お風呂に入れない人を地域で支える。熊本・白百合保育園の新しい災害支援

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震。断水は最大約108,000戸に達しましたが、約1か月で約2,000戸まで減少しました。数字だけ見れば、復旧は着実に進んでいるように映ります。でも、「断水が直った=お風呂に入れる」とは限らないとしたら?

「断水ゼロ」でも
お湯が出ない家がある

水道管の復旧と、自宅でお湯を使えることは、実はイコールではありません。

給湯設備が地震で壊れていれば、蛇口から出るのは冷たい水だけ。井戸や簡易水道という、水道管とは別の仕組みで生活用水をまかなっていた家庭では、そもそも水自体が使えないケースもあります。

さらに、家屋の損傷で車中泊を続けている方もいます。国土交通省の断水統計には「復旧済み」と数えられていても、入浴できない人がいる。行政の数字と、暮らしの実感のあいだに、見えにくいギャップが横たわっています。

八代市、宇城市、氷川町では、いまもそうした状況が続いているのです。

園長の「地域にも開きたい」が
きっかけに

このギャップを埋めようとしているのが、水循環技術を手がけるWOTA株式会社と、熊本県宇城市の白百合保育園による取り組み「みんなのシャワー」です。

WOTAは発災後、熊本県の要請を受けて避難所や医療・福祉施設に水循環型シャワー「WOTA BOX」を配備してきました。少量の水をフィルターで浄化・再利用する技術で、水道が止まっていてもシャワーが使えます。

白百合保育園にも園児や職員のために設置されていたのですが、園長から「地域の方にも使ってもらえないか」という声が上がりました。

この一言がきっかけとなり、保育園のシャワーを地域住民に開放する仕組みが生まれたのです。

「並ばない、個室で安心」という
もうひとつの支援のかたち

保育園の敷地に設置された「みんなのシャワー」の案内看板とWOTAの機材
© WOTA株式会社

「みんなのシャワー」はオンライン予約制。専用ページで空き時間を確認し、予約してから訪れます。

避難所の大浴場に長い列をつくって待つ必要がなく、個室で利用できるため、小さな子ども連れの方や、大人数での共同入浴が難しい方にも使いやすい設計です。

入浴という行為は、衛生面だけの問題ではありません。一日の終わりにお湯を浴びて、ほっと息をつく。その「当たり前」が戻ることは、生活を立て直す気力そのものにつながるはずです。

運営費用は企業協賛やクラウドファンディングなどの民間資金でまかなわれ、WOTAが機材の保守・点検を担当。行政予算だけに頼らない持続可能なモデルを目指しています。

災害支援というと、発災直後の緊急対応をイメージしがちです。でも本当に支えが必要なのは、ニュースが減り、数字上は「復旧」が進んだあとかもしれません。保育園という身近な場所が「まちのシャワー室」になる。この小さな実験が、日本の災害支援の時間軸を少しだけ延ばしてくれる気がします。

みんなのシャワー(白百合保育園内)

【施設名】みんなのシャワー(白百合保育園内)
【所在地】熊本県宇城市
【利用時間】10:00〜21:00(日曜閉園)
【設備】WOTA BOX 3台(個室利用可)
【利用方法】オンライン予約制
【最新情報・予約】白百合保育園 Instagram
【クラウドファンディング】READYFOR「断水が続く熊本の医療・福祉施設へ」

Top image: © WOTA株式会社
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