集合場所しか知らされない旅。目的地より「誰と出会うか」を楽しむ“リアリティショー旅”

「博報堂」と「ジャルパック」が共同で発表した新しい旅行商品「リアリティショー旅」。

参加者に知らされるのは集合場所と集合時間だけ。行き先も、何をするかも、誰と一緒になるかも分からない——そんなパッケージツアーが、2026年7月30日から実証実験として動き出します。

集合場所だけ告げられる1泊2日

正直に言うと、最初にこの企画を知ったとき、頭の中で二つの感情がぶつかりました。「パッケージツアーでリアリティショー?」という困惑と、「集合場所しか教えてもらえないって、ちょっと面白そう」という好奇心。この矛盾した感覚こそが、たぶんこの企画の狙いそのものなのだと思います。

パッケージツアーといえば、長らく「効率よく観光地を巡れる」「添乗員がいるから安心」という価値で選ばれてきました。つまり、不確実性をできるだけ排除することが商品力だったはずです。

ところが「リアリティショー旅」は、その器にあえて不確実性を注ぎ込んでいます。舞台は東京駅から約40分の熱海。昭和レトロな街並みを背景に、参加者6〜12名がリアリティショーさながらの9つのミッションに挑みながら1泊2日を過ごす設計なんだとか。

対決あり、協力あり。博報堂が開発した「トークテーマカード」を使って、自然と対話が深まる仕掛けも用意されているとのこと。

難しい知識も体力も不要で、18歳以上なら誰でも参加できるそうですが、求められるのはおそらく「知らない人と過ごす1泊2日を楽しめる心の余白」でしょう。

SNSでは出会えない人と旅先で語る

この企画の背景として、博報堂はSNSのアルゴリズムがつくる「フィルターバブル」の問題を挙げています。自分と似た価値観の情報や人に囲まれる時間が増える一方で、画面の外で初対面の人と顔を合わせ、語り合い、価値観の合う仲間とつながる機会は限られている——そんな課題意識です。

これは多くの人が薄々感じていることかもしれません。SNS上では趣味のコミュニティに属していても、オフラインで新しい人間関係を築こうとすると、途端にハードルが上がる。マッチングアプリは恋愛に寄りすぎるし、社会人サークルは「入会」という行為自体が重い。

「旅」という非日常の空間には、そのハードルを自然に下げる力があるのかもしれません。目的地に着くこと自体が目的ではなく、移動と体験を共有する過程で関係性が生まれる。博報堂がこれまで広告領域で培ってきたコミュニケーションデザインの知見を、旅行商品の体験設計に転用したという点も興味深いところです。

「どこへ行くか」より「誰と出会うか」

JALグループとしても初の試みだというこの実証実験。プロモーションにはテレビ朝日公式YouTubeチャンネル「動画、はじめてみました」(登録者数210万人以上)を活用し、お笑い芸人のカーネーション吉田さんやナイチンゲールダンス、女優の安倍乙さんが旅の一部を体験した動画が公開されています。

もちろん、実証実験である以上、まだ結論は出ていません。6〜12人という少人数の中で本当に「一生モノの旅仲間」が見つかるのか、リピーターは生まれるのか、ビジネスとして成立するのか。未知数な部分もきっと多いことでしょう。

ただ、パッケージツアーという成熟した商品カテゴリが、「どこに行くか」ではなく「誰と出会うか」を価値の中心に据え始めたこと自体が、ひとつの転換点のように感じます。

私たちが旅に求めているものは、もしかすると「知らない景色」よりも「知らない自分」なのかもしれません。見知らぬ人との対話の中で、自分の価値観に気づく——そんな体験を「商品」として届けようとする試みが、どんな化学反応を起こすのか。少し気になって仕方がありません。

『リアリティショー旅』

【行き先】静岡県熱海市(1泊2日)
【設定期間】2026年7月30日〜2027年3月27日の特定日発
【催行人数】最少6名〜最大12名(出発14日前に催行決定)
【対象年齢】18歳以上
【予約】ジャルパック公式サイト専用ページにて受付中

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