色も柄も大満足の手づくりブックカバー。ただひとつだけ気に入らなかった部分が、今では大好きに。

自分の名前とはとても大切なもののはずです。

子どもだった頃は、胸に名札をつけたり、体操服には名前入りのゼッケンをつけていたり、給食袋とか上履きとか、鉛筆とか消しゴムとか、ありとあらゆる自分の持ち物に名前を書いていました。

大人になってから名前を書くものといえば、役所への各種届出とか、スマホの契約とか、宅配便の受け取りとか、タイムカードとか始末書とか……。

社会的には重要なものかもしれませんが、個人的に本当に大切かというと、そうでもないような気もします。

学生だった頃、染色家である母に、ブックカバーを染めてほしいと頼みました。

単行本用と、文庫本用の2冊です。

色と柄は自分で考えていたとおり、見事に出来上がっていたのですが、裏表紙には、何と自分の名前が勝手に入れられていて、「こんなの恥ずかしくて使えないぞ」と思ったのを覚えています。

でも、学生時代から今日まで、これらのブックカバーを使って、いろんな本を読みました。いろんなところに行きました。満員電車の通勤時にも、長期の出張にも、やっと休みが取れて出かけた短い旅行にも。

それらはすべて、個人的にとても大切なことでした。本を読むことは、僕にとっては、いろいろな自分に戻れる時間であり、場です。

名前入りブックカバーは、その印のようになっています。

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空閑理/編集者
1983年、福岡市生まれ。武蔵野美術大学 油絵学科卒業。2010年、D&DEPARTMENTに入社。47都道府県それぞれに1冊ずつの発行をめざすトラベルガイド「d design travel」の編集・執筆などを手がけ、2013年から2016年は同誌の編集長を務めた。現在は休養中。

Photo by 元家健吾

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