己は豪華な一軒家に住んでいる設定になっています。この描き分けの意図をはっきりと断定することはできません。しかし、もし制作側が「視聴者にとって自然に受け取られる表現」を意識していたとすれば、「能力に恵まれないキャラクターは、マンションに住んでいた方が自然に見える」と判断した可能性も考えられます。
その判断が意識的であれ無意識的であれ、視聴者側にも「一軒家=豊か」「マンション=そうではない」といった連想が、少なくとも「自然さ」を支える判断基準として共有されている、とも考えられるのではないでしょうか。
この章では、アニメを手がかりに住宅のイメージについて考えてきました。次の章では、同じ映像メディアである住宅CMにも注目しながら、理想の住まい像がどのように形づくられているのかを見ていきます。
住宅CMの変化と無意識的な感覚

私たちは、住宅CMもアニメと同じように、無意識のうちに「理想のマイホーム像」が現れているのではないかと考えました。特に「マイホーム=夢・憧れ」というイメージは、CMによって自然と刷り込まれているのではないか、という意見が出ました。昔のCMで代表的なのが、セキスイハイムの「あったかハイム」です。本来は断熱性という“機能”を伝える言葉なのに、私たちはそこに「家族のあたたかさ」や「団らん」を重ねてイメージしていました。家族で食事をしたり、本を読んだりする日常シーンが多く、家=家族が仲良く過ごす場所、という印象を強く受けます。つまり、機能性よりも「家族愛」や「ぬくもり」といった情緒的な価値を前面に出していたのではないかと感じました。
一方で、最近の積水ハウスのCMでは「家は、未来の選択」というキャッチコピーが使われています。ここでは、単純に「家を建てれば幸せになれる」という夢を見せるよりも、環境への配慮や社会とのつながりなど、より広い視点で家を捉えています。また、家族全体の一体感よりも、それぞれの生き方や価値観に焦点を当て、その人が帰る場所として家を描いている印象があります。オープンハウスも、昔は「大きい家ドーン!」のように夢をストレートに語るCMが多く、「マイホーム=成功や達成の象徴」というイメージが強かったと思います。しかし最近は、家を建てるまでの苦労や、建てた後の暮らし、その家を守っていく思いにフォーカスするものが増えています。夢を語るだけでなく、「建てた先」のリアルに目を向けているように感じました。
こうして比較すると、昔は「家族団らんこそ理想」という価値観が強く提示されていたのに対し、今は家族の形や生き方が多様化している分、それぞれの人生や社会との関係性まで含めたメッセージに変化していると考えられます。
やはりCMは、その時代の価値観を映し出すだけでなく、「理想の住まいとは何か」という認識そのものにも影響を与えているのではないでしょうか。
無意識の自覚から始まる
あなただけの住まい探し

アニメや住宅CMに注目し、私たちが思い描く理想の住宅像や社会像には、映像メディアが大きな影響を与えている可能性が見えてきたと思います。幼いころに目にしてきたCMや時代の流れで「家族が庭付きの一軒家で暮らす」という光景は、自然と「暖かい家族像=家族団らんできる環境=”住めば幸せ”」というイメージと結びついていました。その結果として、「将来は一軒家を買って暮らしたい」という価値観が無意識のうちに形成されているのではないでしょうか。だからこそ私たちは、一度立ち止まって、そのイメージを整理することを提案します。
現在、住宅のあり方は大きく変化しています。例えば、国土交通省では「子育て支援型共同住宅推進事業」を実施しています。これは、賃貸住宅及び分譲マンションを対象に、事故防止や防犯対策などのこどもの安全確保に向けた整備や、子育て期の親同士の交流を促進する取り組みを支援する制度です。本文冒頭に記載しているインタビューにおいて、一軒家に住みたい理由として「子育てのしやすさ」を挙げる人がいましたが、マンションであっても安心して子育てができる環境が当たり前のものへと整いつつあります。
一軒家・マンションには、それぞれの良さがあります。一軒家だけが理想の住まいとは限らず、マンションにも多くの可能性があるように環境が変化しており、人生における様々な変化に対応しやすくなってきています。もちろん、一軒家も安全性や自由性、個性が出るからこそ今までの私たちの蓄積された理想をわかりやすく叶えてくれます。
住宅は人生に深く関わる大きな選択だからこそ、私たちは無意識の価値観に気づき、それを問い直す必要があるのではないでしょうか。多様な生活スタイルや住み方が広がる現代において、自分や家族がどのような暮らしをしたいのかという視点から「理想の住まい」とは何かを改めて考えることは、人生の選択の幅を広げることにつながると私たちは考えます。
さて、あなたにとって「理想の住まい」とはどのような形でしょうか?
【「ライフデザインYouth Lab.」とは?】

「ライフデザインYouth Lab.」とは、若い世代自らライフデザインに触れ、様々な情報や事例を知ることで得た気づきを共有・発信するための若い世代によるプロジェクトチームです。
この記事を読んで「私にとってのライフデザインって?」と感じたなら、彼らの活動についてもう少しだけ触れてみてください。
自分らしい未来を描くきっかけに出会えるかもしれません。

【本記事に関するご注意】
本記事は、大学生が恋愛や結婚など「ライフデザイン」について率直に話し合い、その中で出てきた意見や感情をもとに構成を考え、大学生自身によって執筆されています。そのため、内容には強い言葉や極端に感じられる表現、読み手によっては違和感や不快感を覚える可能性のある記述も含まれています。しかし、それらを過度に編集・修正することはあえて行っていません。話し合いを通して生まれた大学生自身のリアルな言葉を共有することに、この取り組みの意義があると考えています。学生の生の声をできるだけそのまま届けることで、読者の皆さんが自分自身の考えと向き合うきっかけになれば幸いです。






