「ブックインフルエンサー」が編集者として本を選ぶ出版社が登場。SNS時代の出版モデルは成功するのか
出版業界では近年、SNSを活用した新しい出版モデルが模索されている。その一例が、米スタートアップ出版社の『Bindery Books』だ。
同社は従来の出版社と異なり、いわゆる「ブックインフルエンサー(Bookfluencer)」を編集者として起用し、作品の発掘やプロモーションを進めている。
読書系コミュニティを築いてきたインフルエンサーが“キュレーター”となり、作品を選び、読者に紹介する仕組みだ。
創業者である出版マーケティング出身のMatt Kayeと編集者のMeghan Harveyは、作家と読者を直接結びつけることを狙い、このモデルを立ち上げた。
現在は約12のインフルエンサー主導のレーベル(インプリント)が運営されているという。
読者コミュニティを出版プロセスに組み込む
Binderyの特徴は、SNS上の読書コミュニティを出版プロセスの中心に据えている点にある。インフルエンサーが作品を推薦し、そのフォロワーと継続的に議論や宣伝を行うことで、読者の関心をリアルタイムで反映する仕組みを作っている。
このモデルの例として挙げられるのが、カナダのヤングアダルト作家Courtney Summersの作品だ。彼女は2010年代に人気を得た自作の再出版を計画し、過去作品を軽く改訂して再リリースするアイデアを複数の出版社に提案した。
最終的にこの企画を受け入れたのがBinderyであり、ゾンビスリラー小説『This Is Not a Test』がコミュニティ主導で再び注目を集めることになった。作品はインフルエンサーの読書クラブを通じて宣伝され、出版過程でも作者と編集者の距離が近い形で進行したという。
このように、従来の出版社では難しかった読者との密接なコミュニケーションが、新しい出版モデルの強みとして語られている。
出版業界の課題を補う可能性
Binderyが扱う作品の多くは新人作家のデビュー作で、約3分の1はエージェントを持たない作家だという。SNSコミュニティを基盤にすることで、従来の出版社が見落としてきたジャンルや作家を発掘できる可能性もある。
また、一部のタイトルはベストセラーリストや年間ランキングに入るなど一定の成果を上げている。ただし、同社はまだ黒字化しておらず、ビジネスモデルとしての持続性は今後の課題とされている。
出版業界アナリストのJane Friedmanは『Los Angeles Times』の取材にて、この仕組みを「従来の出版マーケティングとインフルエンサー文化の中間的なモデル」と評価する。一方で、大規模に拡張できるかどうかはまだ不透明だとも指摘している。
それでも、SNSが読書文化にも大きな影響を与える時代において、こうした試みは出版業界の新しい方向性を示している可能性がある。出版社がこれまで見過ごしてきた読者コミュニティをどう取り込むかが、今後の鍵になるのかもしれない。






