世界には、読んで楽しむだけで満足させない絵本がある
ハンドメイドの絵本がベストセラーになり、数々の本に関する賞を受賞しているインド・チェンナイの出版社「タラブックス」。彼らが世界中から賞賛を浴びているのは、なぜなのでしょう。
『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』(玄光社)には、彼らが今までに出版してきた本や、考え方、ものづくりの背景が書かれています。そこに書かれている言葉は、出版社やデザイナーという職業の枠組みを越えて、これからの働き方について考えるきっかけをくれるものでした。
絵本を通して、
社会に問題意識を投げかける。
タラブックスの絵本には、社会問題がテーマになった本が何冊もあります。インドのストリートチルドレンと環境問題について書いた『Trash!』、貧しい村の女性がアーティストになるまでの旅を描いた『Following My Paint Brush』、スリランカの内戦時代を子供の目を通して語る『The Boy who Speaks in Numbers』...。子供向けの本にも関わらず、なぜ彼らは社会問題をテーマに選ぶのでしょうか。
その答えは本書の中で詳しく語られていますが、インドでは、私たちが想像する以上に階級や格差がしっかりと根を張っているのでしょう。タラブックスはそんな状況に一石を投じるために、インド社会で弱い立場にある少数民族や伝統工芸の職人たちと一緒に本をつくってきたのです。
彼らが作っているのは「本」ですが、本当に作りたいのは「みんなが幸せに暮らせるフェアな社会」なのではないかと思います。そんな姿勢が根幹にあるからこそ、タラブックスのファンは世界中にいるのでしょう。
自分の仕事を通して何を伝えるのか。どのように働くのか。そんなことについて考えるためのきっかけをくれる一冊です。