三角コーンに苔を生やす──都市の嫌われ者が「第三のみどり」になるまで

慶應義塾大学・田中浩也研究室発のプロジェクト「MOSSTOPIA」が、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)への出展内定を発表しました。三角コーンに苔を生やす。その一見奇妙な試みの裏には、都市緑化の常識を覆す発想が潜んでいます。

マイナス×マイナスの数式
プラスに転じさせた「芝コーン」

©100BANCH

三角コーンは景観を損ねる警戒色の象徴。苔はアスファルトの隙間にこびりつく“汚れ”。どちらも都市では「ないほうがいいもの」として扱われてきました。

MOSSTOPIAが着目したのは、まさにこの二つの類似性。三角コーンの表面構造が苔の生息環境に似ているという発見から、「苔コーン」と呼ばれる増殖装置が生まれました。マイナスとマイナスを掛け合わせてプラスに転じる。数式のような鮮やかさに、正直なところ最初は半信半疑でした。でも写真を見た瞬間、「汚い」という感情より、むしろ「かわいい」が先行し、不思議と目が離せなくなったのです。

プロジェクトの背景には「20XX年の東京」という未来シナリオがあります。異常気象で街路樹(第一のみどり)は倒れ、プランター(第二のみどり)すら軒先に置けなくなった世界。そこで苔を「都市の第三のみどり」として位置づけ、すでに街に遍在する公共物を緑化の起点に読み替えていく。新しい素材やハイテクを持ち込むのではなく、見て見ぬふりをしてきたものを「転生」させるという発想が、このプロジェクトの核心だという点にも注目です。

都市を庭に変える「作庭記」の教え

©100BANCH

興味深いのは、展示空間を日本庭園の古典「作庭記」の思想に則って構成する点でしょう。室外機やマンホール、ブロック塀といった無機質な公共物を坪庭に見立てる。テクノロジーと伝統美の接続というより、「すでにそこにある風景を庭として見る目」の提案に近いかもしれません。

慶應の研究室から生まれた実験的プロジェクトが、パナソニック運営の未来創造拠点「100BANCH」での活動を経て国際博覧会の舞台へ。コンセプチュアルな問いかけが社会実装の文脈に入った転換点でもあります。

足元の隙間に眠る
“緑”に秘めた可能性

渋谷での先行展示では、苔コーンに加えて「苔×灰皿」「苔×照明」「苔×パーテーション」など初公開のプロトタイプも並ぶとのこと。実際に触れられる機会があるのは嬉しいところです。

都市の緑化というと、どうしても「新しく何かを植える」イメージが先行します。でも本当は、足元のアスファルトの隙間にも、通勤路の三角コーンにも、緑になりうる可能性がすでに眠っているのかもしれない。明日の帰り道、ふと三角コーンに目が止まったら──それはもう、あなたの中で「第三のみどり」が芽吹き始めた証拠な気がしてなりません。

先行展示「境界緑地 ─ 苔×公共物 ─」

【開催日時】2026年7月10日(金)・11日(土)12:00〜20:00 / 12日(日)12:00〜18:00
【会場】100BANCH 3F(東京都渋谷区渋谷3-27-1)
【入場料】無料
【イベント】ナナナナ祭2026 内プログラム

Top image: © 100BANCH
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