佐渡の350年の蔵、世界12カ国67人が「株主」になった

株式会社Planet Labsのプレスリリースによると、新潟県佐渡市にある約350年の歴史を持つ「北條家住宅」の蔵を、世界12カ国・67名の個人投資家が共同所有するプロジェクトが、出資達成率90.1%に到達したそうです。寄付でもクラウドファンディングでもない、「株主になって文化財を守る」という選択肢の話。

12カ国から届いた出資、支える「株式会社型DAO」

PlanetDAO佐渡 北條家住宅の出資申込者の居住地を示す円グラフ(2026年7月14日時点)。日本34.3%、台湾13.4%、シンガポール11.9%、香港9.0%、アメリカ7.5%など世界12カ国の内訳
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北條家は、江戸時代から続く漢方医の家系です。主屋は国指定重要文化財、米蔵・家財蔵・味噌蔵・長屋門は登録有形文化財に登録されています。今回のプロジェクトの対象は、この蔵の部分。

2026年1月に始まった出資募集(フェーズⅡ)には、7月14日時点で67名が参加しました。1株1,000円で合計34,325株、最低投資額は40万円。注目すべきは、その顔ぶれの多様さでしょう。日本23名、台湾9名、シンガポール8名、香港6名、米国5名——さらにはドイツ、フィリピン、エジプト、オーストラリアからも出資者が集まっています。

この仕組みを支えているのが、同社が「株式会社型DAO」と呼ぶ構造です。DAOとは、ブロックチェーン技術を使って参加者全員で意思決定を行う「分散型自律組織」のこと。それを日本の株式会社の法的枠組みの中で実現したもので、日本ブロックチェーン協会理事の峯荒夢氏が「日本初の試み」と確認しているそうです。

さらにユニークなのは、地域住民への配慮。出資をしなくても議決権のある種類株が発行され、住民が経営に主体的に関われる「共創型ガバナンス」が設計されています。この仕組みは2026年4月、一般社団法人日本Web3ツーリズム協会主催の「Japan Tourism NFT Awards 2025」地域資源部門でグランプリを受賞しました。

歴史の痕跡を残す「リペア」という選択

北條家住宅の茅葺き屋根の主屋を背景に、プロジェクト関係者が蔵の修復方針について説明している様子。Photography: Massa Takamoto
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個人的に一番惹かれたのは、改修の方針です。蔵の再生にあたって掲げられているのは、過度な「リノベーション」ではなく「リペア(修復)」。歴史の痕跡や暮らしの営みをできるだけ残しながら手を入れるという考え方です。

漢方医の家系という背景を活かし、野草や薬草の体験プログラムを提供するウェルネス志向の宿泊施設として、2027年4月頃の運営開始を目指しているとのこと。

一方、主屋については文化庁から「国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金」の交付が正式に決定しました。北條家第11代当主の弟・北條規氏によれば、文化庁との対話は足掛け10年に及び、「何度も挫折を味わった」そうです。2026年夏から約2年かけて保存工事が行われ、40〜50年に一度という茅葺き屋根の葺き替え作業を、宮大工を目指す学生や一般の方にも体験してもらう場の提供も調整中だといいます。

観光客から当事者へ、境界線が曖昧になる

日本各地で、個人が所有する歴史的建造物が維持費の重さに耐えきれず、静かに姿を消しています。行政に寄贈しようにも受け入れ先がない、民間ファンドも成立しない——そんな行き詰まりの中で生まれたのが、「世界中の共感者に株主になってもらう」という発想でした。

PlanetDAO全体では、すでに世界23カ国・289名から1億円超が集まっているそうです。

文化財を「見に行くもの」から「自分が関わるもの」へ。その転換は、観光客と当事者の境界線を少しだけ曖昧にしてくれます。あなたの地元にも、誰かが一人で守り続けている建物があるかもしれません。その「守り方」の選択肢が、いま静かに増えつつあるようです。

PlanetDAO 佐渡・北條家住宅プロジェクト(フェーズⅡ)

【出資募集締切】2026年7月22日
【最低投資額】40万円(1株1,000円)
【出資募集ページ】https://planetdao.world/ja/properties/hojo-heritage-jp/
【公式サイト】https://planetdao.world

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