投稿して、すぐ隠す。若者たちの新選択「ゴースト・ポスティング」
Instagramに写真を投稿して、すぐにアーカイブで隠す。そしてしばらく経ってから、そっと再公開する——。いま、Z世代の間でそんな不思議な投稿スタイルが広がっているそうです。
名前は「ゴースト・ポスティング」。投稿しているのに、誰にも見られないことを目的にしている。矛盾しているようで、その裏には「SNS疲れ」とはひと味違う、新しい感覚が隠れていました。
「投稿したい、でも
見られたくない」という矛盾
英メディア「Dazed Digital」が2026年8月に公開した記事では、この行動を実践する複数の若者が紹介されています。
たとえばロサンゼルス在住のウィラ・ファレルさん(23歳)。中学生の頃からInstagramを使ってきた彼女は、ローマ留学中に投稿への違和感を覚えたといいます。
学業で苦しんでいた時期に、イタリアの美しい写真を投稿すれば「楽しんでいるフリ」になってしまう。でも、撮った写真を残す場所は欲しい。そこで編み出したのが、投稿→即アーカイブ→時間が経ってから再公開、という方法でした。
彼女は自分のフィードを「他人のためではなく、自分のためのムードボード」と呼んでいます。
「いいね」より
「自分が好きかどうか」
この行動の背景には、投稿が自己評価と直結してしまう圧力があります。
ニューヨーク在住のダナイト・デスタさん(26歳)は「初期のInstagramでは、スターバックスの注文でも何でも気軽に投稿できた。でも今は、フィードに載せること自体が緊張する」と語っています。
別の実践者であるサマンサ・ハーパーさん(26歳)は、ゴースト・ポストが100いいねに届かなくても「自分がその写真を好きだから構わない」と言い切ります。エンゲージメント(いいねやリーチの数字)よりも、自分の美意識を優先する姿勢です。
こうした感覚は、データにも表れています。Z世代を対象にした調査会社dcdxのリサーチでは、回答者の66%が「オンラインでの存在感をもっとプライベートにしたい」と答えました。3人に2人が、見られることより隠れることを望んでいるのです。
SNSを「辞めない」けど
「距離を取る」第三の道
ここで思い出すのは、日本でもおなじみの「裏アカウント」文化です。親しい友人だけに公開する別アカウントを持つ人は少なくありません。
でもゴースト・ポスティングは、裏アカウントとは少し違います。メインアカウントの中で「見えなさ」を設計するという点が新しい。プラットフォームを離脱するのでもなく、完全に順応するのでもない、いわば第三の態度です。
Instagram責任者のアダム・モセリ氏も、25歳以下のユーザーの多くがパブリックなフィードへの投稿を気にしなくなっていると認めています。
「投稿したいけど、見られたくない」。この一見わがままな欲求は、実は多くの人が心のどこかで感じているものではないでしょうか。
グリッドを完璧に整えることに疲れた人も、投稿ボタンを押す瞬間の不安を知っている人も、SNSとの付き合い方にはまだ選択肢がある。ゴースト・ポスティングは、そんなことを静かに教えてくれています。






