企業を信じる人は3割未満。アメリカで進む「信頼不況」が変える買い物のルール
米ロサンゼルスに拠点を置くマーケットリサーチ企業Alter Agentsが、2019年から継続的に実施している消費者センチメント調査の最新結果を発表しました。同社はいま、アメリカの消費者心理を「Trust Recession(信頼の不況)」という言葉で表現しています。楽観も消費意欲も、そして企業への信頼も──同時に沈んでいく構造変化が浮き彫りになりました。
数字が語る「守りの消費」
同調査によると、73%のアメリカ人が非必需品への支出を削減していると回答。42%が結婚や引越しといった人生の大きなイベントを延期・中止しており、34%は必需品さえも切り詰めているとのことです。
パンデミック前の調査では、81%のアメリカ人が「自分の将来は時間とともに良くなる」と信じていました。しかし、その長期的な楽観主義は大幅に低下したと同社は報告しています。
3人に1人の消費者が、低価格ブランドやプライベートブランドへの意図的な切り替えを行っているという事実も見逃せません。これはもはや一時的な節約志向ではなく、「憧れ型の購買」から「防衛的な意思決定」への本質的なシフトだと言えるのではないでしょうか。
企業への信頼は3割を切る
注目すべきは、消費者の企業に対する信頼の低さです。企業が事業慣行について「オープンで正直」だと考える消費者はわずか29%。「透明性がある」と感じる消費者も28%にとどまりました。
Alter AgentsのCEOであるRebecca Brooks氏は、「消費者は単一の危機に反応しているのではない。経済的圧力、情報過多、制度への信頼低下、急速な技術変化のすべてを同時に乗り越えようとしている」と述べています。経済不安だけでなく、AI生成コンテンツの急増やレビューへの懐疑心など、情報環境そのものへの不信感が重なり合っている点が、従来の景気後退局面とは異なる特徴でしょう。
「確信の提供」が新たな競争軸に
同社のChief Research OfficerであるHeather O'Shea氏は、「ブランドの課題は、もはや摩擦を減らしたり購買転換を加速したりすることではない」と指摘。信頼を見つけることが困難な環境の中で、消費者が十分な情報を得て確信を持てるよう支援することこそが重要だと語っています。
この視点は、日本で暮らす私たちにとっても他人事ではありません。物価高が続く中でのSNS情報過多、ステルスマーケティング規制の強化など、「何を信じて買えばいいのか」という問いは国境を越えて共通しています。
かつてブランドへの信頼は、広告やイメージによって「与えられるもの」でした。しかしいま、それは消費者自身がレビューを読み比べ、成分を調べ、口コミの真偽を確かめるという「能動的な検証プロセス」を経て初めて成立するものへと変わりつつあります。
買い物が「疑うこと」から始まる時代。ブランドに求められるのは、魅力的な約束ではなく、検証可能な透明性なのかもしれません。消費者の「調べる時間」に寄り添えるかどうかが、これからの信頼構築の鍵になりそうです。






