敏感肌・かゆみ・抜け毛の悩みに。「足す美容」から「やめる美容」へ

美容にお金も手間もかけているのに、なぜか頭皮や肌の悩みが消えない——。そんな矛盾を感じたことはないでしょうか。福岡の美容室を運営するEZUKARIMO株式会社が、「やめる美容」を軸にした新プロジェクトの始動を発表しました。その背景には、現代の美容が抱える構造的な問題が見え隠れしています。

丁寧なケアが裏目に出る矛盾

ヘアケアやスキンケアの市場は、年々拡大を続けています。新しい成分、新しいテクノロジー、新しいルーティン。「もっと丁寧に、もっとたくさんのステップを」という方向に、美容の常識は進んできました。

ところが、同社の発表によると、美容室の現場ではまったく逆の現象が起きているそうです。「毎日洗っているのにベタつく」「敏感肌用を使っても改善しない」「シャンプーを変えてもかゆみが続く」——こうした相談が年々増えているとのこと。さらには、若年層の抜け毛や薄毛に関する悩みも目立つようになっているといいます。

市場が大きくなるほど、選択肢は増える。選択肢が増えるほど、人はより多くのものを「足して」いく。けれど、その結果として悩みが減るどころか増えているのだとしたら、私たちは一度立ち止まって考える必要があるのかもしれません。

美容師20年の実感から生まれた問い

このプロジェクトの中心にいるのは、20年以上のキャリアを持つ現役美容師のハマダカズエ氏です。同氏自身も、正しいとされるケアを続けながら頭皮や肌の不調に悩んだ経験があるそうです。

多くの顧客と向き合う中で、ハマダ氏はある違和感にたどり着きました。「綺麗になるためにしているはずのケアが、かえって皮膚本来の働きを乱しているのではないか」。皮膚の仕組みへの理解を深め、自身の体験と現場の実例を重ねた結果、「足すことで整えるのではなく、やめることで戻っていく」という引き算の発想に行き着いたとしています。

これは、いわゆるナチュラル志向やミニマリズムとは少し違います。「何もしない」ことを推奨しているのではなく、「本当に必要だったのか?」という問いを自分自身に向けること。同社はこれを「価値観リニューアル」と表現しています。

考えてみれば、「洗わないと不潔」「何もしないのは怠慢」という感覚は、いつの間にか私たちの中に深く根を下ろしています。不安を感じるから補う、補うことで安心する——この循環の中では、「やめる」という選択肢そのものが見えにくくなっているのではないでしょうか。

「売らない」美容師という新しい役割

同社が今後展開を予定しているのは、湯シャンに取り組む方への個別サポート体制や、湯シャン対応型サロンの普及、美容師向けの学びの場づくりなどです。

興味深いのは、このプロジェクトが美容師の役割そのものを問い直している点でしょう。従来、美容師は施術や商品を「提供する」存在でした。しかし「やめる美容」の文脈では、何かを売るのではなく、手放すプロセスに寄り添う「伴走者」としての姿が浮かび上がってきます。

商品を売ることで成り立つビジネスモデルの中で、「やめましょう」と言えること。これは簡単なようで、実はとても勇気のいる提案です。だからこそ、美容室という信頼関係のある場で、専門知識を持つ美容師がその役割を担うことには大きな意味があるように感じます。

なお、ハマダ氏の著書『やめる美容のススメ』は、Amazon Kindleの「皮膚科学」カテゴリで第1位を獲得しているとのこと(同社発表、2026年5月8日時点)。この反響の大きさは、同じ違和感を抱えていた人が少なくなかったことの証左かもしれません。

「足す」だけが正解じゃない時代へ

EZUKARIMO株式会社は「地球を汚さなければ人もキレイになる」という理念を掲げています。美容と環境、一見離れたテーマが同じ地平でつながっているという視点は、消費を前提としない美容のあり方を考える上で示唆的です。

私たちは日々、膨大な美容情報にさらされています。何を選ぶかに悩むことはあっても、「何をやめるか」を考える機会はほとんどありません。もちろん、すべてのケアが不要だという話ではないでしょう。ただ、「足す」以外の選択肢が存在すること自体を知っておくことは、自分の身体との付き合い方を見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。

美容の答えは、もしかすると「もっと」ではなく「もう十分」の中にあるのかもしれません。

©EZUKARIMO 株式会社

やめる美容のススメ

【著者】ハマダカズエ
【形式】Kindle版(電子書籍)/ペーパーバック版
【本書の詳細はこちら】https://www.amazon.co.jp/dp/B0GHZKG38Y

Top image: © EZUKARIMO 株式会社
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。